10月1日は何の日かご存じでしょうか? トンカツの日? 日本茶の日? 天一(天下一品)の日? 実は、10月1日は日本酒の日でもあるのです。

そもそもお酒という字は、「酉」(とり)からきています。
十二支で言うと「酉」は10番目。そう、10月を意味しています。さらには、昔は10月1日を日本酒の醸造年度が切り替わる日としていたので、10月1日は日本酒の日なのです。

と、ここでいきなり酒造年度と言われてもよくわからない方も多いと思いますので簡単に説明しましょう。よくワインで○年物とか言いますよね? ワインと同じように、日本酒にも造られた年を表す酒造年度というものがあるのです。

例えば平成22年度に作られたお酒は22BY(BY:Brewery Year、直訳すると醸造年度という意味)と言います。
日本酒は冬から春にかけて新年をまたいで造られるので、そのまま平成何年ものと言ったのでは、果たしていつ造られたものなのかが正確にわかりづらいので、この酒造年度を使って何年に造られたものなのかを表しているのです。

ちなみに現在、というか昭和40年以降は酒造年度の切り替わる日は7月1日となっていて、すでに23BYは造り始められていたりもしますが、10月1日が日本酒の日であることには代わりはありません。

さて、日本酒のお話です。
最近の日本酒は本当にすばらしい味わいなのをご存知でしょうか?

なんとなく日本酒というと、オヤジが飲むお酒とか、ベタベタ感じがするとか、悪酔いするとかマイナスのイメージを持っている方もいるんじゃないかと思います。かくいう筆者も、都内に出るために利用していた電車がかなり遠くまで行くため、割と夜は日本酒のワンカップを持った方が電車内で飲酒していることが多かったので、あまりいいイメージを持っていなかったのでした。

でも、それらは古いイメージにすぎません。
日本酒は変わってきているのです!

例えば最近よく飲まれている日本酒の種類に「吟醸酒」というものがあります。これは、日本酒を造る際に使うお米を通常よりも多く削った日本酒です。実はお米の雑味(これが旨味にもなるのですが)は外側にあるので、削れば削るほど雑味のない、きれいなお酒になるのです。

そうやって造られた吟醸酒はフルーティーで香り高く、上等の白ワインと比べても遜色がありません。さらにはもっとお米を削った「大吟醸酒」になると、最高級の白ワインとも比肩しうる、お酒の芸術品と言えるでしょう。そこにはベタベタとした甘い感じのする日本酒の姿は一切見えません。


この吟醸酒や大吟醸酒は、最近の醸造技術によって作ることができるようになった日本酒です。なんと、市場に流通するようになったのは1980年代以降で、普通の居酒屋に置かれて気軽に飲めるようになったのはここ数年のことだったりします。江戸時代の将軍様でも飲めなかった超高級酒。それが吟醸酒(大吟醸酒)なのです。

ちなみに今、海外では日本酒の消費がどんどん増えてきています。日本酒の輸出は右肩上がりとなっており、吟醸酒や大吟醸酒が最高級の白ワインとも比肩しうる評価というのは決して誇張ではないのです。
震災の後も、需要は減るどころか増えているので、このブームは本物だと言えるでしょう。

また、日本酒は究極の食中酒でもあります。

よくネタにされるものに「お刺身に合うワインはあるのか?」という問いがあります。やってみたことがある方はわかっていただけると思うのですが、これが非常に難しいのです。合わせるのがなぜ難しいのか、それはワインはブドウで造るものということが挙げられるんじゃないかと思います。ちょっと乱暴な言い方をすれば、ブドウなどのフルーツソースが合うものがワインとは良く合うということなのですね。


一方で日本酒はお米からできています。お米と各食材との相性の良さは、これはもうみなさんご存じでしょう。お肉だろうがお刺身だろうが貝だろうが、なんでも合わせられます。ということは、お米からできた日本酒が、さまざまな食材に合わないわけがないというわけです。そしておかずだけで食べるよりもご飯と一緒に食べた方が何倍も美味しく感じるように、食材とあわせて日本酒を飲むことで、両方を何倍にも美味しく感じられるのです。

もちろん日本酒にもさまざまな種類があるので、すべての食材に1つの日本酒で合わせるということはできません。
例えば脂の乗った肉や焼き魚には、後味をスパッと切ってくれる本醸造酒や米の旨みを感じさせる純米酒を。チーズやマリネといったワインとよく合うものには吟醸酒を。というように食べるものに対して日本酒を選ぶ必要はあります。ですが、必ずやその食材に合う日本酒は存在するのです。カレーやチョコレートに合う日本酒すらあります。これが、日本酒が究極の食中酒たるゆえんなのです。


そんな日本酒ですが、実は秋が一番美味しい季節だったりもします。春に造られた日本酒を半年ほどゆっくりと熟成させて、秋に出荷されるものを「ひやおろし」と言います。このひやおろしが、ちょうどよく熟成されて味が乗っており、一番美味しいと言われているのです。

というわけで誰が何と言おうと、秋は日本酒の季節なのです!

でもどこで飲めばいいの? という疑問をお持ちの方もいるんじゃないかと思います。そこで、日本酒の試飲イベントに行ってみてはいかがでしょうか?

秋は日本酒の季節だけあって、各地でさまざまな日本酒のイベントが開催されます。特に試飲会は、さまざまな蔵がお酒を持ち寄って、どれでも好きなだけ試飲をさせてくれるという、まさに夢のようなイベントなのです。

ここでいくつか代表的な日本酒の試飲イベントを紹介しましょう。

平成23年大阪秋の吟醸酒を味わう会(10月3日)
平成23年東京秋の吟醸酒を味わう会(10月26日)
日本吟醸酒協会主催の試飲会です。先ほど説明したお酒の芸術品とも言える吟醸酒。その吟醸酒をひたすら味わうことができるのが、この吟醸酒を味わう会なのです。

日本酒天国2011 東京大試飲会(10月14日)
毎年人気であっという間にチケットが完売してしまうイベントです。お酒だけじゃなく、折り詰め弁当も出ちゃいます。もうチケットは残りわずかなので、興味のある方は急いで!

次世代蔵元 COMEBACK to SHIBUYA(10月23日)
若手蔵元有志による日本酒試飲イベントです。実は震災の日の翌々日(3月13日)にも開催されており、そのときは震災による被害で参加できなくなってしまった蔵元もありました。今回はそれらの蔵元さんも参加しています。日曜日に開催されているのもポイント。


これらのイベントを悪酔いしないようにこなすアドバイスとしては「水を飲むこと」です。試飲会会場には必ず水が用意されています。できる限り水を飲むようにしましょう。できれば、飲んだ日本酒と同じ量の水を飲むといいと言われています。

悪酔いしないように気をつけつつ、たくさん色んな日本酒を味わっていきましょう!(杉村啓)