ニッポン放送報道部畑中デスクのニュースコラム「報道部畑中デスクの独り言」(第467回)

■すっかり変わった電車内の“景色”

新年度が始まって約1カ月。新入社員の皆さんは初任給を手にしたころではないでしょうか。電車内では真新しいスーツの社員、新しい制服の学生が目立つのもこの時期です。

スティーブ・ジョブズは社会の「副作用」を予測していたのか?の画像はこちら >>

スマホは人々の生活を劇的に変えたが……

ところで、電車内の景色はここ十数年で随分と変わりました。昔はビジネスパーソン(「ビジネスマン」とは言わない)が新聞を片手に座っている風景がその象徴とされました。周囲に迷惑をかけないように絶妙なサイズに折りたたんで読む姿は「職人芸」と言われたこともありました。

いまは言うまでもなく、スマートフォン=スマホの時代。電車内でもほとんどの人が「片手にスマホ」の状況です。LINEやメールでの重要な連絡、動画サイトで映画やドラマを見ている人もいれば、ゲームに興じている人もいます。かく言う私も、朝の通勤ではスマホで新聞のアプリを読み、情報収集します。

ただ、ラッシュアワーではドアに押し付けられて顔が変形するほどのすさまじい混雑になります。スマホを見るスペースなどなく、さすがに私もスマホをしまうのですが…周囲を見ていると、そんな中でもスマホを見続ける人がいます。そういう人に限って、車内がどんなにぎゅうぎゅう詰めでも、スマホを見るスペースだけは“死守”しています。「意地でもスマホを見てやる」という“執念”さえ感じます。

■私は“スマホ台”ではない! ……知人の怒りと悲しみ

普段はめったに怒ることのない知人が、私にたたみかけてきました。

「肩にスマホを置いてくる。

私は壁ではない!」
「スマホの先端を他人にぶつけて不快にさせているのに気づけない」
「“自分ファースト”強くないか?」

混雑の時にスマホを見ようとすると、姿勢が不安定になるのでしょう。安定させようと、こともあろうにスマホを人の肩にのせてくるというのです。ひどい時には肩から不快な振動さえ来るといいます。この期に及んでも操作をやめないわけです。知人が迷惑であることを暗に示すため肩を揺すると、一旦は収まるのですが、しばらくするとまたぞろ肩に重みがのしかかってきます。知人の身長は168センチ、“スマホ台”にしやすい高さなのかもしれません。ひどい時には肩に3台のスマホが“集中”したこともあるそうです。何を見ているのかチラとのぞけば、これがゲームだったりします(無論、スマホやゲーム自体に罪はないのですが)。

海外から見た日本人は礼儀正しく、公共の場でマナーが良いといわれていますが、電車内の振る舞いを見る限り、それは当たらない、むしろ、他者を思いやれず、自己中心的な振る舞いが目立ち、怒りを通り越して悲しくなる……、知人が嘆いていました。

日本人はもともとそうだったのか、それとも何かが変えてしまったのか……、日本民営鉄道協会が実施した「2025年度駅と電車内の迷惑行為ランキング(複数回答)」では、1位は「周囲に配慮せず咳やくしゃみをする」で34.7%でした。コロナ禍以降、いまも咳やくしゃみに敏感に反応する人は多いですが、割合は前年度の50.5%から減少し、やや落ち着いてきた感があります。以下2位は「座席の座り方」、3位は「騒々しい会話・はしゃぎまわり」でこれまた「定番」ですが、割合はともに前年度と比べても30%前後と横ばいでした。

一方で急激に伸びてきているのは「スマートフォン等の使い方(歩きスマホ・混雑時の操作等)」で前年度の9位から5位にアップ。割合も14.9%から21.6%に増加し、上位をうかがう勢いです。

さらに、「スマートフォン等の使い方で最も迷惑に感じる行為」で精査すると、「歩きながらの使用」がトップで39.1%でしたが前年度より7ポイント減。「歩きスマホ」の注意喚起が浸透したとみられます。一方で、2位が「混雑した車内での使用」で28.4%。前年度より5.7ポイントの増加でした。この数字を皆さんはどう評価するでしょうか?

■ジョブズは草葉の陰で何を見ている?

ダイナマイトは土木工事の際、地盤を安全に爆破するために用いられます。発明したアルフレッド・ノーベルはダイナマイトがこうした土木工事だけでなく、戦争の抑止力として働くことを期待していたといいます。ただ、実際には戦争の激化を招き、それがノーベル賞の設立につながったといいます。

スマホ=パソコン並みの機能を持たせた携帯電話、そのルーツは1992年にIBMが開発した「Simon」とされていますが、普及が爆発的に広がったきっかけはスティーブ・ジョブズが発明した「iPhone」であることは論を俟たないでしょう。スマホは人々の生活を大きく変えた一方で、社会に様々な「副作用」ももたらしました。そういう意味では「現代のダイナマイト」と評することもできると思います。

ジョブズはこうした副作用を予想していたのでしょうか。56歳の若さで鬼籍に入ったジョブズですが、存命であればぜひきいてみたいものです。

(了)

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