クリスマスの植物ポインセチア
画像提供:日本ポインセチア協会
11月も半ばを過ぎると、真っ赤なポインセチアが店頭に並びはじめ、街は一気にクリスマスモード。
今では日本でも、クリスマスを代表する植物となったポインセチアだが、園芸植物としての歴史はさほど古いものではない。


ポインセチアは、メキシコなど中南米が原産で、現在のように広く園芸用として栽培されるようになったのは、19世紀になってから。
植物学者でもあり、メキシコ駐在のアメリカ大使でもあったジョエル・ロバート・ポインセット氏(1779-1851)が、1825年にアメリカに持ち込み栽培したのが、世界中に広まったきっかけ。
冬の寒い時期に、ここまで色鮮やかな赤と緑を持つ植物は貴重というのが、世界中に広がった理由なのだそうだ。

クリスマス近くに、花を咲かせているので、寒さに強いイメージがあるポインセチアだが、原産がメキシコという温かい地域ということもあり、意外にも寒さには弱いのだ。明治の初めに日本に入ってきた時も、西洋式の温室を持っていた小石川植物園で栽培されたという記録が残っているそう。日本では、寒さに弱いためなかなか冬を越すのが難しいが上手く育てれば何十年と栽培することができる。

茨城県の筑波にある筑波実験植物園には、おそらく日本で一番長寿ではないかといわれているポインセチアがあって、1975年の開園当初から、30年間以上元気に育ち続けているのだそうだ。

ところで、ポインセチアの赤い部分は花でないというのは、多くの人が知るところだと思う。中心にあるちょっと黄色が見える小さなつぶつぶだけが花で、赤い部分は苞(ほう)と呼ばれる葉が変化したもの。
よく、アジサイも青やピンクの色がついている部分は、花じゃなくてガクと呼ばれるが、じゃあ、ガクと苞との違いは何なのか?
つくば実験植物園で聞いてみると、
「ガクは一つの花を包んでいるもので苞は2つ以上の花を包んでいるものを指します」
とのこと。ポインセチアは、つぶつぶがたくさんあるので、花を取り囲む赤い部分は苞というとのこと。同じような苞をもつ植物には水芭蕉があって、あの水芭蕉の白い部分が苞なのだそうだ。

この苞が赤いというのにも、受粉を助けてくれる昆虫を呼び寄せるという、ちゃんとした理由があるそうで、赤い苞をとってしまうと昆虫たちが集まらないということもあるとか。

日本ポインセチア協会に話を聞いたところ、苞が赤くなるにも条件があって、花を咲かせたい8週間前に気温15℃以上、一日の連続した暗闇が11・5〜13・5時間必要なのだそうだ。これは、原産地の中南米が日本より暑く乾燥した熱帯サバンナ気候の植物だということを考えれば納得の条件。30回越冬させるというのは、さすがに無理としても、一度は自分の元で越冬させて真っ赤なポインセチアを育ててみたいものです。
(こや)