老後不安から資産形成に励む人は多い。だが、ただ貯め込むだけでは、人生は豊かにならないのかもしれない。
53歳でハロー!プロジェクトにハマり、ライブ通いで日々に張り合いを取り戻した男性。50歳で大学に入り直し、「幸福」を学び始めた男性――。50代からあえてお金を使って“好き”に踏み出した人たちは、老後への不安よりも、生きる実感を手にしていた。幸せに歳を重ねるための「散財」の効能を探った。

53歳からファンクラブに入会

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人生100年時代、長い老後生活に備えて、資産形成に取り組むのはもはや常識となった。だが、お金を貯め込むことが必ずしも幸せな老後生活に繫がるとは限らない。証券会社で働く田中博之さん(仮名・65歳)が話す。

「毎日、朝8時に出社して、17時までは働き続ける日々を送ってきました。でも、“彼女たち”に出会って、生活に彩りが添えられた。ガチ勢からすると私はにわかもいいところですが、感動を共有できる仲間も増えて、前向きになった」

田中さんの言う「彼女たち」とは、「ハロー!プロジェクト」のことだ。53歳からファンクラブに入会し、ライブに足を運ぶようになったという。

「もともと天地真理や松田聖子が好きだったので、YouTubeでアイドル歌手の動画をよく見ていたんです。その流れでモーニング娘。
の『ブレインストーミング』が再生されたときに、『作詞・作曲担当のつんく♂さんは投資家なのでは?』と感じたんです。冒頭の歌詞〈トリプル良い事があった〉は安倍政権の“3本の矢”にかけているように感じて(笑)。ほかにも『LOVEマシーン』では〈恋はインフレーション〉という表現もある。

それでつんく♂さんに興味を持ってモー娘を聞きまくるようになったところで、道重さゆみに出会った。歌が苦手で踊りもほかのメンバーに見劣りする彼女は、ヒールキャラを演じることで一時低迷したハロプロの人気をV字回復させた。そんなアイドルいます!? “愛社精神”で嫌われ者を買って出るなんて……。サラリーマンとして生きてきた自分に、道重は見事に刺さったんです」

「積立投資よりリターンがいい」53歳でハロプロに救われた65歳男性が語る、老後不安を消す“幸せな散財”
50代からの[幸せ散財]革命


ハロプロ推しの活動費は年間10万円程度

加えて、ライブで受けた衝撃が田中さんを夢中にさせた。

「全力で歌って踊る彼女たちに圧倒されただけでなく、ファンとの一体感に感動しました。ハロプロ好きは、ほかのアイドルグループよりも“箱推し”が多いせいか、誰かの卒業ライブとなれば、全員がそのコのメンバーカラーのペンライトを振って応援するし、長くファンを続けている人が多いんです。私は80代男性ファンがライブ会場で感動して涙する姿も見ました。

私も、道重が卒業直前の’14年のライブで、自分よりも歌や踊りがうまいメンバーを引き連れて登場するシーンを見るだけで、涙が止まらなくなった。以来、基本的には私も箱推しですが、飯窪春菜や牧野真莉愛など、道重のことを特に慕っていたメンバーを追いかけながらハロプロファンを続けています」

チケット代にグッズ代、仲間との交流に費やすお金は年間10万円程度と話す田中さんは、「毎月、数万円の積立投資するより、はるかにリターンがいいかも(笑)」とも話す。

「気持ちが若くなって、生活にハリが出た。
何歳になっても楽しめることができたので、老後の不安もあまりない。おそらく死ぬまでハロプロ推しを続けるでしょう」

50歳で大学に通いだした人も

「積立投資よりリターンがいい」53歳でハロプロに救われた65歳男性が語る、老後不安を消す“幸せな散財”
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一方、50歳で突如、「人間の幸福」について学ぶために、大学に通いだした人もいる。

「どうすればお金を稼げるかということを30年近く考え続けたら、50歳直前にして精神的に病んでしまったんです」

こう話すのは、投資会社で働く岩田浩二さん(仮名・50歳)だ。今年からある大学の自然科学部に入学して、週末を勉強時間に費やすようになったという。

「お金がなくても人は幸せになれるはずという思いから、幸せと脳の関係について勉強しています。私個人としては、自然に触れることで幸福度が増すという研究成果をもとに、家の中に緑を増やしたり、散歩を習慣にするようになりました。学費で50万円以上かかりましたが、気持ちを切り替えられるようになったので、働く意欲も湧いてきた」

散財は老後生活に彩りを添える

このように50代からお金を使って好きなことに取り組むことは、幸せな老後に繫がる。高齢者専門の精神科医として35年以上活躍する和田秀樹氏は次のように話すのだ。

「定年退職後に新しいことを始めたいと考える人は多いが、仕事という外に出る強制力が働かなくなると、新しいことに挑戦する意欲もなくなるというケースが多いんです。つまり、お金を貯めてきたのに、使い道がないという人も出てくる。だからこそ、50代から推し活や学び直しなどに取り組むのは素晴らしい選択です。人は幸福度を他人との比較で測る傾向にあるのですが、新たな挑戦をして新しい価値観を身につけると、仕事や会社という比較対象のいる枠から抜け出せる。より幸福感を覚えやすくなるわけです。


さらに推し活をすると男性ホルモンが分泌されるので、若々しくなり活発になるという利点もある。新たな刺激で前頭葉が活性化されるので、感情のコントロールが利きやすくなり、認知症の予防にも繫がる。実際、私が見てきたなかでも、推し活で認知症が改善したり、閉経した女性に数年ぶりの生理が来たというケースもある」
 
50代からの新たな散財は老後生活に彩りを添えるのだ。

【精神科医 和田秀樹氏】
東大医学部卒。東大医学部附属病院などを経て、和田秀樹こころと体のクリニック開設。幸齢党党首。『80歳の壁』など著書多数
「積立投資よりリターンがいい」53歳でハロプロに救われた65歳男性が語る、老後不安を消す“幸せな散財”
精神科医の和田秀樹氏
※2026年6月2日・9日合併号より

取材・文/週刊SPA!編集部

―[50代からの[幸せ散財]革命]―
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