
だが、これは、屋久島の一湊漁港で作った「さばの煮汁を数日かけて煮つめ飴状にしたもの」、サバの濃厚エキスというわけだ。
いったいどんな風に使うのか。いつ、どういう理由でこうした商品を作ったのか。製造元の馬場水産に聞いてみた。
「いつから? う〜ん……かなり前からあるもので、以前は各家庭で作ってたんですよ」
と、工場長は言う。
屋久島の一湊は、もともと漁師町で、「サバぶし」の製造をする際に自然に出る「煮汁」を保存食として、家庭で煮つめて作っていたのが始まりなのだとか。
「それを工場でひとまとまりとして作るようになっただけ。サバぶし製造は明治30年代ぐらいから始まってるから、それとたぶん同じぐらい歴史が古いんじゃないですかね」
とのことである。
おじいちゃんおばあちゃんの前の世代ぐらいまでは、家で当たり前に作っていた「家庭の味」は、今では若い人たちにはあまり知られていない存在となっているそうだが、その一方で、「プロのかくし味」として別の活路を見出してもいるとか。
どんな使い方がオススメですか?
「ラーメンに入れたり、煮物、味噌汁、吸い物に、ほんのちょっと入れると、良いだしが出るんですよ」
舐めてみると、ほんのり苦味と、脂のコクがあって、確かに少量で料理の味がぐんと深みを増してきそう。
昔からの定番は、「あったかいごはんにかけること」だそうで、他にも、冷奴に少量のせるとか、炒め物にオイスターソースのような感覚で、少量まわしかけても美味しいかもしれない。
「煮つめて煮つめて作ってあるから、鉄分は非常に豊富で、婦人の栄養補助食品としても使われているんですよ」
この天然だしは、賞味期限も1年と長く、少量で料理を引き立ててくれるだけに、1つあるとかなり役立ちそう。
ただし、今のところ、屋久島島内の土産屋やラーメン屋が主な出荷先だそうで、なかなか手に入れることは困難だそうだ。
見つけたら、ぜひお試しあれ。
(田幸和歌子)