特殊鋼メーカー「三菱製鋼」商用車用・車両用ばねでM&A活用 収益構造の転換へ

自動車向け特殊鋼などを手がける三菱製鋼<5632>が、商用車用・車両用ばね事業でM&Aを活用した拠点拡張に乗り出す。

インドネシアに次ぐ第二拠点の具体化を掲げ、インド・北米を中心に技術、調達、供給体制を強化する。

同社は2029年3月期に、営業利益を2026年3月期比で2倍超の110億円に引き上げる計画だ。

従来は鋼材を利益の中心に据えていたが、今後は国内鋼材への依存度を下げ、戦略事業の比率を高めることで実現を目指す。

精密部品や海外鋼材などと並ぶ戦略事業である商用車用・車両用ばね事業の拠点拡張は、収益構造の転換に向けた施策の一つとなる。

商用車用・車両用ばねで第二拠点

同社は戦略事業として、短中期で収益貢献を加速する精密部品、海外鋼材、商用車用・車両用ばね、安全保障・エネルギー関連の4事業と、次の成長の柱として育成する特殊合金粉末、洋上風力関連の2事業を挙げる。

同社は商用車用・車両用ばね事業について、日本、タイではシェア変動の余地が限られる一方、北米、欧州、インドには参入余地があるとみる。

このため、インドネシアに次ぐ第二拠点の実現に向け、インド・北米を中心に、提携・M&Aを活用して拠点拡充に取り組むことにした。

商用車用・車両用ばね事業では、これまで売価改善とコスト低減により営業利益の改善に取り組んできたが、今後は高付加価値化と調達強化を進める。

2027年3月期~2029年3月期の3年間には、商用車用・車両用ばねの複数拠点化をはじめ、精密部品の量産対応などを含む成長投資に64億円を配分する。

不足領域をM&Aで補完

三菱製鋼はM&Aを、商用車用・車両用ばねだけでなく、全社横断の競争力強化策にも位置付ける。

既存事業の収益力を高める一方、不足する技術や商権、生産能力などを、M&Aなどで補う計画だ。

近年の企業買収では、2018年にインドネシアの持ち分法適用関連会社で、特殊鋼鋼材を製造するPT. JATIM TAMAN STEEL MFG.を子会社化した実績がある。

また同年には、自動車などに使われる巻きばねを製造・販売するドイツのGebrüder Ahle GmbH &Co. KGも傘下に収めた。

今後の全社横断で取り組む企業買収などには、商用車用・車両用ばね事業の第二拠点づくりなどを含む64億円の成長投資とは別枠で、22億円を配分する。

国内鋼材に過度に依存せず

三菱製鋼の2026年3月期の売上高は1545億5700万円(前年度比3.1%減)、営業利益は47億8800万円(同27.0%減)だった。

売上高全体のうち、ばね事業が49.3%を占め、特殊鋼鋼材事業の35.9%、機器装置事業の7.4%、素形材事業の6.2%、流通、サービス事業などのその他の1.2%と続く。

特殊鋼メーカー「三菱製鋼」商用車用・車両用ばねでM&A活用 収益構造の転換へ
三菱製鋼の売上高構成比

2029年3月期は、売上高1780億円(2026年3月期比15.1%増)、営業利益110億円(同2.29倍)を目標とする。

従来は鋼材を利益の中心に据えていたが、今後は鋼材の比重を下げ、精密部品や海外鋼材などの戦略事業の比率を高め、利益構成の転換を進める。

同社は営業利益の目標について「国内鋼材に過度に依存することなく、戦略事業・高付加価値領域の比率を高めることで、利益の質を転換して実現を目指す」としている。

戦略事業である商用車用・車両用ばねでのM&Aの活用は、この転換を進める具体策の一つとなる。

文:M&A Online記者 松本亮一

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