PTAを、わずか3名で運営している——。あるイベントで、こんな話をしてくれた人がいました。
練馬区立南町小学校PTA会長の吉田基洋(もとひろ)さんです。

運営に関わりたい人だけが入会して会員になるので、つまり会員も3名のみということ。運動会やお祭りの手伝いは、保護者や地域住民に呼び掛けて募っているといいます。

後日改めて話を聞かせてもらったところ、南町小PTAはいろいろな面で斬新でした。主な特徴をまとめると、こんな感じです(2026年3月時点)。

■任意加入を前提に運営
・運営に参加したい人がPTAに入会。会員になると議決権がもらえる
・入会しなくてもボランティア参加可能。子どもへの不利益ナシ

■LINEオープンチャットを活用
・保護者や教職員、OB・OG、地域住民など、約300名が登録している
・運動会とお祭り(PTAとは別団体が主催)のボランティア募集を行う
・地域の情報を共有する。例えば近くの児童館で行われる秋祭りなど

■保護者アンケートを毎年実施
・学校やPTAへの要望を書いてもらい、回答・コメントを全て公開する

■必要なものは「ほしい物リスト」で募る
「会費を集めずに運営」している点も特徴的です。

お金がないのにどうやって運営するのかというと、例えば新入生全員にプレゼントするノートや、運営が使うコピー用紙など、必要なものは「Amazonほしい物リスト」で募っているそう。「有難いことに、掲載するといつもすぐ誰かが買ってくれる」といいます。

学校への寄付を行わないことも、事前に校長先生と相談できていたとのこと。


イベント保険などそのほかの雑費は、会費を集めていたときの残金や、ブログ(note)の有料記事の売上金、お祭りの主催団体からの寄付などでまかなっているということです。

一般的なPTAとはだいぶ異なりますが、吉田さんは「PTAと名乗っていた方が対外的に理解されやすいので、そう名乗っている」と話します。

なお、『いまこそ、変わる! 変えられる! PTAアップデート』(学事出版、2025年)の著者で元PTA会長の下方丈司さんは同書の中で、こういった少数のコアメンバーが運営するPTAを「コア型PTA(仮)」と呼んでいます。

筆者も同様の形態のPTAをいくつか取材したことがありますが、今後「コア型」はもっと増えていきそうです。

■「架空小学校PTA」をわざわざつくったワケ
さて、この突き抜けたPTAは、どんなふうに実現したのでしょうか。その過程がまたユニークでした。

2022年春、第一子が入学してすぐ、入会届がないことなどについてPTAに問い合わせたという吉田さん。結果、自ら改革を担うことになったのですが、このとき吉田さんは「妄想市立架空小学校PTA」を仮定して「活動紹介」を作成し、ブログ(note)で公開しました。

ここには吉田さんが描く理想のPTAの運営方針や組織図、活動例などが具体的に示されており、読んでいると「こんなPTAができたら、みんな喜ぶんじゃないかな」とワクワクしてきます。

なぜわざわざ「架空小学校」をつくったのでしょうか。吉田さんはこう説明します。

「PTAの改革にあたって『どこに向かうのか』があいまいだと、途中で迷子になってしまうと思いました。
現状批判だけだと、共感は得られても賛同はなかなか得られません。

『こういう形を目指しませんか』という具体的なビジョンがあって初めて『それいいね』『じゃあ一緒にやってみよう』という話になると思うので、架空のPTAを仮定して、頭のなかにあったものを文字と構造に落とし込んでみたんです。(吉田さん)」

とても面白いやり方です。任意入会を前提とした仕組みづくりは今や欠かせないことですが、方向性が見えない改革は立ち往生することがあります。そういったとき、誰かが「こういう形でいこう」と分かりやすく提案してくれたら、話が進みやすくなるでしょう。

■「3つのなし」に込めた、無理なく続けるためのルール
「架空小学校PTA活動方針」の中で、筆者が特に重要だと感じたのは、「3つのなし」などの原則を掲げた「PTA基本方針」のページです。

「やりたい人がやる、やれる範囲でやる、続けられる設計にする。この3つを軸に方針をつくり、それをさらに『前例の踏襲なし』『PTAは学校に寄付を贈らない』といった運営ルールに落とし込みました。これらは皆、今の南町小PTAの運営にもつながっています。(吉田さん)」

吉田さんは「架空小PTA」をつくったあと3、4年かけて、南町小PTAを、架空小PTAで思い描いた姿に近づけていきました。

当初は吉田さんのイメージと、保護者や地域の人たちが抱くそれとの間にギャップを感じていましたが、丁寧に情報発信を続けていくうちに、溝は埋まっていったと言います。

「南町小PTAの運営は、今はすごくラクです。
僕ら運営がやることは整理されているし、情報発信の仕組みもできあがっている。もうほとんど手間を感じることがありません。(吉田さん)」

少人数でも無理なく続くPTAの好例、といえそうです。

吉田さんは最後に、こんなことを話してくれました。

「僕が一番課題だと感じているのは、「保護者みんなにもっと教育に興味を持ってほしい」ということです。PTAへの興味ではなく、教育そのものへの興味です。

今保護者はあらゆることに受け身になりがちだけど、本当はもっと保護者のなかで「子どもの教育ってこういうことが大事だよね」といった話が語られるようになってほしい。そこをやるための手段の1つが、僕のなかではPTAなんですね。(吉田さん)」

2025年度からは練馬区小学校PTA連合協議会でも会長として、組織の立て直しに奔走している吉田さん。P連での取り組みについては、また別の機会に紹介したいと思います。

大塚 玲子 プロフィール
ノンフィクションライター。主なテーマは「PTAなど保護者と学校の関係」と「いろんな形の家族」。
著書は『さよなら、理不尽PTA!』『ルポ 定形外家族』『PTAをけっこうラクにたのしくする本』『オトナ婚です、わたしたち』『PTAでもPTAでなくてもいいんだけど、保護者と学校がこれから何をしたらいいか考えた』ほか。ひとり親。定形外かぞく(家族のダイバーシティ)代表。
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