ストライプのネクタイ、なぜ右上がりばかりなのか
右上がり(ノの字)がトラッドスタイル、左上がり(逆ノの字)がアメリカンスタイル
サラリーマンの象徴、ネクタイ。
クールビズの普及で筆者も夏の間は締めなくなったが、ちょっと間が抜けた感じに見えてしまう。
裏を返せばネクタイを締めているだけで、どんな人でも「それらしく」見えてしまう。不思議なものだ。

さて、ネクタイの柄でメジャーなものと言えばストライプ。町を見渡せば3〜4人に一人はストライプの柄。筆者宅にもたくさんあるのだが、なぜか全てが「右上がり」、カタカナの「ノ」の字なのである。サラリーマンの街、東京新橋で100人を調査したところ、92名が右上がり、左上がりはたったの8名。
いったいどうしてなのだろう。

まずは、近所の紳士服量販店で聞いてみた。店内には右上がりのネクタイがずらりと並んでいる。
「別に理由はないです。布をカットする時、一般的に右上がりになるようにするんです。左上がりのストライプですか? うちには置いてないです」
ネクタイは1枚の大きな布を斜めにカットして作られる。
布にはまっすぐなストライプがプリントされていて、どちら向きにカットするかで右上がり、左上がりが決まるらしい。

続いて、上野のメンズショップで尋ねてみた。
「元々は、ヨーロッパで軍服のベルトの方向に合わせたため右上がりになったのです。だからトラッドスタイルは右上がり。これがアメリカに渡って、新しい物好きのアメリカ人が左上がりにしたんですね。左上がりをアメリカンスタイルと言います」
アメリカの友人に聞くと、ワシントンのデパートでは右上がり、左上がりが半々だと言う。
日本に比べ左上がりの率が断然高い。

では、どうして日本では右上がりが多いのか。ネクタイのオーダーメイドなどを手がける「ネクタイショップ.com」の鈴木さんに聞いた。
「日本のメンズファッションは、基本的にイギリスの影響を強く受けています。だからヨーロッパ式なのだと思います」
もう一軒、ウェブサイトのブログが楽しい京都のネクタイショップ「vionte」の本城さんにも聞いてみた。
「明治維新以来、日本が手本にしたのはイギリスの議会であり、服装も紳士の国イギリスのファッションを見習ったと思われます」

どうやら、明治維新以降のイギリスの影響を受け継いでいることが理由らしい。
しかし、戦後日本が最も影響を受けた国といえばアメリカ。どうしてアメリカの影響を受けなかったのか。前出の鈴木さんがこんな話をしてくれた。
「メンズは基本的に変わらないのが基本ですから。女性から見ていつも変わらないでいてほしい、という願望がそうさせていると聞いたことがあります」
日本のネクタイのストライプが右上がりばかりなのは、女性の時を超えた熱い想いがあったから。
今回はひとつの説として、こんな結論にしておきましょう。

(R&S)

「ネクタイショップ.com」HP
「オーダーメイドネクタイ vionte」HP