「内臓逆位」という言葉をご存じだろうか? これは、内臓のすべてが鏡に映したように逆に位置している内臓奇形を指している。かつては、手塚治虫の『ブラック・ジャック』でも取り上げられた症状で、ブラック・ジャックは鏡を使って手術を行っていた。



 中国でも最近、内臓逆位に悩まされている男性が出現し、話題となっている。

「南方都市報」(8月5日付)によると、広州東莞市第八人民病院に、左下臀部に強い痛みを訴える40代の男性がやってきた。医師は痛み止めを処方し、しばらく様子を見るように伝えた。しかし、一向に痛みが引かないため、あらためて病院で精密検査を受けることに。医師は男性を問診し、腹膜炎の可能性を疑った。

 しかし、検査の中で心音を聞こうと聴診器を当てた医師は、そこで初めて男性の体の異変に気が付いた。
心音が、通常とは反対側から聞こえたからだ。その後、詳しい検査で、内臓が通常の人間と正反対に位置していることが判明し、男性の病気もの虫垂炎であることがわかった。男性は現在、快方に向かっているという。

 病院によると、内臓逆位の原因としては、胚胎の発育過程で、両親から受け継いだ遺伝子が突然変異し、影響を及ぼしている可能性が高いという。この内臓逆位は100万人に1人の割合で見られる症状で、現在でも研究が行われているが、具体的な原因は不明だという。

 さらに8月4日にも、広東省高州市の病院で肝臓にできた腫瘍の摘出手術を受ける予定の男性が内臓逆位だったことがわかり、5時間の手術の末、無事に腫瘍摘出に成功したと報じられた(「広州日報」8月4日付)

 100万人に1人の割合なのに、立て続けに内臓逆位が発見されたことに関して、上海市在住の日本人医療コーディネーターはこう解説する。


「中国ではいまだに『生まれてこの方、何十年も医者にかかったことがない』という人が多く存在するので、今まで判明しなかっただけという見方もできます。しかし近年、中国では毎年、80~120万人の奇形を持った新生児が誕生しており、今も微増傾向にある。国家婦人・幼児保健センターも、『環境汚染が原因』と断定している。相変わらず、公害や食品偽装が減らないこの国では、今後もさまざまな奇病患者が出現することでしょう」

 中国では、人口の多さに加えて、急激な経済発展による公害が原因とされる遺伝子疾患を持つ人が日本より格段に多い。近年、中国の都市部では水質汚染や大気汚染、食品汚染などの影響から、新生児や動植物の奇形の増加が指摘されている。また、3歳女児が初潮を迎えたり、6歳で乳房が膨らむなど(記事参照)の異常生育も多数、報告されている。
今回の内臓逆位にかかわらず、この国で奇病患者の出現が減ることはないだろう。
(取材・文=青山大樹)