海外土産に食品をもらったとき口に合わないと感じる人は多いだろう。食文化は各国で異なるため、それぞれの味覚に違いが生じるのは当然だが、ならば日本の洋菓子はスイーツの本場フランスで、どのように映っているのだろうか。
パリで日本のケーキなどを製造販売するカフェ「ヤマザキ」で、日仏ケーキの違いをうかがった。 

「まず日本はスポンジをベースにしたものが多いのに対し、フランスはムースのものが多い、ということが異なります。フランスではデザート以外の料理に砂糖を使いません。そのため糖分を食後のスイーツに求めます。一方で日本料理はデザート以外の調理にも砂糖を使います。その違いがスイーツにおける甘さの程度として出ます」

このような違いがあるにもかかわらず、日の丸スイーツの代表格である、スポンジベースで作られた甘さ控えめのショートケーキの評判が上々だという。


「今は年末に向けてクリスマスケーキの予約販売が始まっていますが、定番のチョコレートムースのブッシュ・ド・ノエルに加えて、スポンジを使ったショートケーキが特に売れています。またスポンジとホイップクリーム、イチゴを薄い求肥で包んだ『雪苺娘(ゆきいちご)』というケーキも人気です。当初は、日本独自のものである求肥の食感がフランスでどこまで受け入れられるか心配でしたが、商品に加えてみると杞憂でした」

そのほかの日本食材の評判はどうだろうか。たとえばフランスでスイーツに使われ市民権を得た日本食材として抹茶がある。ヤマザキでも夏場にはかき氷をメニューに加えており、なかでも宇治ミルクがよく出るという。抹茶以外に今フランスでトレンドになっている日本食材はあるのか。


「ゆずが多く使われてきています。ミシュランの星付きレストランなどでも、ゆずがアクセントとして料理に用いられることも多いです。東日本大震災の放射能問題の影響で、しばらく日本からの輸入は止まっていましたが、最近はそれも再開し、ゆずの使用量に拍車がかかっています」

じつは「ヤマザキ」は日本の山崎パンがパリで運営しているアンテナショップの一つ。1988年のオープン以来24年間、パリジャンに日本のスイーツを紹介してきた。店内では日本のケーキのほかにも、日本独自の食パンやそれを使った日本風サンドイッチなどを展開している。

日系パティスリーにもかかわらず、客の約2割が日本人で残り8割がフランス人。
客層も若者ではなく60歳以上の年配者が多いという。日本のケーキが一時の物珍しさの対象ではなく、フランス人に受け入れられる可能性があると言えそうだ。現在、ショートケーキを提供しているパリのパティスリーは数えるほどしかない。しかし近い将来、フランスのスイーツの定番になる日も来るかもしれない。
(加藤亨延)