業務の過酷さがたびたびネットやテレビで話題となり、年々教師という仕事を希望する若者は減少傾向にあります。高知県で令和6年度実施の教員採用試験で合格した人の約6割が辞退したというニュースは、記憶に新しいところです。


そうした社会の流れの中、それでも学校の先生を志す若者もまだまだいることは確かです。しかし、彼らの中にも学級経営やさまざまな校務、さらには保護者対応などで疲弊し切ってしまい「先生を辞めたい」と感じる人は少なくないでしょう。

本記事では、学校の先生が簡単には休めない・辞められない理由、そしてこれからの教育現場に求められる、刷新的な制度の在り方を解説します。

■学校の先生にとって「退職」という選択肢が選びにくい理由
現実問題として、多くの教師は任意の時期に退職ができない実情があります。教師の多くを占めるクラス担任はその業務内容から年度途中での退職が難しく、どんなにしんどくても「3月末までは頑張ろう」と無理をしてしまいがちです。

クラスが荒れてしまったり難しい保護者対応が続いても、途中でクラス担任を降りることは容易ではないため、先生たちはどんどん追い込まれていきます。その結果、心身ともに限界が来て「病休」という形で退職ではなく休職をするという例は少なくありません。

どんなに教職という仕事に希望を持って飛び込んだ人でも、30対1、もしくは40対1で子どもたちと向き合い、そこでトラブルが発生してしまうと自信をなくしてしまい、休職・退職に追い込まれてしまう可能性は十分にあるのです。

■学校教育界でも徐々に増える「退職代行」利用者……使われてしまう学校の特徴とは?
そんな中で昨今話題になっている「退職代行」の利用も、学校現場と無縁ではなくなってきているようです。

「教師 退職代行」と調べると、実際に使った人の声や教師向けの代行サービスの案内をする弁護士事務所のホームページなどがヒットします。民間企業に比べるとそこまで利用率は高くなさそうですが、若い世代を中心に、確実に選択肢の1つになってきています。

民間企業でも、会社に退職代行業者から電話がかかってくるとドキッとするという体験談がよく聞かれますが、それは学校現場でも同じことが言えるでしょう。
学校としては、できるだけそのような電話は受け取りたくないものです。

では、退職代行を使用されてしまう学校は、どのような環境なのでしょうか。

一言で言えば「管理職と一般教諭の関係がよくない」職場環境です。校長や教頭に相談をしたり意見を伝えることができないような職場環境では、教師を辞めたい、もしくはしばらく休職したいことさえ言うのをためらってしまう先生も少なくないでしょう。

普段から寄り添う姿勢がない管理職の下で働いていれば、いざ心身ともに限界が来ても「ただでさえ人手不足なのに、自分まで辞めると言ったら何と言われるのだろう」と考えてしまうのは当然のことです。逆に言えば、相談しやすい管理職であれば、退職という判断をせずとも休職や校務分掌を減らしてもらうなどの対応で済むかもしれません。

教師が働きやすい職場に必要なものは、聞き分けのいい子どもでも最新のDX(デジタルトランスフォーメーション)でもなく、「困ったときに相談しやすい管理職」だということを、学校側は今一度再確認してほしいと思います。

■今、本当に先生たちに必要なサービスは“休職代行”ではないか?
ここまで教師の退職、退職代行の利用について話してきましたが、実際に多くの教師が選択するのは退職ではなく休職です。

文部科学省の調査によると、令和6年度の公立学校の教育職員の休職者数は7087人で、休職要因の多くは業務内容(児童、生徒の指導に関すること)や職場の対人関係なのだそうです。

民間企業であれば、求職者の穴を他の人が埋めたり、一時的なバイトや派遣で埋めたりすることができますが、学校はそこまで人員補充が容易ではありません。学校によっては教頭や校長が授業を行ったり臨時の担任としてクラスを見たりしている例もあります。

そこで筆者が常々考えているのは「休職代行」というサービス。
先生が安心して休めるよう、欠員が出てしまったところを民間から派遣する教師が埋めていく「代替教員派遣」の仕組みです。

もちろん教員免許を持っているなどの条件をしっかり考える必要があると思いますが、教師が働きやすく休みやすい環境を整えるためには、とても有効なサービスなのではないかと思います。

世の中には教員免許を持っていても教育現場では働いていないという方も少なくありません。そうした人材をうまく活用できれば、学校、教師、そして何より子どもたちが快適な学校生活を送れるようになるはずです。

■人手不足だからこそ、従来の形から一歩踏み込んだ制度の検討を
世の中の教師のほとんどは、真面目でいつも子どもたちのことを考えています。そういった人こそ「休職もしづらいし退職もできない……」と八方塞がりになってしまっている可能性が十分にあります。結果的に誰にも相談できずに退職代行でひっそりと辞めていくことになってしまうのは、教育業界にとってあまりに惜しいことです。

全ての教師がいきいきと働けるように、まずは働く環境の見直し、さらには、従来の形から一歩踏み込んだ革新的なサービスの検討がなされることを期待してやみません。

参考文献:令和6年度公立学校教職員の人事行政状況調査について(文部科学省)

▼坂田 聖一郎プロフィール教員を13年間経験した後、独立し「株式会社ドラゴン教育革命」を設立。「学校教育にコーチングとやさしさを」コンセプトに、子どもたちがイキイキと学べる教育を実現できる世の中を学校の外から作りたいという想いで活動する教育革命家。
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