一眼レフカメラといえば、銀塩の時代からデジタル化した今日まで、メーカーを問わずブラックボディが主流。ところで、そもそも黒にこだわる理由があるのだろうか。
白ではダメなのか。この素朴な疑問をニコンに聞いてみた。

――黒ボディが増えたのはいつごろ?
「もともと黒は光学性能に有害な反射をなくすという点から、カメラ内部やレンズに用いられたほか、裏ブタや革などのカメラ外観の一部にも使われていました。ボディ全体を黒くした一眼レフカメラが増えたのは80年代です。それ以前は真鍮製カバーにクロームメッキを施したシルバーボディが主流でした」

――ニコンの最初の代表的な黒ボディカメラは。
「1979年発売の普及モデル『EM』と、1980年発売の最高級モデル『F3』です。
当時、黒いボディと赤ラインの組み合わせは、新鮮な印象を与えました。
『F3』は真鍮製カバーを使用していたので、メッキの上に黒色塗装をする必要があり、下地処理を含めて手間がかかりました。他方、『EM』はプラスチック製カバーなので、黒色塗装だけで済みました。実は、黒ボディはプラスチック素材に適しているのです」

――黒ボディの機能的な理由は。
「シルバーボディが主流の時代から、プロのフォトグラファーは黒塗装を施したカメラを好んで使っていました。黒ボディには、カメラが目立たない(報道撮影)、光が反射して被写体に写り込まない(スタジオ撮影)などのメリットがあったからです。

そのため、黒ボディはプロが使う憧れのカメラとなり、シルバーより精悍なイメージを持たれていきました」

――黒ボディが増えた理由は。
「1985年発売の『F-301』以降はすべて黒ボディが主になり、他社でもほぼ同時期に黒ボディが増えました。それはカバーの材質が変化したことで黒ボディがつくりやすくなった時期と、シルバーより黒が良いというトレンドが一致したからだと思われます」

――黒ボディは永遠に不滅か。
「当社ではカバーの材質がプラスチック以外のチタンやマグネシウムダイキャストに変わっても、黒を続けています。やはり現在でも、プロのフォトグラファーには黒がもっともふさわしいと思うからです」

一眼レフカメラの黒ボディには、立派な理由があったのだ。最近は普及モデルを中心に女性ユーザーを意識して、白や赤などのマイクロ一眼カメラも登場している。
だが、プロ、写真マニア向けの高級一眼レフはこれからも黒ボディであり続けるだろう。
(羽石竜示)