東京に住みつつ「地方で副業」 転職も移住もしない稼ぎ方
(画像はイメージ)

「副業解禁」企業が増える中、どんな副業をしようかと思っているビジネスパーソンは多いのではないだろうか。そんな中、地方出身者が地元に帰省中、もしくは自ら気になる地域へ赴き、地方の企業にスキルを提供するという新しい副業の形が生まれている。

地方ではどのような人材が求められているのか。そして都市部のビジネスパーソンとしてはどのようなスキルを提供できるのか。そして地方で副業することのメリットを体験談と共に探ってみた。

“地方・ふるさとで副業”新しい副業のカタチ


副業といえば、会社が終わった後に飲食店でバイトをしたり、自宅でPCとネットを用いて行ったりするイメージがある。しかし昨今では、休暇中、地方へ帰省した折などに副業をするといった新しい副業のカタチがある。

それは、株式会社groovesによる「Skill Shift(スキルシフト)」である。副業を解禁する企業が今後ますます増えていくと予想される中、一つの選択肢になりそうだ。


地方には、どのような仕事があるのだろうか。
現在、スキルシフトのページで募集されている仕事には、次のようなものがある。

・会社HPの制作
・社会福祉法人の採用人事
・温泉旅館のWEBマーケティング
・観光地の営業戦略強化
・食品分析

いずれも報酬は月額3~5万円が相場となっていた。

groovesのスキルシフト担当者によると、現在スキルシフトで募集している仕事のジャンルの割合はおよそ「マーケティング系5:経営企画系2:WEB系2」くらいだという。地方では都会よりも一層、“情報をどう発信していくか”が問われることから、今後もマーケティング系の仕事は増えるのではないかと、担当者は予想する。

地方の企業が求めている仕事や人材は?


東京に住みつつ「地方で副業」 転職も移住もしない稼ぎ方
(画像はイメージ)

今、地方の企業ではどのような仕事や人材が求められているのか。担当者は次のように話す。


「地方の企業は、それぞれ事業拡大に必要な人材を募集しています。やはり売上に直結しつつ地域に希少な人材として、WEB関連やマーケティング関連は、今後多く求められていくと思います。地方における副業では、広い知識やスキルを持つゼネラリストより、プロフェッショナルな領域を持っている人のほうが、活躍の場が広がるのではないでしょうか」

地方の企業は、具体的にどんな人材を期待しているのか。

「企業側はある程度『会社に寄り添って』手を動かしてくれることを期待しています。相談・アドバイスなどを担うコンサルタントや顧問、また単純に作業だけをスポットで提供する外注的な領域は、すでに市場が成立しており、企業も選択の余地は十分あります。そのため、スキルシフトには『正社員として実務に精通している人が、継続して一緒に会社を盛り立ててくれる』というところに期待しているようです。
つまり図1の位置にある『中核人材領域』です」

図1
東京に住みつつ「地方で副業」 転職も移住もしない稼ぎ方
株式会社grooves提供

「中核人材」とは、中小企業庁によれば「事業上の様々な業務において中核を担う人材、または特殊な資格や専門性の高い就業経験を有する即戦力たる人材」と定義づけられている。

継続的にこうした中心的な実務を副業を通して担うことができるというのが、新しい副業のカタチであるようだ。

未知なる北海道でスキル提供した体験談


東京に住みつつ「地方で副業」 転職も移住もしない稼ぎ方
(画像はイメージ)

ここでスキルシフトの事例を一つ紹介する。東京に住む会社員が、スキルシフトを利用して初めて赴く北海道で副業をしてきたという体験談だ。

会社員A氏は、スキルシフトを通じて北海道石狩市の総合型地域スポーツクラブを運営する社団法人においてスポーツビジネス新規事業の立案をする仕事を引き受け、2018年1月22日に初回訪問したという。

「きっかけとなったのは、スポーツということ自体が自身のバックグラウンドと重なったこと、まったく縁もゆかりもない石狩という土地への純粋な興味、この寒い時期に北海道に行ってみたいと思ったことでした。
今回は初訪問であり、『どのような課題を抱えているか?』『どのようなスキルの提供や関わり方を望まれているのか?』といったヒアリングや、仕事の進め方に関する打ち合わせメインとなりました。次回以降は、具体的に仕事を進めていくことになると思います。費用は、基本的には交通費のみ先方に負担いただいています」

仕事のマッチングや北海道への興味だけでは、なかなか「見知らぬ土地で副業」には至らないのではないか。地方で副業をすることにどんなメリットを感じているのか。

「知り合いが全国に増えること。知らなかった街が自分と関係のある街になること。
そして物理的に日常の環境から離れることで、思考が刺激され、いいアイデアが出ることなどがメリットとしてあると思っています」

実際、現地では北海道ならではの体験もできたという。

「到着したのがちょうどお昼どきだったこともあり、先方がランチを用意してくれていたことに感動しました。北海道の海の幸を使った海鮮丼がめちゃくちゃ美味しかったです。また、すべてが新鮮だったのですが、雪の量があそこまで多いとは思っていませんでした。現地の視察に行き、事務所に帰ってきたときに事務所のドアが凍ってしまい開かなくなってしまったんです。先方は『よくある』とは言っていましたが、なかなか開きませんでした(笑)。
ちなみに私が力で開けました」

帰省中や地方での副業で大事なことを、A氏は次のように話す。

「興味が湧いたら、スキルに自信がなくともまずはやってみるのが大事だと思います。そして現地に行ったときに大切なのは、謙虚さを忘れないこと。基本的には物理的に距離が離れたところで仕事をしたりコミュニケーションをとったりすることが多くなるので、普段から顔を合わせている仕事仲間とのコミュニケーションとは違う部分で気をつける必要が出てきます。つまらないことでミスコミュニケーションが起こらないよう、常に謙虚さを忘れないことが大切だと感じます」

地方でスキル提供するという新しい副業には、一般的な副業では得られない、特有のメリットがあるようだ。


取材協力
株式会社grooves(グルーヴス)

(石原亜香利)