ニッポン放送報道部畑中デスクのニュースコラム「報道部畑中デスクの独り言」(第470回)
5月に明らかになった自動車各社の年度決算では、アメリカの高関税政策で各社軒並み業績を落としました。下期はピークを脱したものの、“残り香”は続いています。
スズキの決算会見(オンライン画面から)
■巨額赤字、苦境のホンダ、日産
ホンダは電動化戦略の見直しで赤字に転落、2026年3月期連結決算は3月の緊急会見で最大6900億円の最終赤字に陥る見通しでしたが、結局4239億円の赤字に落ち着きました。しかし、赤字は1957年以来初めてのこと。緊急会見で明らかになった通り、EV(電気自動車)の戦略見直しにより減損処理など、巨額の損失を計上した結果でした。決算会見後には「ビジネス・アップデート」と称した事業戦略説明会も開催。三部敏宏社長はEVそのものは撤退を否定した上で、2040年までに新車をすべてEVとFCV(燃料電池自動車)にする目標については「現実的ではない。いったん取り下げたい」と述べ、撤回する意向を示しました。一方で、四輪事業の再構築を表明、次世代HV(ハイブリッド車)の投入のほか、売れ筋の軽自動車を引き続き強化しながら、それ以外の「登録車」を増やしていく方針です。
左:ホンダ・三部敏宏社長
右:日産・イヴァン・エスピノーサ社長
経営が厳しいのは昨年、ホンダとの統合が“破談”になった日産自動車もしかり。2026年3月期の連結決算はホンダを超える5330億円の最終赤字で、昨年の6709億円に続いて2年連続の巨額赤字となりました。こちらも経営再建による構造改革費用が響きましたが、本業のもうけを示す営業利益は16.9%減少だったものの、580億円の黒字を確保。コスト削減はこれまでに2000億円を達成したとして、来期の2027年3月期は200億円の黒字転換を目指します。
「着実に対策を進めてきた。
イヴァン・エスピノーサ社長は決算会見で復活に向けて自信を見せました。ただ、国内で今年投入される高級ミニバン「エルグランド」とSUVの「キックス」、「もう、失敗はできない」……、関係者は悲壮な覚悟を示します。新型車の成功が何はともあれ、復活の最低条件になります。
ホンダ決算会見でお披露目された新型ハイブリッド車
■軒並み、電動化戦略見直しの各社
輸出の比率が高いSUBARU=スバルとマツダも軒並み減益。2026年3月期連結決算はスバルが前期比73.1%減の908億円、マツダは75.6%減の350億円の最終利益となりました。
「様々な外部環境の影響を受けた1年だった」
スバルの大崎篤社長は決算会見で開口一番、このように語りました。EVについては「主戦場としている米国は、環境政策の緩和もあり、浸透のスピードが緩やかになっている」として、自社開発による車両の延期も明らかにしました。一方で、「この1年、いかに環境変化に柔軟に適用していくか、だいぶ鍛えられた。先手先手で動くようなことをこれからも進めて大波を乗り切りたい」と決意を示します。来期の最終利益は1300億円の予想と巻き返しを図ります。
マツダも大幅減益となったものの、黒字は確保。
マツダの新型車「CX-5」巻き返しを図る
三菱自動車は2026年3月期連結決算は前期比75.6%減少ながら、100億円の最終利益を確保。主力の東南アジアでは中国勢の攻勢を受けながら、下期以降は販売を回復したということです。
「事業環境は引き続き厳しい状況が想定されるが、新型車投入を着実に進める。コスト削減、収益向上の改善に取り組み、増収増益を目指す」
就任後初の決算会見に臨んだ岸浦恵介社長は意気込みを語り、来期は250億円の最終利益を見込みます。5月29日には2030年代に向けた中長期ビジョンも発表。
4社は関税政策などの逆風を受けながらも経営努力で黒字確保にこぎつけています。
左上:SUBARU・大崎篤社長 / 右上:マツダ・毛籠勝弘社長
左下:三菱自動車・岸浦恵介社長 / 右下:スズキ・鈴木俊宏社長(いずれもオンライン画面から)
■唯一増益、スズキ躍進の背景
各社軒並み減益となる中、唯一増益となったのがスズキです。2026年度3月期連結決算は前期比5.6%増加の4392億円で過去最高。インド市場が好調の一方で、米国市場は徹底しているため、関税政策による“出血”が少なかったことも好決算の要因となりました。何よりも、四輪車(軽自動車含む)の国内販売は2位が定着。世界販売も2027年3月期の計画を355万台とし、ホンダを抜いて2位になる見通しが明らかにされました。
「2位になるためにやっているのではない。お客様にいかに受け入れられる車をつくるかが我々の使命」
鈴木俊宏社長は決算会見で手綱を締めますが、中東情勢における原油高の懸念は小型車、軽自動車主体のスズキにとっては追い風になるとみられます。「グローバルに質素倹約の流れができてくるんではないか」と鈴木社長は述べ、今後の需要拡大に期待を示しました。
各社が電動化戦略の見直しを進める一方、いわゆる「高収益モデル」に軸足を移す発言が目立っています。以前小欄でもお伝えしましたが、かつてクルマの原価は車両重量に比例すると言われていました。すなわち、1トンであれば100万円、2トンであれば200万円……、もちろん、現代の原価計算はそんな単純なものではないものの、一般には上級車種になればなるほど、収益が高くなります。しかし、高価なクルマにどれほどの需要があるのか……、そこは必ずしもメーカーの思惑通りにはいきません。特に日本国内では道路事情もあり、軽自動車、かつての5ナンバー前後の寸法に収まるミニバン、コンパクトカーが販売の主流です。SUVが人気とは言え、こちらもメインはコンパクトサイズ。狭い国土での使いやすさを考えれば、当然のことです。そして、原油高の影響で世界的にもより燃費の良いクルマに需要が進むとすれば、スズキの販売が好調なのは至極まっとうであり、地に足の着いた姿勢であると言えるでしょう(その2に続く)。

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