超個人的なことを祝う花火大会がある
数、規模を競う東京の花火大会とは、また違った趣の花火大会はいかがですか。
ローカルな花火大会の中でも、とりわけほのぼの度の高いものが、長野市にあった。

平成12年まで開催されていた「ニコニコお祝い花火」だ。
名前からしてほのぼのだが、その内容は……。
「鈴木くん、ご結婚おめでとう」パーン。
「山田さん、初孫誕生おめでとう」パーン。
「小池さん、88歳おめでとう」パーン。
「土屋さん、お引越しおめでとう。今度、新居に遊びに行かせてね」パーン。

そう、個人がスポンサーとなり、あまりに“超個人的”なお祝いメッセージが読まれる花火大会である。

初めて見たときには、一瞬、ぽかーん。
「鈴木って誰だよ!?」とか「初孫はめでたいけど、花火あげちゃうほど?」と思ったりもした。
ときには、「エジプトに行ったお兄ちゃん、元気ですか? みんな心配しています。連絡ください」などと、周りがハラハラするような内容もあった泣かせる花火大会だったが、平成12年を最後に終了したという。なんとも残念なことだ。


主催者の長野商工会議所に理由を聞いてみると、
「周辺に住宅地が多く、場所的に続けるのが難しくなったんですよ」という。

そもそも、この「ニコニコお祝い花火」が始まったのは、平成5年から。
「秋の『えびす講 煙火大会』という、商売繁盛を願う企業の花火大会が、今年で101回目を迎えます。でも、夏には花火大会がなかったこと、市民から『企業だけじゃなく、個人でもお祝いの花火をやりたい』という声が出てきたため、始めたものだったんですよ」
当時は、3号玉3発12000円から申し込めるため、圧倒的に個人の申し込みが多かったそうで、終了したことを嘆く声、復活して欲しいという希望や問い合わせも結構多いのだとか。

復活の可能性などは今のところないと聞き、すっかりしょげる私に、担当者は「でも……」と、こんな耳寄りな情報を教えてくれた。
「これとほぼ同じ形式で、『川中島古戦場祭り』というものもあるんですよ」
第13回を数える花火大会で、今年は9月2日(土)19時から開催されるという。
いちばん安いものは、5号玉1発13000円からで、「誕生、就職、結婚、還暦、米寿、個人の創業、新築、落成など、いろいろなお祝いメッセージがあります」とのこと。
こちらは、主催者が長野市商工会更北支所で、花火のスポンサーの申し込みは7月20日まで受け付けているそうだ(TEL026-284-3552)。

名前と主催者は違うが、今も生き続けている超個人的なお祝い花火大会。
特に何もなくとも「オレ、おめでとう!」とか、自分自身のことを祝っちゃうのもたぶんアリです。
(田幸和歌子)