意外な人が意外な順位!? 明治時代の「英雄番附」
「英雄番附」上位の顔ぶれは、こんな感じです。
「歴史上の英雄」といって思い浮かべるのは、誰ですか? 坂本龍馬? 宮本武蔵? 織田信長? それとも豊臣秀吉? 今では人気のアノ人も、実は明治時代には意外な評価だったようで……。
そんな貴重な資料「全世界英雄番附」が、長野県須坂市にある「豪商の館 田中本家博物館」に展示されている。


これは『冒険世界』という雑誌の付録で、明治42年1月1日発行のもの。「読者撰定」とあるので、おそらく読者アンケートによる結果らしい。

「番附」は、東洋と西洋に分かれているが、横綱は東洋が豊臣秀吉、西洋がナポレオン一世、大関は東洋が成吉思汗(チンギスハーン)、西洋が歴山大王(アレキサンダー大王)、関脇は徳川家康、シーザー、小結は西郷隆盛、ペートル大帝(ピョートル大帝)といったところ。
チンギスハーンが家康より上というのもちょっと驚きだし、西洋の大関が「歴山大王」といわれても、あまりに古すぎてピンとこない……。

また、今では大人気の坂本龍馬が、明治42年当時は「官軍」のほうが英雄だったためか、「前頭」のずいぶん下のほうに小さく書かれているだけ。聖徳太子や宮本武蔵、新選組などの名前は一切ランキングされていない。


さらに、「勧進元」(主催者)として書かれているのは、コロンブス、釈迦、耶蘇(イエス)、ゲーテ、セクスピーア(シェークスピア)、ニュートンなど、十把一からげ!!
こうしたおおらかなくくりも含めて、当時を知る大変面白い資料なのだが、写真撮影は不可のため、残念だと思っていたところ、なんと売店に売られているではないか! きっかけについて、田中宏和館長に聞いてみると……。
「開館15周年を迎えますが、毎年5回展示がえをするなか、玩具やすごろく関係のときにこの資料を展示したところ、歴史好きな男性陣から『非常に面白い』『これは買えないの?』というご意見・お問い合わせがたくさんあったんです。そこで、6〜7年前に商品化して、売店で販売するようになりました」

ちなみに、田中本家博物館は、敷地面積約3000坪の「豪商の館」として知られるところ。
江戸中期・享保18年に、初代・田中新八が穀物、菜種油、煙草、綿、酒造業などの商売を始め、名字帯刀を許される大地主へ成長し、北信濃屈指の豪商となっただけに、非常に貴重な資料が多い。
実は、自分の地元なのだが、「所蔵品が多すぎて現在でもまだまだ整理がついていない」(館長)と言うように、いつ訪ねても展示物が違うことも、大きな魅力となっている。

GWなどに信州にお越しの方、ぜひ訪れてみては?
(田幸和歌子)