バーガーキングが日本で大量閉店すると発表し、衝撃が走った。99店舗のうち2割強にあたる22店を5月24~31日に閉鎖。

報道によると、別の場所に新たに20店舗をオープンすることを目指しており、規模を縮小したり日本から撤退するわけではないという。よりアメリカンな店舗にしてイメージを刷新し、仕切り直ししたい考えのようだ。

 バーガーキングでは、ハンバーガー「ワッパー」が人気だ。ビーフパティを直火焼きすることで、鉄板で焼いた時のように余分な脂分を吸うことがないため、肉の旨みが凝縮されているとして支持を集めている。ワッパーには「とてつもなく大きい」という意味があることからもわかるが、直径が13センチと大きく、食べ応えがあるのも人気となっている。

 バーガーキングは100を超える国と地域で計1万7000店以上(2018年末時点)を展開する巨大飲食チェーンだ。ハンバーガーチェーンとしては、マクドナルドに次ぐ世界2位の規模を誇る。主戦場の米国では両者がしのぎを削り、激しい競争を繰り広げている。

 しかし、日本では100店舗に満たず、メジャーな存在ではない。ハンバーガー業界では、約2900店を展開するマクドナルドと約1300店のモスバーガーの2強が幅を利かせており、バーガーキングは業界で埋没してしまっている。

 バーガーキングは日本では現在、ビーケージャパンホールディングス(BKJHD)とバーガーキング・ジャパン(BKJ)が運営を担っている。主導しているのはBKJHDだ。
なお決算公告によると、BKJHDは17年12月期(第1期)に2億5100万円の純損失を計上している。

 バーガーキングは、日本ではこれまで紆余曲折だった。日本初上陸は1993年で、西武鉄道グループの西武商事が運営を担った。その後、日本たばこ産業(JT)が事業を承継し、96年から本格展開を始めている。

 90年代後半は、マクドナルドがハンバーガーの価格を大幅に引き下げ、価格破壊競争が起きた時期だ。この競争がバーガーキングを襲った。マクドナルドは00年に、平日に「ハンバーガー」を半額の65円という破格の価格で販売し、シェア拡大をもくろんだ。こうした競争にバーガーキングは勝つことができず、01年に撤退を余儀なくされている。

●日本再上陸も苦戦

 撤退から6年後の07年、「ロッテリア」を展開するロッテと、ロッテリアの再建に携わっている企業支援会社のリヴァンプが共同出資して設立したBKJが、東京・新宿にあらためてバーガーキングの1号店をオープン。バーガーキングは日本再進出を果たした。初日の開店前には約700もの人が集まったという。こうして幸先の良いスタートを切ることができたわけだが、その後は必ずしも順風満帆とはいえなかった。


 この頃は日本経済が平成不況から脱して回復の兆しが見えていた時期だった。しかし、08年のリーマン・ショックにより、再び不況に陥ってしまった。合わせて国内の外食産業も市場規模が落ち込むようになった。

 日本フードサービス協会による外食市場規模の推計値は、03年から08年までは年間24兆円台中ごろでほぼ横ばいに推移していたが、09年は23兆6599億円にまで落ち込んでしまった。11年には22兆8282億円にまで落ち込んでいる。こういった時期に再上陸したバーガーキングはタイミングが悪かったのかもしれない。

 もっとも、この時期は業界の雄、マクドナルドも苦戦を強いられていた。運営会社の日本マクドナルドホールディングスの売上高は、08年12月期(4063億円)までは増加が続いていたが、翌09年12月期は前期比10.8%減の3623億円と大きく落ち込んだ。以降、低迷が続く。さらに、14年7月に発覚した期限切れ鶏肉使用などの問題が追い打ちをかけ、マクドナルドはどん底に沈んでいった。

 バーガーキングはマクドナルドの転落を好機としたいところだったが、その好機をものにできなかった。マクドナルドは不振を受けて不採算店の閉鎖を進めたため、バーガーキングはその跡地に積極的に出店するようにした。
マクドナルドは業界屈指の出店ノウハウを駆使して出店してきたため、どこも好立地ばかりだった。そのため、飲食チェーンが争ってマクドナルドの跡地に進出した。

 バーガーキングは出店以外でもマクドナルドを意識した戦略をとっている。マクドナルドの看板商品「ビッグマック」を意識したと思われる、ビーフパティ2枚を3枚のバンズで挟んだ「ビッグキング」を期間限定で販売している。キャッチコピーに「こっちの“BIG”は大きい、だけじゃない。」を採用したところが、ビッグマックを販売するマクドナルドを意識したといわれる所以だ。

 こうしてバーガーキングはマクドナルドの隙を狙って攻勢をかけたわけだが、結局は思うように事業を拡大することができなかった。

●マック復活で存在感喪失

 BKJは10年に韓国ロッテグループの韓国ロッテリアに100円で買収され子会社となっていたが、事業拡大が進まない状況を受け、米バーガーキングは日本での運営権を香港の投資ファンド、アフィニティ・エクイティ・パートナーズに譲渡し、同社が前出のBKJHDを設立、日本での事業拡大を目指した。そして今回、22店舗を閉鎖して20店舗を新たに出店し、再び攻勢をかけたい考えだ。

 だが、状況は厳しさが増している。特にマクドナルドの復活が大きいだろう。鶏肉問題でどん底に沈んだが、15年12月期を底に売上高は右肩上がりで増えている。新商品を矢継ぎ早に投入したほか、バーガー総選挙と名付けた商品の人気投票や、「マック」と「マクド」のどちらが愛着のある愛称かを競う対決キャンペーンを行うなど、話題性のある施策を繰り出したことが奏功した。
また、積極的な改装を実施したことも奏功している。

 こうして復活を果たしたマクドナルドの陰に隠れてしまい、バーガーキングは存在感を発揮できなくなっている。

 マクドナルドがバーガーキングのお株を奪っている面もある。バーガーキングの売りのひとつにハンバーガーのボリュームがあるが、マクドナルドは「ギガビッグマック」や「倍バーガー」などボリュームのあるハンバーガーを販売するなどしている。バーガーキングに行かなくても、マクドナルドでボリュームのあるハンバーガーが食べられるようになっているのだ。

 こうしてバーガーキングは厳しい状況に置かれているわけだが、今回の店舗閉鎖と新規出店で突破口を開きたいところだ。閉鎖が発表された22店は大半が2013年以前にオープンしており、老朽化している店舗が少なくない。改装しても採算性の改善が見込めないのであれば、閉鎖してほかの場所で勝負するというのは合理的だ。いずれにせよ、心機一転して競合との勝負に挑みたい考えだ。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)

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