モラハラ、パワハラ、セクハラ、フキハラなどなど、他人を傷つける発言は御法度の時代になった。もちろん、世代で決めつけるわけにはいかないが、ハラスメント意識のなかった昭和時代を生きてきた人たちは、根本的な問題を感覚的に理解しようがないのだろう。
若い頃からの習慣で、「気軽に」「冗談のつもりで」、うっかり発言となる。そもそもそれが人を傷つけるという意識が皆無なので、周りからはタチが悪いと思われてしまうのだ。

■夫の発言に違和感を覚えて
「結婚後に気付いたんですが、うちの夫、ちょいちょいカチンとくるようなことを言うんですよ。共働きだから家事もやってくれるし、子どもに関してもいろいろなことに気付くのが早い。気が回るタイプなんです。夫は『誰もが平等だよ』と子どもにも言うくらい。それなのに、なぜかふっとモラハラ発言が出る」

苦笑いしながらそう言うのは、ヒサエさん(40歳)だ。結婚10年、7歳と5歳の子がいる。夫の家族への思いは分かっているのだが、それでもたまにムッとすることがあるという。

「例えば、春だからとちょっと口紅の色を変えたら『若作りしてない?』と笑う。悪気はないんでしょうけどムカつきます。一緒に料理をしているときも、私がサラダを作っていたら、少したって『まだできないの?』と。
黙っていたら『遅いなあ』と一言。なんだかムカつくわと言ったら『いちいち気にするのがきみの器の小さなところだよ』って笑うんです。なんでも冗談だといえば済むと思っているところが腹が立つ。些細なことだけど積もり積もると、けっこう傷つくんですよ」

■妻の傷を理解しようとしない夫
傷つくのはそれが図星だからだと夫に言われたこともある。それにも納得できないまま時間だけがたっていき、彼女の傷は徐々に深くなっているようだ。

「子どもたちにはこの上なく優しいんですけど、私にはそうやってチクチク刺してくる。いいかげんにしてよと本気で怒ったこともあるんだけど、夫は近くて親しいからこそ、そうやって笑えるコミュニケーションをとっているんだと譲らない。それこそが傷つけているということなんだよと言うと、『じゃあ、無言でいろってこと?』って。振り返って反省するということはできないみたいです」

夫の両親は教育者で、会う機会は少ないが、子どものしつけや教育について会うたびに感化されてきたとヒサエさんは言う。それなのに夫は、といつも感じていた。

■久しぶりに会った義両親
今年の正月、久しぶりに遠方の義両親に家族で会いに行った。たまたま義姉と二人きりで話す機会があり、ヒサエさんは初めて義父の裏の顔を知ることになった。


「義姉は夫の実の姉で、義両親と同じ敷地内の別棟に一家で住んでいます。これまであまり心の内をさらけ出すような話はしてこなかったんだけど、今回は二人で買い物に行ったりもして仲よくなって。義姉は『うちのお父さんは地元の名士みたいに言われているけど、私からみるとひどいモラハラ親父よ』って。昔から母親、つまり自分の妻を小馬鹿にした発言が多いこと、義母も教育者なのにそんな夫のありようを是正もせず言いなりになっていること。義姉は、昔はお母さんがかわいそうと思っていたけれど、結局、二人とも表と裏の顔があって、どっちもどっちだと思っていることなど、本音を聞かせてくれました」

義両親は70代。義母は料理もうまいのに、義父は親戚が集まると「こいつの料理は食えたものじゃない」と言う。謙遜の域を超えていると義姉は怒ったように言った。それをまた母はじっと聞いて「私は何もできなくて」と恥じ入るように言うそうだ。見ていてイライラするわと義姉は吐き捨てるように言った。

■「歪んだ夫婦」にならないために
「そういうのが美徳だという時代だったんでしょうか。でもそれを見て育った夫が、冗談のつもりで私をからかうように小馬鹿にするのがよく分かりました。義姉にその話をしたら、『ああ、弟はああいう夫婦関係を当然だと思って育っているから。
しかも彼は高校からもう家を離れてしまったので、両親のありようをきちんと判断できないのよ』って。そういうことかと納得しました」

いつかその話をきちんと夫にしよう、そして夫の言動を改めてもらおうとヒサエさんは心に決めた。このままいったら、おそらく自分たち夫婦はいつか子どもたちから「歪んだ夫婦」に思われるに違いない。義姉が両親をそう見ているように。

「きちんと話し合うのはハードルが高いけど、互いにゆっくりできる今度の連休あたりに機会を見つけて話すつもりです。ある意味、闘いですね。ここで闘わなかったら私も後悔することになりそうですから」

ヒサエさんはきっぱりとそう言った。
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