横浜市大と神奈川県立がんセンター、新型コロナ感染症の重症度と生命予後を予測する新規血清バイオマーカーを発見
横浜市立大学大学院 医学研究科 呼吸器病学教室の原悠講師ならびに神奈川県立がんセンター 築地淳感染制御室室長らの研究グループは、COVID-19における血清ヘムオキシゲナーゼ-1(Heme oxygenase-1:HO-1)濃度が、重症度と生命予後予測の指標となることを発表した。

同研究では、HO-1がCOVID-19の生命予後の予測性能において、有用性が期待されている可溶性CD163(sCD163)よりも上まわることを発見したという。


また、血清HO-1のCOVID-19診療現場における実用化について、大いに期待されることを証明したとのことだ。

なお、同研究成果は、英文誌「PLOS ONE」に掲載されている。

■研究成果のポイント

●COVID-19診断時の血清HO-1濃度の測定により、正確な重症度評価が可能である。
●COVID-19診断時の血清HO-1濃度の測定により、ICU入室や人工呼吸器装着などの重症化予測が可能である。
●血清HO-1濃度は簡易的に反復測定が可能で、COVID-19患者の重症度と生命予後予測を短時間のうちに適切に評価できるため、診療の現場での実用化が大いに期待される。

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研究結果図

■研究背景

Macrophage Activation Syndrome(MAS:マクロファージ活性化症候群)の特徴を持つCOVID-19において、サイトカインストームは、M1マクロファージを含む炎症細胞によって引き起こされ、肺に損傷を与えるという。

ヘムオキシゲナーゼ-1(HO-1)は、M2マクロファージによって産生されるストレス誘導タンパク質で、可溶性CD163(sCD163)も産生。

研究グループでは、血清HO-1がCOVID-19患者の重症度と生命予後予測の両方を評価するバイオマーカーになり得ると考え、M2マクロファージマーカーとされる血清HO-1とsCD163の有用性を検証した。


■研究内容

同研究では、COVID-19で入院治療を必要とした症例における、入院時血清HO-1とsCD163の、臨床パラメーターおよび治療経過との関連性を解析。解析対象としたのは、64例(軽症11例、中等症38例、重症15例)とのことだ。

血清HO-1は重症度に応じて有意に高値を示し(11.0ng/mL vs. 24.3ng/mL vs. 59.6ng/mL)、血清LDH(R=0.422)、CRP(R=0.463)、高分解能CT(HRCT)におけるground glass opacity(GGO;すりガラス陰影)+consolidation(浸潤影)score(R=0.625)と相関。

また、血清HO-1の重症度(0.857(HO-1)vs. 0.733(sCD163))、ICU入室(0.816 vs. 0.743)、人工呼吸器装着(0.827 vs. 0.696)における予測性能(AUC)はsCD163のそれらを上回る結果となった。

なお、血清HO-1とHRCTにおけるGGO+consolidation scoreを組み合わたICU入室(0.915)および人工呼吸器装着予測性能(0.919)は非常に良好であったとのことだ。

<参考>
横浜市立大学大学院医学研究科『新型コロナウイルス感染症の重症度と予後を予測する新規血清バイオマーカーを発見