いまの場所にたどり着くまでに、どんな選択があったのか――。この連載では、道を切り開き始めた次代の担い手たちに、歩んできた決断の背景と、その先に見据える未来を聞いていく。
本稿で話を聞いたのは、お笑いコンビ めぞん。ともにNSC東京校22期生で、吉野おいなり君は1994年2月3日生まれ(福岡県北九州市出身)、原一刻さんは1994年7月22日生まれ(宮崎県宮崎市出身)。2016年にコンビを結成し、2025年のM-1グランプリで初の決勝進出を果たした。吉本興業 東京本部にて話を聞いた。
養成所の“最下層”でも「辞めよう、はなかった」
――お笑い芸人を目指したきっかけについて教えて下さい。
原さん(以下、敬称略):子どもの頃からお笑いが好きで、M-1グランプリもよく見ていました。特にトータルテンボスさんが好きで、ネタを見ては「面白いな」「かっこいいな」と憧れていました。それが小6~中1の頃です。
吉野さん(以下、敬称略):ボクは、2ちゃんねるの電車男に憧れていて、芸人になりました。
原:いやいや、それは芸人に繋がんないから。
吉野:あとM-1ですね。
原:絶対そっちだろ。
吉野:子どもの頃、チュートリアルさん、ブラックマヨネーズさんが好きでよくチェックしてました。
――お笑い芸人以外の選択肢も考えましたか?
原:ボクは工業高校だったんですが、勉強が好きじゃなかったんです。高校3年間、友だちと遊んで部活して、いざ進路を決める、ってなったときに悩んでしまって。その頃、お笑いに憧れはあるけど、まさか自分が芸人になれるとは思ってなくて。
そこで、お笑いのライブに行きやすい東京で仕事を見つけよう、って思ったんです。日野自動車に就職して、トラックの衝突試験の部署で3年弱、働いていました。そこまでクルマ好きではなかったんですが、東京で働いて、お休みの日はお笑いライブ、あと音楽ライブにも行く、って生活を送ってました。
吉野:衝突試験のときのマネキンをやってたんだよね。
原:マネキンじゃねぇから。
吉野:ボクもそのとき一緒にマネキンやってて、「お笑いやってみない?」って誘ったんです。ブリキの漫才師というか、コンビ名も「ブリキカラス」にしようと思ってて。
原:おるよ、ブリキカラスさんは松竹芸能さんに(笑)。
――お笑い芸人を目指す選択に、周囲の反対はありましたか?
原:いえ。驚きもしてなかったみたいです。もともと高校の文化祭でも、人前でネタとかやってましたし、それにうちは家族がみんなお笑い好きで。家族旅行で東京に行くときはルミネにお笑いを見に行く日を確保してましたし、クルマで遠出するときも兄弟3人は車中でお笑いのDVDを見てたりして。もう20歳も超えてからの決断だったので、親も「自分が選択した道なら良いんじゃない?」って感じでした。
吉野:うちは、母親が樹齢3,000年の大樹なので、「その歴史からしたら人間の100年なんてどうでも良いよ」って言ってました。些末なことだよと。
原:すごい実家だな。
吉野:あと、本当のお母さんで言うと、
原:本当のお母さん(笑)。
吉野:本当のお母さんで言うと、好きなようにして良いよ、って応援してくれてましたね。高校を出て就職したのは運送会社で、コンテナにパンパンに詰められたソファをA地点からB地点まで運ぶような仕事をしてて。
原:それピクミンじゃん。
吉野:その大きなソファを運びながら、ずっとTwitterやってて、バズるとめっちゃ嬉しくて。小学生の頃から、親には「将来は芸人になりたい」と言ってたんですが、芸人になんなくてもSNSでバズるなら良いか、これで生きていこうか、って思ってました。
でもそのうち、親とか友だちから「あいつ芸人にならずに、いつまで大きいソファ運んでんだろ」って視線を感じて、気まずくなって上京しました。はじめは「自分には無理だろうから、半年くらいNSCに通ったら地元に帰ろう」って思ってました。そしたら余裕でM-1のファイナリストになれたって感じで。
原:全然、余裕ではないですね(笑)。
――これまで、芸人を辞めたいと思ったことは?
原:辞めようと思ったことは、ないかも知れないですね。
吉野:ボクら、まったく調子が良かったわけでもなく、むしろ最下層だったんですけど、でも「辞めよう」はなかったですね。お笑いが好きとか、いつか見返してやるとか、反骨精神とか、そんなんじゃなくて、普通にバカでした(笑)。同期と遊びながら、ただただ生きてました。
――理不尽なことで悔しい思いをしたり、そんなこともありませんでしたか?
吉野:理不尽なことと言えば、ほぼ人権を無視したような仕打ちを、原は俺から受けてるよね。
原:怖っ(笑)。言っちゃって大丈夫それ? 普通に会社で働いてたら、もし理不尽なことがあっても耐えるしかないと思うんですが、お笑いの世界ってそれがお笑いになったり、面白がってくれる人が周りにたくさんいるので、そういうネガティブな気持ちになることって、あまりない気がするんですよね。これはありがたいことです。
吉野:ボクらの漫才は、叩いたりビンタしたり胸ぐら掴んだりもするんですが、原が少し強めに叩いてくる理不尽があるじゃないですか。そのあと、ボクが叩くときは3倍の強さにしています。
原:それだよ。
迷った時は「原に何1つ決めさせない」、その理由とは
――迷ったときの選択肢で、大事にしていることは?
吉野:お笑いの選択で、原には何1つ決めさせないようにしています。原は、なんでも後から聞かされて「うん分かった」と言うしかないです。
原:これは本当です(笑)。なんでも吉野が決めてくれるので、ボクは吉野が思い描いた形にできるように、頑張ってついて行くだけです。
吉野:M-1でやったネタで、ボクが「逃げろ!」と言って後ろに飛ぶところがあるんですが、あれを最初に見せたときに原は「え、それはちょっと…」って冷笑してきたんです。でも本番ではウケたので、そのとき「コイツに聞くのはやめよう」って思いました。
原:言い過ぎだろ(笑)。でも正直、あんなにウケるとは思わなかったです。冷笑したわけではないんですけど、これはボクの負けです。吉野はずっとネタを書いてくれているし、ネタに向き合う時間も長いので。あとは、取り敢えず舞台でやってみてから考えるようにしよう、というのは思いました。
吉野:前に1度、「普段はネタを書かない方がネタを書いてライブしよう」って企画があったんですが、本番の2週間前の時点で、台本に「ミルクって言いながら揺れる」としか書かれてなくて戦慄したことがあります。
原:ずっと考えていたんですが、何も思い浮かばなくて。何が面白いのか、自分は何がやりたかったのか、もう分かんなくなっちゃって。それ以降は、出してくれた意見に逆らわなくなりました。ミルクって言いながら揺れる脳しかなかったんで…。
吉野:そこからボクも手伝って、同期の2人にも手伝ってもらって、ネタは完成したんですが、本番は人生でイチバン滑りました。あの日から牛乳が飲めなくなりましたね。
――相方を選んだ理由について教えて下さい。
吉野:俺の才能にメロついたんだよね。メロコンビです。
原:違うだろ。
吉野:もともと、お互い別の相方と組んでいたんですが、解散してピン同士になって。あるネタ見せの授業のときに、2人ともネタを用意してなかったから順番が周ってこないように列のイチバン後ろに並んでたんです。でもそういうときに限ってサクサク進んで、即興でピンネタを披露したんですが、悪夢を見てるんじゃないかってくらい滑ったんですよ。そのとき、震えながら「いますぐ誰かと組みたい、1人は怖い」ってなって。
原:あのときは本当に「滑るならせめて誰かと一緒に」って思いました。
吉野:だから最初は、お互い「こいつと組みたかった」という感情はなかったですね。
原:NSCに「相方探しの会」っていうのがあるんですが、ピンの5~6人でご飯を食べたときに、吉野もいて。
吉野:帰りの方向も原と一緒で、歩いてたら「吉野は面白いと思うから、コンビ組むなら吉野が良いな」って言ってくれて嬉しくて。でも次の日、NSCに行ったら原は別の人とコンビ組んでて......ほんと怖いよね。
原:もう10年も前のことですから、時効…? (笑)。あの日は色んな人と連絡先を交換したんだけど、喋ったうちの1人がめっちゃ連絡くれて、なんか流されるままに1回、組んでみようって思っちゃって。
憧れたルミネでの単独公演は、“6本勝負の合戦”?
――今後は、どんな活動をしていきたいですか?
原:いまの活動を地道に続けていけたら良いかな、と思っています。
吉野:何でも言うことを聞いてくれる、原みたいな従順な相方をあと3人増やして、5人でやっていきたいと思います。
原:嫌だよ。
吉野:お笑い奴隷というか、傀儡(くぐつ)をあと3つ増やしたいです。
――めぞん単独ライブ『吉野原ペアvs地獄の三人衆』を5月24日に、ルミネtheよしもとで開催しますね。意気込みを教えてください。
吉野:ボク自身、芸人になってからずっと「ルミネに立ちたい」って気持ちがありました。原も、昔から憧れていた場所です。だから純粋に単独ライブをやりたかったんですが、地獄の三人衆が来ちゃうので、それが許せないですね。
原:地獄の三人衆が来ちゃうのね。
吉野:そう。地獄の三人衆に「我々と戦わなければ、よしもとの各劇場に仕込んだ『怒り以外の感情を消す爆弾』を起爆する」と脅迫されたので、今回、こういう形になりました。楽しみにしていたお客さんもいると思うので、もう許せない気持ちでいっぱいです。地獄の三人衆を必ず倒しますので、ぜひ応援してください。
原:そういう意気込みなのね。
吉野:危ない爆弾なので、ルミネには来ないで、配信を見てもらった方が安全かも知れません。
――単独ライブは、お2人にとってどんな位置づけですか?
吉野:ボクら、あんまり単独ライブやんないんです。
原:そうですね、3回目くらいかな。
吉野:今回は、”合戦”です。漫才の順番なんですが、ボクの師匠のおじいちゃん×原の漫才で始まって、めぞんで漫才、ボクの元親友で闇落ちした悪魔×原、めぞんで漫才、高性能お笑いAIマスターラフト×原、めぞんで漫才、という三番勝負になります。原は6本の漫才に出るので、頑張ってほしいですね。
原:お前も6本でるだろ。師匠のおじいちゃんとか誰だよそいつ。
吉野:今回はいま地獄の三人衆を倒すための特訓を重ねていて、あとは至極のネタも考えているところなので、楽しみにしててください。あと、これ何処にも言ってないんですが、もしかしたら7本目もあるかも。
原:なんだおい急に。マイナビさん初公開で(笑)。ボクは、まだ何をやらされるか一切、聞かされていないんですが、与えられた仕事を全うするので、是非、配信チケットを買って見ていただけたらと思います。
――めぞんさんの世界観に引き込まれるインタビューとなりました。お忙しいところ、ありがとうございました。
取材:葉山澪
構成/撮影: 近藤謙太郎
めぞん単独ライブ『吉野原ペアvs地獄の三人衆』
【出演】めぞん
【日時】2026年5月24日(日) 開場18:30/開演19:00/終演20:15
【場所】ルミネtheよしもと
【料金】配信 2,000円 ※会場チケット完売











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