タリスとはベルギー、フランス、オランダ、ドイツなどを繋ぐ欧州の国際新幹線のこと。イージーはそのLCC(ローコストキャリア)だ。
欧州の高速列車は立ち乗りができない
イージーはなぜ安いのか。その理由は立ち乗りにあった。イージーの最安値10ユーロの運賃は「座席を保障しない」切符なのだ。
欧州の高速鉄道は、基本的に座席数以上の乗客は乗せない。つまり座席が埋まってしまえば、それ以上その便の切符は買えず、日本の新幹線のように立ち乗りでの乗車はできない。ところがイージーは、1便10人に限り「座席を保障しない」というカテゴリーを設け、10ユーロで売り出した。
「座席を保障しない」ことは「必ず立ち乗りになる」わけではない。もし乗車した便に空席があれば、座ることができる。満席の時は、ビュッフェ車両(ただしイージーではビュッフェの営業はない)で目的地までを過ごす。
実際立ち乗り席に乗ってみた
座席保障がない切符での乗り心地はどうなのか?
実際乗ってみると、やはり2時間半の移動は少々疲れた。イージーは高速専用線ではなく在来線を通るためか、揺れも気になった。試し乗りした営業初日の便は空席があったため、他の10ユーロ客はすべて座っていた。そのためビュッフェ車両はスペースがあったものの、もし10人全員がビュッフェ車両内に立っていたら、もう少し疲労を感じていたかもしれない。
ただし10ユーロでのブリュッセル・パリ間の移動は、かなりお得感がある。そういう意味では、選択肢として大いにアリだろう。
10ユーロ以外の席も、今までのタリスより低く設定されている。
LCCとはいえ、座席の広さは2等でも十分にある。1等は2列と1列で並ぶ3列のシート配置であるため、さらに快適に過ごせる。
安い代わりに様々な制限も
LCCであるイージーは乗車に各種制限が設けられている。
一度購入した切符の払い戻し、変更ができない。手荷物の数と大きさが決められている。サイズは35cm×55cm×25cmと27cm×36cm×15cmの2つまで。これを超えた際は超過料金を払う。通常のタリスはパリ・ブリュッセル間を1時間半で繋いでいるが、イージーは在来線を通るため平均2時間15分かかる。
そのため、スケジュールが変わりやすいビジネス利用には向かない。一方で、あらかじめ予定が決まっていて、大きな荷物を持たず小旅行としてパリもしくはブリュッセルを訪れるには、存分に価値を発揮するサービスだ。12歳未満の子ども運賃は通常の座席で10ユーロなので、家族での移動にも良いだろう。
ブリュッセル・パリ間は、高速バスや自家用車を使っても、およそ3時間の距離である。近年では自動車相乗りサービス「ブラブラカー」の利用も広がっており、低価格で移動できる交通手段は多い。
(加藤亨延)