【街のすぐそばにある気軽な避暑スポット3選②】新神戸駅から400m、伊勢物語の舞台にもなった「布引の滝」

新幹線が発着する新神戸駅から、わずか数分で木々に囲まれた渓谷へ入ることができる。神戸市中央区にある布引の滝は、都市のすぐそばで山の景観に触れられる場所だ。

駅の裏手で街並みが渓谷へと切り替わる意外性が、その魅力を際立たせる。

平安時代から続く景勝地

布引の滝は、一つの滝の名称ではなく、下流から雌滝(めんたき)、鼓ケ滝(つつみがだき)、夫婦滝(めおとだき)、雄滝(おんたき)の四つの滝の総称だ。

「日本の滝百選」にも選ばれ、那智の滝(和歌山県那智勝浦町)、華厳の滝(栃木県日光市)と並ぶ日本三大神滝の一つとされる。平安時代にはすでに名所として知られ、「伊勢物語」などにもその名が登場する。

駅から最も近い雌滝までは徒歩約5分、上流の雄滝までは約15分のため、観光や出張の合間にも立ち寄りやすい。滝へ向かう散策路には、平安時代から江戸時代にかけて詠まれた布引の滝の名歌を刻む17基の歌碑が点在する。散策路を歩きながら、古くから人々を引き付けてきた景勝地の歴史にも触れられる仕掛けだ。

高架下の案内板から急坂へ

【街のすぐそばにある気軽な避暑スポット3選②】新神戸駅から400m、伊勢物語の舞台にもなった「布引の滝」
新神戸駅高架下の案内表示
新神戸駅高架下の案内表示

滝へのスタート地点は、新神戸駅の高架下にある「布引の滝 0.4KM」と記された案内表示だ。案内に従って歩き始めると、すぐに急な坂道が現れる。駅から近いとはいえ、平たんな散歩道ではなく、登山のような趣がある。

坂を上った先で渡る砂子橋は、1900年に造られたレンガアーチ形式の水道橋で、現在は道路施設となっている。砂子橋を過ぎるころには木々が次第に増え、自動車や列車の音に代わって、セミなどの虫の声が強くなってくる。

さらに階段を上ると、岩の間を流れる水音が次第に大きくなり、街中から渓谷沿いの山道へ入ったことを実感する。階段や坂道は歩きやすいように手入れされているが、革靴やサンダルより、街歩き用のスニーカーなどが安心だ。

高さ43メートルの雄滝が見どころ

最初に現れる雌滝は、落差が約19メートルあり、岩肌に沿って落ちる白い水と、木々に囲まれた滝つぼを眺められる。夏の日差しが照りつける駅から歩いてきた後だけに、木陰と水音に包まれた景色が涼しげに映る。そこには駅からわずか5分の場所とは思えない、落ち着いた空気が流れる。

雌滝を後にして、さらに階段を上ると、鼓ケ滝が現れる。水が岩肌を流れる形が鼓に似ているとされるが、散策路からはその形を捉えにくい。額に汗が滴る中、さらに坂道と階段を進むと、視界が開け、布引の滝を代表する雄滝が現れる。滝の高さは43メートル。岩肌を水が流れ落ち、深い滝つぼへ注いでいく。雌滝の穏やかな景観に対し、雄滝は高い岩壁から落ちる水の勢いが目を引く。

雄滝のすぐ下には夫婦滝があり、雄滝から続く流れと合わせて眺められる。落下する水の影響だろうか、滝の方から心地よい風が吹いており、しばらく立ち止まっていると大粒の汗も次第に引いていくのが分かる。

一望できる神戸の市街地

【街のすぐそばにある気軽な避暑スポット3選②】新神戸駅から400m、伊勢物語の舞台にもなった「布引の滝」
神戸市の市街地
みはらし展望台から見た神戸市の市街地

雄滝の傍らの少し上がった場所には100年以上の歴史を持つ「おんたき茶屋」があり、目の前の雄滝を眺めながら、食事を楽しめる。茶屋からさらに上った先に、みはらし展望台があり、ここからは神戸の市街地を一望できる。

手前の木々と、その先に広がる街並みを眺めると、山と市街地が近接する神戸の地形がよく分かる。

帰り道で再び駅舎が見えてくると、短い散策の中で市街地と渓谷を往復したことを実感する。布引の滝は入場料が不要で、出入りを管理するゲートがないこともあり、布引の滝単独の来訪者数は公表されていない。最寄りの新神戸駅へは新幹線のほか、神戸市中心部の三宮駅から神戸市営地下鉄西神・山手線で約2分で行くことができる。

文:M&A Online記者 松本亮一

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