とてつもなくうれしいことがあると、思わず飛び跳ねたり走り出したくなったりしてしまうものだ、と思う。そんな衝動を覚える時は大抵周囲への注意力など働くはずもない状態なので、大人になってもアザが絶えない人生を送る筆者なのだが、ある日うれしいことがあり「ヤッター!」と心で叫んでジャンプしたところ、部屋と部屋の境目の天井が低くなっている部分に、思いっきり強くガツンと頭をぶつけてしまった。


瞬間、目から星が飛び出した感じがして、頭を抱えてしゃがみこみながら思ったのは「本当に漫画みたいに目の前に星が見えるんだ……」ということ。漫画ではよく、ぶつかるシーンに星が描かれている気がする。あれは衝撃をわかりやすく伝えるための演出かと思っていたが、非常にリアリティある表現だったのだと驚いた。

そして周囲にこの☆を見たことがある人が意外に沢山いることにもまた驚いた。とりあえず会った人にアンケートを取ってみたところ、見たことがあると答えた人は10名中7名。見たことがないと答えた3名はいずれも「あまり頭をぶつけたりしないから」という、至極まっとうな理由で見たことがないようだった。


見たことがある7名に詳しく尋ねてみたところ、見えた星の数も色もまちまちだったが、大きく下記の3タイプに分かれた。

(1) 金色、黄色系:2名 (2) 銀色、白色系:3名 (3) 赤+白黒系:2名

タイプ(1)の2名に共通するのは、「星を見たのは人生で1度だけ」「ぶつけた衝撃で気を失った」ところ。気絶するほどとは、相当なぶつかりようだ。「うれしいことがあって狭い場所なのにうっかり走り出したらぶつかって気絶した。小さい星がいっぱいキラキラ回転している感じで、色は黄色よりは金色のような感じだった」らしい。

タイプ(2)の星は、「星を見たのは今までに2~5回くらい」「一瞬病院に行こうか悩んだ程度には強くぶつけたが意識は失わなかった」という人が見ているようだ。
ちなみに筆者の見た星もこれ。「白い光の大きなものがまず2~3個目から飛び出し流れたように感じて、その背後に銀色の無数の細かなものがあったかもしれない」という感じ。気絶はしなかったが、気絶しそうに痛かったし、ぶつけた場所は大きなこぶになった。

タイプ(3)の2名は、「今までに3、4回」と「もう数え切れないくらい。最近だと昨日見た」と頻度の回答は分かれたが、ぶつけたシチュエーションは「歩いていて出っ張りにぶつかった」「洗いものをしていてふと気合いを入れた瞬間に台所の棚にぶつけた」「車の天井にぶつけた」など、わりとライトである部分は共通していた。「明るい光を見て目を閉じた時の赤っぽい世界に白と黒が点滅する感じ」の星なのだそうだ。


ところで、そもそもこの星は一体何なのだろうか? そのメカニズムを探るべく医師をしている友人に尋ねてみたところ、「あくまで私論ということになりますが、感じているのは視覚情報だと言うことになります。視覚情報は眼球の網膜で電気信号に置き換わった後、視覚伝導路を伝わって後頭葉内側の一次視覚野に伝わって像が結ばれます。おそらく衝撃によって視覚伝導路のどこかが異常興奮しているのを感じているのではないでしょうか」とのことだった。

ぶつけた度合いによって結ばれる像の色や数に差があるのかは定かでないが、ぶつけた強さ的には(1)>(2)>(3)なので、また違うシチュエーションで頭をぶつけることがあれば、また違う種類の星を見ることもあるのかもしれない。が、出来ればもう、見たくないです……。あなたはこの☆、見たことありますか?
(磯谷佳江/studio woofoo)