1日の時間をお菓子で表現した「お菓子のフルタイム」


“夜のお菓子”のキャッチコピーでおなじみ、浜名湖名産「うなぎパイ」。これに朝や昼バージョンのシリーズがあるのをご存じだろうか。

朝のお菓子「すっぽんの郷」、昼のお菓子「しらすパイ」、さらに真夜中のお菓子「うなぎパイV.S.O.P.」まである。
4つの味が楽しめる詰め合わせは、その名も「お菓子のフルタイム」(税込み2160円、3240円、5400円の3サイズ)だ。
朝も昼も! “夜のお菓子”だけじゃなかった「うなぎパイ」シリーズ
お菓子のフルタイム。直営店などで販売


この詰め合わせは、地元・浜松でも知らない人は結構いるらしい。

朝も昼も! “夜のお菓子”だけじゃなかった「うなぎパイ」シリーズ
「お菓子のフルタイム」(2160円税込、他2サイズあり)


なぜ、朝・昼・夜・真夜中のお菓子なのか?


「お菓子のフルタイム」の4商品の共通点は、「地元の水産物を使うこと」と「パイのお菓子であること」の2つ。

朝のお菓子「すっぽんの郷」の発売は1983年。現在は単品販売はしておらず、詰め合わせにしか入っていないので、かなりレア。薄くてクッキーのようで、食欲のない朝でもサクッと食べられる。とくにクセもなく甘くておいしい。


朝も昼も! “夜のお菓子”だけじゃなかった「うなぎパイ」シリーズ
「すっぽんの郷」。浜名湖はうなぎだけじゃなく、すっぽんの養殖も盛ん


昼のお菓子は、「しらすパイ」。以前は昼のお菓子は「えび汐パイ」(1985年発売)だったが、2009年に「しらすパイ」にリニューアル。甘口と辛口の2種があり、グラニュー糖をふりかけた甘口は、甘さの中にほんのり塩気も感じられる。わさびをきかせた辛口はピリッと刺激があり、ビールのおつまみに最高だ。
朝も昼も! “夜のお菓子”だけじゃなかった「うなぎパイ」シリーズ
しらすパイ。赤(上)が甘口、青(下)が辛口


「うなぎパイ」が“夜のお菓子”である理由は、ホームページに書いてある。1961年の発売当時は、高度経済成長の真っ只中。
大切な家族団らんタイムである夕食のひとときに「うなぎパイ」を囲んでほしい、という思いから付けたそうだ。

朝も昼も! “夜のお菓子”だけじゃなかった「うなぎパイ」シリーズ
55年前から販売されている「うなぎパイ」


それでは朝や昼の由来は何か? 商品を販売する春華堂の広報担当者である手嶋さんに聞いた。

「お客様から『夜のお菓子はあるのにどうして朝と昼はないの?』というお声をいただいたのがきっかけです。当社は常にオンリーワンのものづくりを! という思いが根底にあり、それが開発の動機にもなっています」

たしかに今でこそ「うなぎパイ」という言葉に誰も違和感を覚えないが、うなぎを使ったパイなんて、当時はかなりの衝撃だったはず。お客さんの声に反応して、本当に朝や昼のお菓子を作ってしまうノリの良さに、伝統を守りつつ攻めていく同社の姿勢を感じる。

ちなみに「うなぎパイV.S.O.P.」は、「うなぎパイ」を超える最高級うなぎパイ、つまり夜を超える“真夜中のお菓子”を作りたいという思いから開発され、1993年に発売。
“真夜中”のイメージに合わせてブランデーを使用しているが、アルコールは飛んでいるため、子どもももちろん食べられる。

「うなぎパイV.S.O.P.」は、ブランデーの芳醇な香りとマカダミアナッツとゴマの香ばしさ、そして水のかわりに生クリームと牛乳を使用するなど、なんとも贅沢な仕上がりに。通常の「うなぎパイ」よりかなり大きいので食べ応えもある。
朝も昼も! “夜のお菓子”だけじゃなかった「うなぎパイ」シリーズ
上が通常の「うなぎパイ」。下が「うなぎパイV.S.O.P.」



知られざる「うなぎパイ」あれこれ


「うなぎパイ」の生産量は、1日約20万本、年間約8000万本にも上る(※「うなぎパイナッツ入り」「うなぎパイV.S.O.P.」「うなぎパイミニ」を含めた4種類のトータル本数)。これを約50名のうなぎパイ職人が手作りしているそうだ。

「実は生地をこねたり、折り重ねたり、仕込み・仕上げの工程のほぼすべてをうなぎパイ職人が手作業でおこなっています。
力仕事なので職人は男性のみです」
なかには異物混入を避けるため、自発的に頭や腕など全身の毛をすべて剃っている職人もいるというから、意識の高さに驚かされる。

「お菓子のフルタイム」以外でちょっと珍しいのが、1980年に発売された「うなぎパイナッツ入り」。東名高速の開通記念に生まれた商品で、長らく高速道路のSA限定だったが、これもお客様の要望で2015年から他の場所での販売も解禁になったそうだ。最近は、「うなぎパイ」派と「うなぎパイナッツ入り」派にわかれているとか?

思いのほか充実していた「うなぎパイ」シリーズ。朝、昼、真夜中にもお菓子を楽しみたい方は、ぜひチェックしてみては?
(古屋江美子)