主人公の美少年アッシュ、男たちに囲まれ大人気。ただし性的な面でだけ。
しんどい。
アニメ『BANANA FISH』(→公式サイト)。
「第五話 死より朝へ」が今日8月2日(木)25:05より、フジテレビ”ノイタミナ”ほかで放送。Amazon Prime Videoで毎話フジテレビ放送開始1時間後より配信予定。
「バナナフィッシュ」アッシュが男たちに(性的に)モテモテすぎてつらい4話
吉田秋生「BANANA FISH」3巻表紙。アニメ三話は刑務所編

アッシュの少年性


三話まででアッシュは、刑務所で強姦されるわ、幼少期のポルノビデオのトラウマえぐられるわで散々だった。
四話でも艱難辛苦の連続。
刑務所では同房になったブルに襲われる。
以前犯されたガーベイに呼び出されて、再度暴力を振るわれる。挙げ句の果てに兄のグリフは死んでしまう。

原作では静かに描かれていた、アッシュの地獄。
アニメは原作にあわせて、あまり感情的になりすぎないようにおさえつつも、描写の過激度はアップ、悲痛さが強くなっている。
(なおガーベイの出番は原作と違うが、物語の流れ的には特に変化はないと思う)

刑務所編ではよってたかって、男たちが彼を性的な目で見ている。
その他の場面でもディノをはじめ、アッシュにセクシャルな視線を送るキャラは多い。

一応「○○はゲイだから」という意味のセリフはあるし、刑務所は特殊環境なので若い子はターゲットになるという説明はあるものの、それにしたって好かれすぎ。

Twitter上で「モブに女がいる」という感想を見かけた。
そう反応してもおかしくないくらい、「バナナフィッシュ」には女性が出ない。登場人物がかなり多い作品だが、メインで出てくる女性キャラはごくわずか。
(マックスに妻子がいるように、男女関係はアッシュ周り以外だと描かれてはいる)
その中にあってアッシュは、限りなく「男」性を持っていないキャラだ。
子供の頃から大人の男性に性的虐待を受け続け、男娼として生き延びてきたのもあり、アッシュ自身の「性」への嫌悪感はものすごく強い。

ガーベイの股間をフォークで潰す去勢のようなシーンは、原作にはない。性への拒絶がより強調される形になった。

「男」性から切り離されたアッシュは、限りなく純度の高い「少年」として描かれている。「無」性に近い。
アッシュが性欲にまみれた大人の男性に襲われるほどに、彼の性はさらに失われ、心も閉ざされていく。
性が一切介在しない、人間の本質部分だけ残された状態になることで、彼ははじめて心を開くことができる。

その相手がエイジだ。

この作品の序盤は、アッシュが心身の限界まで追い詰められていく。
性的視線を送ってくるモブの男性たちは、彼を苦しめ性を奪うための装置に近い。
アッシュがモテているのは性的な方向だけ。序盤はモノとしてしか見られていない。彼のことを「お姫さま」と言う、性欲の塊になっている男たちの揶揄が印象的だ。


大ボスであるディノは彼をバラバラにしてでも手に入れたいという激しい感情を抱いているが、これは他の男性キャラの性的視線と少し異なる。アッシュの性を破壊した根源たる存在の愛憎は、全編通して見ても難解なほどにねじくれている。

髪の毛に恵まれたショーター


今回驚いたのは、ショーターがはげてないところだ。
原作では「張大飯店」で変装したショーターが、とさか頭をツルリと剃っていた。
ところがアニメでは、派手な髪の毛を生やしたまま変装している。

そもそも描くのが面倒くさい、とさか頭。
ショーター自体重要な立ち位置のキャラなので、無意味に変更したものではなさそうだ。
彼が髪の毛を残したのにどんな意図があるのか、今後彼は毛を剃るのか。
謎解き要素も多い作品なので、ちょっとでも原作から変わると気になって仕方ない。
ビジュアル的にはスキンヘッドのほうが覚悟を決めている感が出ているが、とさか頭の方が彼のチャラい部分を引き立てている気はする。アクションシーンだけでいうと、とさか頭の方が断然絵面が良い。

「不良少年」のイメージ像が、原作では80年代、アニメ版は10年代にシフトされている。
ここはせっかく時代を変更したのだから、原作に囚われすぎず、かつキャラクター性を活かしつつ表現してほしいなあ。
エイジがチャイナタウンに行くときのはだけ方は、80年代と10年代をミックスした感ありましたね。

(たまごまご)