8月末に関西に行った際、新大阪駅構内で頻繁に流れているアナウンスに面食らった。

それは、「キャリーバッグをご使用のお客様」に向けた注意喚起のアナウンス。
朝から晩まで、それこそひっきりなしといっても過言でないほど頻繁に流れている。
ふと周りを見回すと、夏休み最後の時期ということもあってか、確かにキャリーバッグを使用している人はかなり多い。もしかしてキャリーバッグ使用者の衝突事故などが増えているのだろうか。
とはいえ、毎日多くの乗降客がいて、同じくキャリーバッグ使用者も多い東京駅では、こんなにもキャリーバッグに関する注意を聞かないけれど……。もしかして、「大阪人はせっかちだから」とかじゃないですよね?

JR各社へ聞いてみた


まずJR東日本に聞いてみると、以下の回答があった。
「東京駅では、キャリーバッグの事故への注意は、30分に1回程度のアナウンスとなっています」(広報担当者)
「30分に1回程度」と聞くとそれなりだが、駅に30分間滞在することは、そうないだけに、あまり聞かない印象なのだろう。
つまり、新大阪駅では「わずかな待ち合わせ時間」や「トイレの待ち時間」でも「ひっきりなし」と感じるほどということだ。


続いて、東海道新幹線を運行するJR東海・広報に聞いてみると、
「新大阪の新幹線駅では、キャリーバッグの注意アナウンスは1日中というわけではありませんし、現場を見て頻度を変えるわけでもありません。また、駅によって変えるのでもなく、マニュアル通りに行っているだけです」とのこと。
そして、「新大阪駅でも、新幹線駅ではなく、JR西日本の在来線コンコースでは?」と教えてくれた。

そこでJR西日本に問い合わせてみると、以下の回答があった。
「新大阪駅は今年はじめに改良工事を行ったのですが、放送設備の改良も同時に行い、自動放送を始めました。キャリーバッグについての自動放送を始めたのもそのときで、何か事故がきっかけとしてあったわけではありませんが、海外のお客さんが最近増えていることもあり、キャリーバッグがぶつかった、ひっかかったなどのご意見が増えていることは一因としてあります」

自動放送にはキャリーバッグについての注意のほか、「ユニバーサルスタジオジャパン乗り場の案内」や「乗り換え口の案内」「コインロッカーが満杯のときの他のロッカーの案内」など、4種があるそう。

「他の4種のアナウンスにつきましては、時期・場面が限られるものですので、それ以外に流れるキャリーバッグへの注意ばかりが特段目立っていたのではないでしょうか」
つまり、時期や場面を選ばず、「通常モード」で流している自動放送が、キャリーバッグに関する注意だということだ。

キャリーバッグ利用者が多くなった背景は?


それにしても、なぜこうもキャリーバッグ使用者が多いのか。
実際、海外からの観光客が多いということはもちろんあるが、キャリーバッグの使用スタイルが昔と変わってきたこともあるのではないかと思う。かつては「海外旅行用」のイメージがあったが、今では国内の帰省時や出張時などにも使われるようになっている。
さらに、家族旅行では、かつては大型キャリーバッグ1~2台に家族全員分を詰めて移動する家庭が多かったように思うが、今は小学生などの子も「自分用」の小さなものを引きずり、家族全員が銘々のキャリーバッグを持っている姿をよく見かけるようになった。

キャリーバッグの軽量化と、個人使用が進み、より日常的に使われるようになった今、混雑時や公の場での使用時の注意ももっと考えるべき時がきたのかもしれない。

(田幸和歌子)