
抜け毛は放っておくとあちこちに毛の固まりが散乱するためブラッシングは必須。犬の腹側から背中にかけて、ずずいと身体にブラシを添わせると、これがまあ、びっくりするくらいゴッソリ抜ける。本人(犬)も、ホワホワ抜けた毛が身体に着いたままなのがキモチワルイらしく、ブラッシング中はウットリ。二次効果としてスキンシップがはかれるのも良い。
犬のブラッシングにやりがいすら感じ始めていたある日。フト、抜けたホワホワの毛を丸めながら「マフラーくらいは編めるんじゃなかろうか」と思った。そういえば10年ほど前、我が家では飼い猫が脱走する事件が発生。母は、飼い猫が残した家に散らばるわずかな毛を、かつてジャムの入っていた瓶に涙ながらに集めていた。「これだけしかない……」とうっすらと猫の毛が漂う元ジャム瓶を差し出され、当時の私は正直ギョッとしたものだったが……。
ひとまず「犬の毛 セーター」でググってみる。
「犬の毛セーターは、オーストラリアなんかではポピュラーなんですよ。僕は10年くらい前に自分の犬の毛をどこかで紡いでほしいと思ったんですが、僕自身が繊維メーカーにいたということもあり、よくよく調べてみると、自分でもやれるなと思ったんですよね」
作り方はかんたん。集めた犬の毛を洗濯ネットに入れて、シャンプーや柔軟剤を使って軽くほぐしながら洗う。次に、スリッカーブラシ(犬の毛のもつれをほどくブラシ)を2本使って、毛をすり合わせる。そして分量がたまったら、手芸屋さんに売っているスピンドルという糸撚りの道具(2000〜3000円くらい)を使って、コマのように回しながら糸を撚る。この糸がある程度たまったら、5分から10分間蒸し器へ。こうすることで、糸がほつれにくくなる。翌日には、もう編むことが可能だ。
「スピンドルで作った毛糸は多少ボコボコしていますが、暖かみがある。犬の毛はクリンプという曲がっている毛が多いので、暖かいんです。でも細い毛糸で編みたい人は、『マーガレット』という糸撚りの機械を通販などで購入するのも手かもしれません」
「愛犬の思い出を残したいと考える人も多く、HPに作り方を載せたら結構反響があって、やり方を教えて欲しいという方には無償で指導もしています。
根気のない自分は枕くらいなら……と思って帰宅すると、ものすごくタイムリーに、ビニール袋にこんもりと集められた犬の毛を発見!!! 袋を手に呆然としていると「クッションくらいなら作れるかなと思って」と母。猫のときの経験が生きているのか……? まだまだ元気、3歳の我が家の犬。当然「生きているうちが花」ですが、ペットがいなくなったときのために、いまから毛を集めておくなんて、なんか人間ぽくていいかもしれない、と猫脱走事件から10年後の私は思うのでした。
(駒井麻衣子)
*犬の毛セーターの作り方はココから
・『ぱれっと』HP