なぜフランスは郵便事業調査で日本を抑えて2位なのか

万国郵便連合(UPU)により行われた世界170カ国を対象にした郵便事業調査「郵便業務発展総合指数」で、日本はスイス、フランスに次ぐ世界3位との評価を得た。

同調査はUPUが保有するデータなどを元に、「信頼性(郵便業務運営における効率性レベルの評価)」「到達性(郵便サービスの国際化のレベルの評価)」「妥当性(全ての主な市場における競争力のレベルの評価)」「弾力性(ビジネスモデルの適応能力のレベルの評価)」の4つを基準として、100点満点で数値化しランキングにしたものだ。


これまでコネタでは、フランスの郵便事情がずさんな面を記事にしたことがあった。ところが今回、そのフランスが日本を抑えて2位だった。なぜフランスは2位になることができたのだろうか? UPUに理由を聞いてみた。


高品質なサービス提供が評価された日本


まずスイス、フランス、日本の上位3カ国が高スコアを得られた共通理由は、郵便業務発展総合指数によれば、いずれも広範なサービスを優れたクオリティで達成し、グローバル化に対応、顧客需要の取り込み、急速な変化への対応性ができていたからだ。

上位3カ国は郵便インフラ発展において卓越しており、ほぼ満点に近い。UPUの担当者は「これらの国々は『信頼性』『到達性』『妥当性』『弾力性』という評価分野において、とても良いパフォーマンスをしており、4位のオランダ、5位のドイツを加え、郵便事業の発展という分野において、明らかに世界でけん引する集団を構成している」と指摘する。

特に日本については、物流における高品質なサービスが他国より優れ、貯金や保険の分野を含む幅広いサービスへの高い需要を取り込んでいることも評価された。



次世代を見据えた投資をするフランス


フランスが日本より総合的に高い点数となった理由はなんだろうか。それはフランスが行う、次世代に向けた多様で広範囲な郵便事業の展開にある。
なぜフランスは郵便事業調査で日本を抑えて2位なのか

「伝統的な手紙から、成長著しいeコマースによって生み出される小包配送、ダイナミックで革新的な郵便銀行とその金融サービスに至るまで、フランスは幅広く混ぜ合わされた郵便事業サービスにとても興味深いものがある」とUPUは言う。加えて「将来の顧客ニーズに備え、多くのスタートアップに投資することにより、郵便事業は革新されていく。また郵便ビッグデータ(30億を超える追跡情報)の精査といった点においても、フランスは専門のデータ担当者を置いている数少ない国の1つだ」と特徴を述べる。

ただし日本が、この分野において大きく離されているわけではない。基本的に上位にランキングされた国々は高い次元でパフォーマンスを競っており、そこに際立った差はない。


UPUによれば、上位国には2つの決定的な成功要因がある。1つは、少なくとも過去20年間において、国内の郵便インフラへ安定して投資してきたこと。もう1つは、各郵便事業会社が国民との関係の中心に、信頼を置いているということ。この「投資」と「信頼」により、それら国々の郵便オペレーターはデジタル経済と電子商取引の発展において決定的な役割を演じられ、十分な利益を得られているという。


フランスの郵政公社は信頼できる会社なのか


肝心のフランス郵政公社(ラ・ポスト)に対する、フランス国民からの信頼はどうなのだろうか。郵便業務発展総合指数でフランスは高評価を得た。
確かに、世界170カ国中の郵便サービスが著しく低い国と比べれば、相対的にフランスは高い位置にあるかもしれない。しかしフランス国民は、実際にそこまで自国の郵便事情に信頼していないのではないか。

UPUによれば、フランス郵政公社に対しフランス国民が信頼していないという記者の認識は、「完全に間違ったもの」であるという。「フランス郵政公社が優れた質に達しているというのは、UPUのデータ上のみだけでない。他の機関が行なったUPUのデータを用いない調査においても、フランス郵政公社はフランス国民からの信頼を寄せられている」と主張する。
なぜフランスは郵便事業調査で日本を抑えて2位なのか

例えば、2015年に仏調査会社マケイアとオキュランスが行った「フランス人が判断する企業の信用性」において、どの会社がフランス人にとって信頼に足るか順位付けしている。
同ランキングでは、ル・ボン・コワン(1位)、ブラブラカー(2位)、バントプリベ(3位)、グーグル(4位)、アマゾン(5位)といった近年急速に業績を伸ばしている新興企業を中心に上位が占められているが、その中でフランス郵政公社は全体で6位に位置づけられた。伝統企業だけに限ったランキングでは1位だ。

もちろん、今までフランス郵政公社による満足いかない対応を受けた体験を持つ人もいるだろう。しかし、これら2つの調査によれば、フランス郵政公社は総合的に評価が高い会社という結果になったのだ。
(加藤亨延)