『お麩研究部』にジワジワと注目が集まっている。「お麩」というと、「味噌汁に入っている、フワフワしたアレ」ぐらいの認識かもしれない。
しかし、実はお麩に含まれる栄養素は多く、おまけにお麩を使えば簡単にデザートが作れてしまうという。そもそも、お麩とは何なのか?今、最もお麩のことを考えている(と思われる)「お麩研究部」部長のシラサカアサコさんに、お話を伺った。

――そういえば、生まれて以来、お麩についてアレコレと考えたことがなかったような気がするのですが、お麩って栄養面からみていかがですか?
「実は栄養たっぷりなんですよ。主な栄養素は植物性のたんぱく質。その他、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、 リン、鉄、亜鉛などの自然のミネラルがギュッとつまっていますから」

なるほど!見た目以上に、栄養が多いのだ。なんだか、得をした気分。
あれ?今、「見た目以上に…」と書いたが、そもそも「お麩」って何なのだろう?「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥」というし、アサコさんも優しく教えてくれそうなので、聞いてみようではないか。

――ものすごく根本的な質問をしてしまって申し訳ないんですが、そもそも、お麩って何からできてるんですか?
「小麦です。小麦粉に水を加えてよく練り、熟成させ水洗いを繰り返すと、でん粉(炭水化物)が流れ出てガム状のものが残ります。これがグルテンです。これに小麦粉やもち粉を加えて加工すると、お麩ができあがります。大きく分けると、形を整えて焼く『焼き麩』、蒸したり茹でたりする『生麩』、油で揚げる『揚げ麩』です」

グルテンという言葉が出てきたが…
「お麩の主原料、グルテンに含まれるグルタミン酸は、知能を高めたり、アルコール依存症を改善する、潰瘍の治癒を早めるなどの作用があるといわれています」

とのこと。
※摂り過ぎると神経が高ぶって眠れなくなるなどの恐れがあるとのことなので、ご注意を。

●お麩の種類はおよそ100種類!ある意味、「ご当地お麩」も!

お麩は大きく分けると、焼き麩、生麩、揚げ麩の3種類。
「しかし、全国各地には、その3種類だけでは当てはまらない独特の品種、形態のお麩が100種類以上あるといわれています」

そんなにあったのか!
アサコさんに聞いた一例を紹介すると…

・すだれ麸(石川)
すだれに巻きこんでつくるお麸。金沢の郷土料理「治部煮」やすき焼き、酢の物などに使う。

・丁子(ちょうじ)麩(滋賀・京都)
一粒ずつ、生地を整形して焼き上げた長方形の焼き麩。荷崩れしにくく煮炊き物に適している。


・安平(あんぺい)麩(山口)
丸餅のように大きくふっくら作り焼いた焼き麩…などなど。

●30年間で工場激減!お麩ピンチ!

ところで、お麩はいくらで売られているかご存知だろうか?スーパーでは、結構たくさん入っているのに100円~150円前後の安い値段で売られている。

しかし!
しかしである!

この安さがネックなのだ。お麩の製造工程はほとんどが手作りなので、人件費など、色々なコストを考えると、到底この値段では生活できないのである。「じゃあ、値段を上げれば?」という声が聞こえてきそうだが、値段を下げないと量販店では卸してもらえないという厳しい現状が…(涙)。

「給食等の食材で使用するお麩などを作っている、大きな業者は残っていけますが、その一方で潰れてしまった業者も多く、工場の数は40年間で5分の1にまで減っています」

とりわけ、高齢者を中心に個人で経営している会社は、価格では大手に負けてしまう。
お麸をつくるためのグルテンは非常に繊細で、緻密な温度管理が必要な上、製造時の水の量にかなり気配りが必要であり、長年の経験や勘によって蓄積された技術をもって手作りでつくられている。この高度な職人技術を価格に転嫁できないことが、業者が減ってしまう要因の一つになっているのだとか。

(どうしよう!!このままではお麩が食べられなくなってしまう!)
そう思ったアサコさん。そこでアサコさんは、ひと肌脱いだ!

「何か新しい形で、お麩の魅力を伝えていって、作っている人も食べる人も、皆さんが幸せになれたらいいなぁ~という願いを込めて、2012年11月に『お麩研究部』を発足しました」

●「麩レンチトースト」「お麩じゃが」を食べてみた

「お麩研究部」のサイトには、お麩にまつわるお話や、アサコさんが発案したお麩を使ったレシピ、全国の「部員」が教えてくれたレシピなどが紹介されている。今回は、アサコさんのお麩料理の中から2品を頂くことに!(←こういうのを漢字2文字で「役得」と呼ぶ)

・お肉なしのお麩じゃが(PCの方は下の関連写真参照)

文字通り、お肉を使わずに車麩を使用。お肉なしでも十分に食べ応えがあってヘルシー。
お麩に味がしっかりしみ込んでいて嬉しい。(詳しい作り方は、「お麩研究部」のサイトで)
アサコさん曰く「冷めると味がなじむので、お弁当にもぴったりです!」

・麩レンチトースト(写真参照)

牛乳・砂糖・卵を混ぜたものに車麩をひたして、バターを敷いたフライパンで焼いた逸品。メイプルシロップをかけても美味しい。

もっちりしていて、ビックリするほど簡単にできるのも嬉しい。(今回はモチモチふわふわ食感にこだわってつくっている、『あさこ食堂』オリジナル・麸レンチトースト専用のお麩を使用しています。※こちらのオリジナルのお麩は近日発売予定)お麩“自身”も、まさか「麩レンチトーストになるとは思わなかったのではなかろうか?どことなく、お麩が嬉しそうに見える。

※麸レンチトースト専用のお麩が発売されるまでは、市販の車麩で試すという手も。(詳しい作り方は、「お麩研究部」のサイトで)

そのほか、お麩の活用法として、ハンバーグを作る時の裏ワザについても教えていただいた。
「パン粉の代わりにお麩粉を使ってハンバーグを作ると、冷めてもふっくらとした食感が残ります」
とのこと。さらに、お麩を使ってドーナツや唐揚げ等を作ることもできるので、ぜひサイトで確認を。

●良いお麩とは?

ところで、一言で「お麩」といっても、全てのお麩が同じようなものではないという。
「良いお麩は、そのまま食べても美味しいです。水を吸い込んでも煮ても形が崩れにくいのも、良いお麩の特徴です。(ただし、強火で煮過ぎると、どんなお麸でも大きくなってしまいますのでご注意を)」

ひょえ~~。
スーパーに行ってもあまり扱われている種類がないため、置かれてあるお麩をそのまま買っている方がほとんどだと思うが、商品によってはネットで買えることもできるので、これからは美味しいお麩探しをしてみるという手も。

最後に、アサコさんに「お麩研究部」の今後の展開を聞いてみた。

「お麩は腹持ちが良いし、病院食や赤ちゃんの離乳食、さらにダイエット中の方にもおすすめです※。どんな料理に使っても合うので、お麩のレシピの開発や、全国のお麩の紹介や、料理教室などもやっていけたらと考えております」
※ただし、お麩自体はヘルシーでも、染み込ませるものがコッテリしているとそれも吸い込んでしまって高カロリーになってしまうため、要注意とのこと。

常にお麩のことを考えているアサコさんは、麺のようなお麩や、色々なお麩が楽しめるギフトセットの販売も計画中。お麩の料理を堪能できる「お麩の麩ルコース」のメニューも開発しているそうで、まさに、お麩のように“柔らか”頭な発想なのであった。(取材・文/やきそばかおる)

●『お麩研究部』サイト
http://ofuken.com/
“部員”も募集中!(もちろん、部費は無料!)

●著書「あさこ食堂の 一緒に食べたい おそごはん」(ディスカヴァー)
書籍情報はこちら

渋谷のcafe で開催した「リアルあさこ食堂」(1週間限定)では、店外まで長い行列ができるなど、話題を集めた人気ブログ「あさこ食堂」のごはんレシピと写真が本に。
帰って15分でできる、夜9時半からのひと皿ごはん+常備菜レシピ集