何を隠そう、僕はここ数年薄毛に悩んでいる。いや、“ひょっとして気のせいか?”という感もなくはない。
特に髪を切りたてのタイミングは、下した髪に隙間ができおでこが透けたりもする。俗に“すだれ”と言われる状態だろうか…。

でも、言い訳の材料が無いわけでは無い。生まれつき額は広いし、髪質もやや細い。しかも、思いっきりの直毛で、なにかにつけて美容師には髪をすかれる始末…。シャンプーを変えるなり、生活習慣を変えるなり、薄毛対策も色々と考え実践してきたつもりだけど、正直なところどうなんだろう?…… う~ん、もう決心しました!専門医に相談します!!

という事で伺ったのは、AGA(男性型脱毛症)治療・薄毛治療専門の医療機関「銀座総合美容クリニック」。
同院の正木院長に、あまりにも多過ぎる疑問や不安を、思い切ってぶつけてみました!

――実は私も髪で悩んでおり、AGA治療を受けるべきか迷っているのですが、「こういう人は来院した方がいいですよ」といった、なにかタイミングみたいなものはあるのでしょうか?
正木院長 : そうですね、「薄くなり始めたな」と自覚した瞬間がやはり、一番のタイミングかもしれません。症状の軽いうちに治療を行えば、それだけ気にならなくなる可能性も高いですからね。もうひとつは、誰かから客観的な目で指摘を受けた時でしょうか。他人の目がどこまで正確かという疑問はありますが、身近な人のちょっとした指摘や、久しぶりに会った人からの指摘は、日々少しづつ進行することで見落としがちな小さな変化に気づくきっかけとなるでしょう。これも、一つの目安かもしれないですね。
――毛が細くてコシも無く、ボリュームが出にくい人の場合は、「はたしてAGAなのか? それとも髪質のせいなのか?」と迷う方も多いと思うのですが。

正木院長 : 確かに、髪質の問題もありますね。髪の太さや量はもともと個人差の大きい物ですから、中には元々のボリュームが少ないことで将来を心配してしまう方もいらっしゃいます。ですので、本当に心配で自分で判断ができない場合は、一度病院で診てもらうのも一つの方法です。
――なるほど。ただ患者の身としては、病院に行くのもそれはそれで不安だったりします。病院に行っても、「気のせいですよ」の一言ですまされるんじゃないかとか、もしかしたら、ほぼほぼの確率でAGAと診断されてしまうんではないかとか……。

正木院長 : それはもう、本当にさまざまですね。AGAの症状があってすぐに治療を行う場合もあれば、それこそご本人の気のせいの場合もある。その辺はきちんと判断が出来ますので、不安な場合はやはりきちんと診てもらうのが良いでしょう。ただ…

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ここで重要になってくるのは、AGAの治療を専門的に行える病院が、まだまだ少ないという事である。
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正木院長 : AGAの治療・診断は経験によるものがやはり非常に大きいですね。それこそ、人間の頭髪は平均で10万本ながら非常に個人差の多い物であり、髪質も考慮すればその方々により髪の量は千差万別なのです。
その毛量が身体の成長や老化によって脱毛症でなくても変化するワケですから、AGA初期の場合などは判断も非常に難しい。また、AGAと診断された場合にも、その症状や進行度も千差万別ですから、治療もまたその方に合わせていく必要があります。

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AGAの治療は、ここ数年で広く広まってきた新しい治療だという事を覚えておかないといけない。多くの治療実績を持つ病院で、専門的な診察・治療を受ける事が、なによりも重要だという事だろう。そういう意味では、AGA治療を専門的に行う病院はうってつけの存在だろう。
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【「抜け毛」が目安になる】
正木院長 : あと、気になりだしの方はやはり「抜け毛」の量を気に掛けておくと良いですね。

――抜け毛ですか。
正木院長 : どなたでも秋口には若干抜け毛が増えると思いますが、AGAの場合は季節を問わず非常にたくさんの髪が抜けます。正常な場合でも1日に100本程度はだれでも髪が抜けますから、日常の中で多少抜け毛を見かけてもそれほど気にする必要はありません。「少し抜け毛が増えたような…」くらいであれば、たいていは正常な量の場合も多い。本当にAGAになると「気のせいじゃないか?」っていう範囲ではなくなりますから。
――明らかに確信が持てる量になるんですか?
正木院長 : 明らかに、という量になります。
髪は生え替わるものなので、抜け毛が出たからってすぐ薄くなるわけじゃないです。抜け替わりが早くなり、かつ髪が細く小さくなっていく事で薄くなる訳ですから、よほど抜けなければ薄くはなりません。枕元やお風呂の排水口にある抜け毛が増えてきたら、少し気を付けておいたほうが良いかもしれません。

【「ハゲは隔世遺伝」の真実】
――抜け毛になりやすいタイプってあるのでしょうか? よく「親族に薄毛がいると危ない」とか「ハゲは隔世遺伝」なんて言われてますけど。
正木院長 : 私どものクリニックで診療を行う場合、家族歴は問診票にも書いていただきますが重要な要素です。男性脱毛症というのは、遺伝でその傾向が大きく決まるのです。
――遺伝ですか……。
正木院長 : ええ。で、母方の家族から遺伝する傾向が強いんですね。
――へぇー! 「隔世遺伝」というのは、あまり関係ないですか?
正木院長 : 母方からの遺伝というのが、隔世遺伝にかかっていると思います。例えば母方のおじいちゃんの髪が薄かった場合、その娘であるお母さんは女性ですから男性の様には髪が薄くならない。でもお母さんは、AGAの遺伝子を持っているわけです。

それが息子に伝わり「そういえば母方のおじいちゃんは薄かったな」となると、それは孫から見れば隔世遺伝になりますね。
――なるほど!

【治療内容と費用について】
――では、先生のクリニックの治療内容についてお聞かせください。髪が気になりだして病院に行き、結果AGAの症状だったとします。すると、どんな流れで治療は進んでいきますか?
正木院長 : まず、診察を受ける前に、当院についての説明の時間をご用意します。おっしゃるとおり、「どんな治療をするのか?」「治療費はどの程度かかるのか?」「治療の期間はどのくらいなのか?」など皆さんご存知の無い事ばかりですから、一番最初にキチンとご説明をし、その上で前に進む事こそが何よりも重要です。

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ここら辺は、非常に重要なくだりだ。治療の方法だったり、コストの問題だったり、「いつまで治療するのか」だったり、基本的な情報をこの時点でしっかり確認する。この手順を踏まないと、患者として正しい判断ができなくなってしまう。診察するにあたっての事前準備のような意味合いだとお考えいただきたい。
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正木院長 : その上で「治療したい」というご要望であれば、医師が診療を行います。
――治療は、どんな内容になりますか?
正木院長 : 基本的には一ヶ月に一度ご来院いただいて、診察のうえ治療薬の処方を行います。経過に関しては、写真を毎回撮影し比較していきますね。あと当院では内服薬以外に、「成長因子」といって髪の毛の成長を促進する物質を直接頭皮に注入する「育毛メソセラピー」を行う場合もあります。
――成長因子とは何ですか?
正木院長 : 我々の体内にもあるものなんですけど、特に髪の毛や爪等の細胞の成長を促進する物質です。それがあるから夜寝てる間に特に髪の毛が伸びるわけですが、それを毛根に届ける事で、発毛を促す治療です。ただ、それも症状に合わせてですね。皆さんが、全ての治療を行うわけではありません。基本的には、内服薬だけの治療が主流ですね。

――そうですか! ところで気になるのは、治療にかかる費用です。
正木院長 : 当院に関しては、ホームページに載せてる通りの金額が全てです。内服薬治療だけの方は、月に6,825~18,375円。メソセラピーの施術が必要な場合は、加えて18,900円かかります。
――明確ですね。
正木院長 : そうですね。患者さんが不安にならないよう、可能な限り明確にしています。ですから、コースのようなものもありません。薄毛が気にならなくなるタイミングが6ヶ月とか12ヶ月とか、そんな区切りがいいとは限らないですからね(笑)。4ヶ月の人もいれば9ヶ月の人もいて、そこで止める人もいるわけだから。
――「だんだん生えてきたな」となれば、かかるお金も減っていきますか?
正木院長 : お薬が減れば、そうなりますね。
――最低で、6,825円になるわけですよね。
正木院長 : はい、そうです。

【AGA治療に“ゴール”はあるのか?】
――実は、ずっと気になってたことがあるんです。AGA治療って、完治はあるんですか?
正木院長 : 「あくまで体質的な物」と考えた場合、それはありません。
純粋に全く薄くならないような体質に変わるわけではないので、ある程度髪が増えてきて、患者さんが気にならなくなるかどうかがまずは重要なポイントです。気にならなくなってきたら、お薬を減らします。その後、一旦止めていただいても構いません。そしてまたコンディションが悪くなり気になる事があれば、その時はまた治療を再開する事も可能です。
――なるほど。その時の程度によってご本人に判断してもらい、気になりだしたら続行。という事は、AGAは“上手に付き合っていく症状”と言えますね。
正木院長 : おっしゃる通りです。

【AGA治療に来るのは、どの世代?】
――AGA治療にいらっしゃる患者さんの主な年齢層って、どの辺なんでしょう?
正木院長 : 一番多いのは、30代の方ですよね。次いで、20代と40代の方が来ているという感じです。
――へぇ~、そうですか。結構、お若い方が多いんですね!
正木院長 : 私は、「どの程度薄毛が進んでいるか?」ということよりも、「どれだけ髪を気に掛けている時期か?」という部分が、この数字に表れていると思います。年齢がある程度高くなってくれば、相対的に多少髪が薄くてもおかしくはないですよね。同年代で髪の薄い方も多くなってきているでしょうし、仕事もそれなりに経験を積み、中にはその落ち着いた雰囲気がプラスになる方もいるでしょう。一方、年代の若い方はやはり、外見も非常に重要な要素といえます。そうなるとやはり、20~30代の方が症状の進行度合いを問わず多くなりますね。
――薄毛の始まりかけって、一番気になりますもん! “進行の恐怖”が、若い人にはありますよね。

【都市伝説は信用できる??】
――あの、巷で色々言われてると思うのですが、「海藻を食べると髪にいい」とか、都市伝説的な風説が…。その中に、「これは!」というものはありますか?
正木院長 : う~ん、なかなかこれというものはありませんね…(笑)。例えば「海藻を食べると…」については、「見た目が髪の毛に似ているから、食べたら髪が増えるんじゃないか」とはるか昔に言われたのが起源なんて、そんな話しを聞いた事もあります(笑)。確かにミネラルの摂取という意味では悪くはありませんが、普通の食生活をしていればまかなえるわけで、特に髪に良いわけではないですね。……う~ん、事実に近い都市伝説ってなかなか無いかもしれませんね。
――例えば、「インディアンにハゲがいない」なんて話もありますけど。
正木院長 : 聞いたことないです! そんな話があるんですか(笑)?
――あるみたいですよ。あとは、綺麗好きじゃなく頭をあまり洗わない人は薄くならないとか(笑)。…

正木院長 : それはあんまり関係ないですけどね。ただ、よく言われる「毛穴の脂がAGAの原因」というのも、それはそれで事実では無いですよ。
――ほぉ
正木院長 : AGAというのは男性型脱毛症の名のとおり、男性ホルモンに起因して起こる薄毛の症状です。体質的に「髪にとっての悪玉男性ホルモン」の影響を受けやすい方が薄毛になるわけですから、毛穴の脂やシャンプーの回数とは関係のないハナシです。
――なるほど。都市伝説はやっぱり、都市伝説なんですかね(笑)。
正木院長 : 帽子も関係ないですし、白髪の多い人は薄毛にならないというのも違いますね。
――そうでしたか。……マッサージは、どうなんですか。やっぱり、髪にいいですよね?
正木院長 : う~ん、これも直接的にはあまり関係ないですね。
――えええーーーーーーーーっ! あと、「頭皮が動く人はハゲない」っていうのは……。
正木院長 : それも直接的には関係ないと思います。

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解説しよう。マッサージや頭皮に関する風説は、「血行不良が薄毛の原因である」という考え方が元になっている。だからこそ、「マッサージをして血行を良くする」という考えが広まった。でも、よく考えていただきたい。血行によって髪が薄くなるのであれば、髪全体が薄くならなければ理屈が合わない。でも、どんなに薄くなっても横や後ろの毛は残るでしょ? よって、「血行が犯人」の線は消えるわけだ。これは、頭皮の脂に関しても同様。
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正木院長 : AGAの犯人である「髪のとっての悪玉男性ホルモン」は、その受け皿が額の部分と頭頂部に集中してあるので、そこから薄くなるんです。側頭部や後頭部にはその受け皿があまりないので薄くならないんです。でも、老化による毛量の減少は場所を問わず一律に進行するので、いずれは横も後ろも薄くなってくるわけですね。
――なるほど。
正木院長 : 若いうちに髪が薄くなる理由のほとんどは、AGAの場合が多いです。睡眠とかストレスとかも、それが原因でAGAになる事はありません。
――そうですか。 ……あの、個人的な相談をしてもいいですか? 僕、寝る前じゃなく、寝て起きた朝に入浴するんです。…

その生活サイクルを、友人に指摘されまして。率直に「ハゲるぞ」と……。

正木院長 : 確かに、夜寝る前にお風呂に入るべきですよね。その日の汚れは寝る前に取った方がいいですから。でも、その事とAGAには直接の関係はありません。夜洗わないから薄くなるわけではありません。なぜなら、AGAの原因は髪にとっての悪玉男性ホルモンですから。
――という事は、タバコや油物の食事とかも……。
正木院長 : そうですね、その通りです。
――行き着く先は、男性ホルモンなんですね。
正木院長 : ええ、そうです。

【AGA治療を自分で体験したお医者さんっているの?】
――ちなみにAGA治療専門医で、実際にご自身で治療をされてる方っていらっしゃいますか?
正木院長 : 例えば、僕はAGAの薬を飲んでましたよ。
――あ、そうですか!
正木院長 : 実際、そういう治療をされてる先生は関心がおのずと高いですよね。 うちの職員にもたくさんいますよ。
――へぇー! ご自身で治療を受けてるお医者さんもいらっしゃるんですね。
正木院長 : そういう人ほど、患者さんの気持ちも分かりますからね。


……どうですか。もう、目から鱗の連続で! 個人的には、今までの不安がドッと軽くなりました。
また「AGA治療の門、恐れるに足らず」と、強く実感です。何しろ筆者と同世代(30代)が多く通ってそうだし、仮に治療が始まったとしても、かなり患者さんの意思を尊重してくれるみたいです。最先端の頭髪医療、そのカギは親身に話を聞いてくれるドクターにあるようですね。
(寺西ジャジューカ)

■取材協力 : 銀座総合美容クリニック