3月、沖縄へ修学旅行に行っていた高校生の女の子が、乗船したボートの転覆で命を落とすという痛ましい事故が起こりました。保護者の誰にとっても、他人事ではない出来事だったと思います。


事故で娘さんを失った遺族の方が、その後の学校とのやりとりをnoteで発信されていますが、その中にこんな言葉がありました。

「当時の私たちが疑問を持つには、私たちが学校を信頼しすぎ、そして提供されていた情報があまりに少なすぎました」(辺野古ボート転覆事故遺族メモより)

これは今回の事故に限った話ではないでしょう。学校に子どもを通わせる保護者のほとんどにとって、身に覚えのある感覚ではないでしょうか。

保護者も忙しい以上、可能な部分は学校に委ねたいと感じるのは当然ですが、委ね過ぎてしまうのもまた問題となる場合があります。

どこまでが保護者の関与すべきことで、どこからが任せていいことなのか? 線引きは単純ではありませんが、学校と保護者の間でもっと情報共有が必要なことは確かでしょう。特に修学旅行に関しては、これまで取材のなかで、保護者が知らない部分が多いと感じてきました。

ここからは「保護者が知らない修学旅行の裏事情」について見ていきましょう。

■修学旅行の費用は「不当に」高いのか
修学旅行については、よく「旅行代金が不当に高いのでは」という声を聞きます。「高い」のは否定できないにせよ、「不当に」という部分は、もしかすると誤解かもしれません。

団体旅行は安いというイメージがありますが、修学旅行は量産型のツアーと違い、学校ごとのオーダーでプランされる分、コストがかかる面があるうえ、大勢の子どもたちを一斉に、トラブルなく移動・宿泊させるためには多くの調整が必要です。

何より子どもの安全に関わることですから手も抜けませんし、誰かがぼろ儲けする、といったことは起きにくい気がします。

最も保護者に知られていないのは、旅行の準備や引率をする学校側の負担でしょう。
先生たちからは、こんな話を聞いたことがあります。

「具合の悪い生徒が出たら保護者に連絡しますが、すぐ来てもらえないときは、教員が付き添って送り届けることもあります。教員の労働時間の問題とか、事故があったときの責任問題とか、まともに考えたら(修学旅行は)難しいことばかりですよ」

「小学校だと『うちの子はおねしょするので夜中に起こしてください』と必ず頼まれます。私たちにも本当は決まった勤務時間があるけれど、旅行中は特に『この時間で終了です』というわけにいかないので、特別にお仕事をするわけです」

「バスの座席や部屋割りは大体もめますね。『誰々と一緒の部屋じゃなきゃ行きたくない』とか。特に女の子はお母さんからの相談も多い。お家でお子さんがよほど悩んでいるんでしょうね」

「行ってる間は気を張りっぱなしなので、帰ってきたらしばらく仕事以外のことは何もできない」

「担任が宿泊行事に行くのは年1回ですが、養護教諭なんて4・5・6年生の宿泊行事に全部付いて行くから年3回。大変ですよ」

どれも聞くまでは考えもしませんでしたが、「それは確かにあるだろうな、大変だな」と思うことばかりです。このほかにもきっと「先生だけが知っている修学旅行の苦労」は、山ほどあるに違いありません。

■保護者からは見えない先生たちの負担
修学旅行にかかるお金の管理にも、手間がかかっています。

10年ほど前、筆者の子どもの小学校では珍しいことに、修学旅行の積立金の管理をPTAの学級委員に任せていました。筆者は委員長だったので、徴収金の計算や旅行会社への代金振込みなどに関わりましたが、額が大きくてプレッシャーでしたし、欠席した子への返金などいろいろややこしかった記憶があります。


その後、保護者が積立金を管理することはなくなったようですが(学校徴収金ですから当然でしょう)、あのお金の作業まで先生たちが担っているとしたら、気の毒な気はします。

先生たちの負担は、金銭面でも発生しています。修学旅行の下見の費用や、体調を崩した子どもの送迎費用など、先生がポケットマネーで対応しているケースも少なくないようです(※)。

SNSなどで「修学旅行は不要」と訴える先生を見かけることがありますが、こういった背景を知ると、無理もない気がします。

なくすべきだとは思いませんが、旅行の日数などを縮小して、保護者の費用負担と先生の労力負担を減らした方がいいように感じます。

■保護者はどこまで関わればよいのか?
修学旅行の業者やプランの選定方法は、自治体や学校種(小・中・高校)によって異なるようです。

例えば筆者の子どもが通っていた中学校では、複数の業者が学校に集められてそれぞれのプランをプレゼンし、そのなかから先生たちが選ぶ、というやり方でした。

当時、筆者はPTAで学年長をしていたのですが、先生から「修学旅行の業者のプレゼンに学年委員は同席可能」と聞いてちょっとワクワクしました。いつものように「来たい人だけ来てください」とみんなに声をかけたら、なんと参加者が過去最多に。みんな関心があったようです。

最後は先生たちが業者を決めるので、保護者はいなくても影響なかったでしょうし、むしろ保護者が来れば質問や要望への対応も生じるので、先生たちにとっては面倒なことだったと思います。

でも、万一冒頭のような事故が起きたときに「何も知らされていなかった」と保護者が悔いることはなかったでしょう。
いい機会をもらったなと思います。

プレゼンの公開までしなくても、事前説明会を開くくらいでもいいかもしれません。修学旅行など子どもの安全に関わる活動を行う際、学校は保護者に十分な情報を提供し、保護者もそれに関心をもっておく。そういったことの重みを、今回の事故の遺族の方の言葉から、強く感じました。※参考:『教師の自腹』(福嶋尚子・柳澤靖明・古殿真大著 東洋館出版)

この記事の執筆者:大塚 玲子 プロフィール
ノンフィクションライター。主なテーマは「PTAなど保護者と学校の関係」と「いろんな形の家族」。著書は『さよなら、理不尽PTA!』『ルポ 定形外家族』『PTAをけっこうラクにたのしくする本』『オトナ婚です、わたしたち』『PTAでもPTAでなくてもいいんだけど、保護者と学校がこれから何をしたらいいか考えた』ほか。ひとり親。定形外かぞく(家族のダイバーシティ)代表。
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