『名もなき毒』の再放送がスタートする。
2014年6月25日(水)あさ10時5分からTBSテレビ放送予定だ。

(関東広域圏ね、地域によっては放送タイミングが微妙に違うかも)

これが、いいドラマなんですよ。
再放送というチャンス、ぜひ観てほしいので、
観るべき理由5つを挙げます。

【1】宮部みゆき原作!
原作は宮部みゆきの杉村三郎シリーズ『誰か somebody』
2013年7月期月曜枠のドラマで、全11話。
『誰か somebody』は、『模倣犯』の次に書かれた現代ミステリー。
シリーズ2作目の『名もなき毒』は、吉川英治文学賞受を受賞した。

宮部みゆきに、外れなし。
ですから、そりゃおもしろいです。

【2】しかもていねいにドラマ化!
宮部みゆきに外れなしだけど、
原作の映像化は、どう? 外れなしって言える?
って反論されそうだ。
たしかに。
外れ、ある。
映画『模倣犯』、森田芳光監督作品。

えーと、凄いところもあったが、あのラスト。
やけくそになっちゃったのか、頭が爆発してたのか。
とにかく、誰にでも薦められる傑作とは言えない。
他にも、正直、原作はあんなに凄いのに、映像化すると、うううーむ、って作品はいくつかある。
ショートカットしてまとめちゃったなーって感じになってるものもいくつかある。
だが、『名もなき毒』はだいじょうぶ。

安心めされよ。
というか、宮部みゆき作品のテイストが一番ていねいに掬い上げられた映像作品と言っても過言ではあるまい。
第1話から第5話までが『誰か somebody』。
第6話から第11話までが『名もなき毒』。
2冊の宮部みゆき作品を、じっくり、ていねいにドラマ化。

【3】主人公の杉村三郎がハマってる
主人公の杉村三郎は恋をして、結婚を申し込む。

が、彼女は、莫大な収益を誇る今多コンツェルンを一代で築き上げた会長の娘だった。
という設定。
すごい会長を義父に持つことになった男。
しかも、好青年というか、エキセントリックな特徴があるわけじゃない普通の男性。
案外、キャスティングがむずかしい。
っていう主人公杉村三郎を演じるのが、小泉孝太郎。

元内閣総理大臣・小泉純一郎の長男だからねー。
すごい会長が義父であるって役どころにピッタリ。
誠実な演技もあって、ハマり役。

【4】絶妙のキャスティング
主人公以外のキャスティングもバッチリ。
いま大人気のだれそれを人気ゆえに抜擢ではなく、役柄にあう役者陣をしっかりと選んだ。
前半のキーとなる姉を演じるのが、深田恭子。

喪服姿、憂いのある表情が、すばらしいです。
他のキャスティングもばっちり。
喫茶睡蓮のマスター役の本田博太郎の存在感、すごい。
編集部仲間のテッシーこと手島雄一郎を演じるムロツヨシも、いい味でてる。
『名もなき毒』DVD-BOXのメイキングには、彼の大失敗騒動が収録されていて、そっちを先に観てると、テッシーが出るたびにニヤニヤしてしまう。

【5】じわじわと盛り上がる
地味だけど、じわじわ盛り上がる。
細部まで演出が行き届いていているので、二度観ても退屈しない。
発見がある。
たとえば、姉と妹の対比。
トイレも味噌汁も「御」はつけず、誰に対してもラフな話し方をする妹に対して、いつでもていねいな話し方をする姉。
美空ひばりの「車屋さん」が流れるシーンの姉妹の描かれ方と歌詞の持つ意味。後の展開を大きく暗示しているので、注意深く観てほしい。
そういう意味でも、集中して連続で観れる再放送はありがたい。

【6】『ペテロの葬列』を観る前に
7月7日月曜日スタート『ペテロの葬列』は、杉村三郎シリーズ映像化第二弾。
もちろん独立した作品として楽しめるだろうが、第一弾である『名もなき毒』を観ていれば、より興味深い作品になるはず。

というわけで、ぜひ『名もなき毒』観てみてねー。
(米光一成)