NTT Landscapeと、キャンプ場予約サイト「なっぷ」を運営するR.projectは、2025年10月よりキャンプ場向けのDX(デジタルトランスフォーメーション)サービス「スマートチェックイン」を提供している。同サービスはアプリで受付業務を代替し、チェックイン対応を約6割削減するなど運営の在り方を変えつつある。


スマートチェックインを導入している静岡県伊豆市のキャンプ場「LScamp中伊豆」を訪れ、サービスの仕組みや開発背景、実際の活用状況を追った。

「受付なし」で入場できる、スマートチェックインの仕組み

スマートチェックインは、キャンプ場のチェックインからチェックアウトまでの手続きをアプリで完結できるサービスだ。スマートチェックインの最大の特徴は、「受付を介さずそのまま入場できる」点にある。

予約サイト「なっぷ」で予約した利用者は、スマートチェックインを導入しているキャンプ場において、予約情報と連携した専用アプリを利用することで、利用規約や場内ルールを事前に確認・同意できる。

これにより受付での手続きを省略し、そのまま宿泊サイトへ向かうことができる。

また、宿泊するサイトの場所がアプリ上に表示されるほか、夜間のクワイエットタイム(静かに過ごす時間)などの注意事項を通知する機能も備えている。

さらに、天候の変化による付近の川の増水など、安全に関わる情報を利用者に注意喚起することも可能。

人手不足・高齢化、キャンプ場業界の課題から生まれたDX

スマートチェックインの開発の背景には、キャンプ場業界が抱える課題があるという。NTT Landscape 事業開発部の土屋諒氏は、次のように説明した。

「キャンプ場はDXがあまり進んでいない業界です。また運営者の高齢化や人手不足もあり、山間部も多いので、人材の確保が難しいという課題があります。このサービスの開発にあたりさまざまなキャンプ場を回りましたが、現場の業務を調べていくと、チェックインやチェックアウトの受付対応が大きな負担になっていることが分かりました。
そこでまず、この部分をシステムで代替できないかと考えたのが開発のきっかけです」(土屋氏)

こうした受付業務の負担は、キャンプ場が本来力を入れたいサービスにも影響しているという。R.project 事業推進本部 施設支援部 運営支援課の坂井翔太氏は次のように話す。

「キャンプ場では夜や朝に場内を見回りして各サイトに声をかけるなど、お客さま対応を重視している施設もあります。ただ、そうした取り組みを行うには、通常業務の負担を減らすことが重要です。事務作業を削減できれば、その分を顧客対応に充てることができます」(坂井氏)

コロナ禍でキャンプ人気が高まり、キャンプ場の数や利用者は増加した。しかし現在は市場が落ち着きつつあり、各施設がどのようにサービスを拡充させ、オリジナリティや差別化を図るかが求められているという。

こうした課題を背景に、開発にあたっては約2年半にわたり検証が行われた。関東のキャンプ場での試験運用から始まり、その後、全国のおよそ80施設でトライアル版の実証実験を実施。トライアル時のアプリのダウンロード数は10万件を超えたという。

受付業務を6割削減、待ち時間も解消 - 現場で起きた変化

スマートチェックインの導入は、利用者のストレス低減につながるほか、キャンプ場は新たなサービスにも時間を割けるようになっている。実証では、チェックイン・チェックアウト時の受付業務を約6割削減できることが確認されている。LScamp中伊豆で運営に携わる谷藤翔平氏は次のように話す。


「私自身、以前別のキャンプ場で働いていた経験がありますが、チェックイン対応には多くの時間がかかることがあり、繁忙期には受付で1時間以上の待ち時間が発生することもありました。LScampではスマートチェックインを導入しているため、運営者と利用者双方の負担が大きく軽減されています」(谷藤氏)

空いた時間で売上も向上、物販は“2倍”に

LScamp中伊豆ではこうして生まれた時間を活用し、場内を巡回しながら食材や飲み物、薪などを販売する「行商」や、「フィールドラリー」といった子ども向けイベントの開催など、新たなサービスに取り組んでいる。

また、空いた時間を物販に回せるようになったことで、物販の売り上げは従来の倍以上になったという。

「空いた時間を使ってお客さまとコミュニケーションを取る機会が増えました。イベントを行うなど、受付以外の場面で利用者と接点を持つことで、口コミや満足度の向上にもつながっています」(谷藤氏)

利用者からも好意的な声が寄せられており、「キャンプを楽しむ時間が長くなった」「毎回同じ説明を受ける必要がないのが嬉しい」という声があがっているという。
キャンプ場特有のルールに対応、ゼロから開発した理由

スマートチェックインは、既存の予約システムを流用するのではなく、キャンプ場向けにゼロから開発された。土屋氏はその理由について次のように説明する。

「キャンプ場特有の事情として大きく2つあります。1つ目は、施設ごとにルールが異なる点です。ゴミ出しの方法やチェックアウト時間、クワイエットタイムなどが施設ごとに違うため、そうした個別のルールを利用者に伝える仕組みが必要でした。もう1つは法律への対応です。キャンプ場には旅館業法の対象となる宿泊施設と、対象外となるテントサイトが混在しているため、それぞれに対応できる仕組みを新たに開発しました」(土屋氏)

スマートチェックインでは、キャンプ場ごとの運営方針に合わせて案内内容や利用規約を設定できる。
例えばチェックインの時、説明はアプリで読み、最後にスタッフと対面するというフローが可能であり、完全無人か一部有人の対応かを選べる。またチェックアウトは完全無人の対応が可能であり、それぞれの施設の運営方針に応じた使い方ができるという。
○“受付しないキャンプ場”は広がるか、次に狙うのは収益の自動化

今後は業務効率化だけでなく、キャンプ場の収益向上につながる機能の追加も検討されている。

「現状は業務効率化の面での価値提供が中心ですが、将来的にはアプリを導入することで施設の売り上げが自然に伸びていくような仕組みを目指したいと考えています。例えば、レイトチェックアウトをアプリが自動で提案し、利用者がワンタップで滞在時間を延ばせるような形です。利用者にとっても便利で、施設側も特別な対応をしなくても収益につながる。そうした世界観を実現していきたいと考えています」(土屋氏)

一方で、坂井氏はスマートチェックインの普及と、その先にあるキャンプ場運営の可能性について次のように語る。

「まずはスマートチェックインを広く普及させたいと考えています。その上で、施設の方がやりたいと思いながらも、なかなか実現できていない取り組みを実現できる環境をつくりたい。各キャンプ場が個性を出して差別化できるようになれば、業界全体の活性化にもつながると思います」(坂井氏)

業務効率化とサービス向上を両立するスマートチェックイン。キャンプ場運営のあり方そのものを変える取り組みとして、その広がりが注目される。
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