鉾田市とNTT東日本茨城支店は4月28日、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進に関する連携協定を締結した。さらに両者は同日、鉾田市内で調印式を開催した。


5月1日からNTT東日本の社員1名を週2日程度、市に派遣し、職員とともに課題整理から施策実行までを支援する伴走型の取り組みを開始する。

なぜ自治体DXは進まない? NTT東日本が“人材支援”に乗り出す

近年、自治体では少子高齢化への対応や業務の高度化・複雑化を背景に、デジタル技術を活用した業務改革、いわゆる「自治体DX」の重要性が高まっている。

一方で、専門人材の不足や限られた人的リソースにより、施策の企画から実装、定着までを一貫して進めることが難しい自治体も多い。

こうした状況の中で、NTT東日本茨城支店が行うのが「人材」を軸とした支援だ。

単にデジタルツールを導入するのではなく、デジタル人材が行政の現場に入り込み、職員とともに課題を整理する。その上で、解決策の検討から実行までを一体となって進める。こうした現場入り込み型の支援によって、実効性のあるDX推進を目指す。

今回の協定では、以下の3点に取り組む。「『鉾田市DX推進計画』の作成支援」「地域・行政課題に対するDX推進支援」「その他、DX戦略に係る重要事項推進に関する伴走支援」の3点だ。

調印式では、鉾田市の井川茂樹市長が「官民連携による新たな価値の創出につながるものと期待している。今回の協定を契機に、さらなる連携の強化と地域の発展につなげていきたい」と述べ、デジタル技術を活用した行政改革への意欲を示した。

また、NTT東日本茨城支店の坂下徳隆支店長も「現場に入り込みながら、鉾田市の課題に向き合い、解決に向けた取り組みを進めることで、住民サービスの向上や行政の業務負荷軽減につなげていきたい」と語り、現場密着型の支援に力を入れる姿勢を示した。


なお、NTT東日本が茨城県内の市町村に対し、社員を派遣して伴走型支援を行う取り組みは今回が初めてとなる。

DXは進んだ、その先で見えてきた“活用”の壁

調印式の後、今回の協定の具体的な狙いや展望について、鉾田市 政策企画部参事兼 政策秘書課長の山口和好氏、同部 政策秘書課 DX推進係長の山田真稔氏、NTT東日本 茨城支店 ビジネスイノベーション部 地域基盤ビジネスグループ 担当部長の角健三郎氏、同部DX推進コーディネーターの糟谷宗志氏に話を聞いた。

山田氏によると、同市ではこれまで、電子申請の導入やRPA(事務作業を自動化できるソフトウェアロボット技術)、ペーパーレス会議、ビジネスチャットの活用など、デジタル化の基盤整備は進みつつあるという。また、住民向けにもチャットボットや施設予約のデジタル化などを進めており、インフラとしての環境は整いつつある。

さらに、鉾田市は農業が盛んな地域であり、外国人実習生が多いという特徴も持つ。窓口対応の円滑化に向けて字幕表示システムを導入するなど、地域特性に応じた取り組みも進めている。

一方で、「どのツールをどう使えば課題解決につながるのか」が見えづらいという課題もあったという。

山田氏は今回の連携について、「NTTの知見も借りながら、そもそも何が課題なのかといったところから第三者の視点で確認していただき、その上で解決策を一緒に形にしていければと考えています」と期待を語った。

NTT東日本社員が週2日常駐、現場入り込み型で支援

こうした課題に対し、今回の取り組みでは、NTT東日本の糟谷氏が週に2日程度、市役所に常駐し各部署の業務や課題を直接把握しながら支援を行う。ソリューションの提案から始めるのではなく、まずは各課が抱える要望や現状を丁寧に整理し、それに応じたデジタル活用の手法を検討する。

特徴的なのは、単独の担当者による支援にとどまらない点だ。角氏は、「これまで40以上の自治体で伴走支援を行ってきた経験を生かしながら支援していく」と話す。


常駐した社員が現場で把握した課題は社内に持ち帰り、複数メンバーによるチームで検討される。必要に応じてNTTグループ各社の技術も活用しながら、解決策を検討する体制をとる。

今後の展望について糟谷氏は、「まずは現場の課題をしっかりとヒアリングし、社内で共有・検討を行ったうえで解決策を提示していきたい。職員の方の業務改善につなげ、少しでも負担を軽減することで、新たな取り組みに時間を使える環境を作っていきたい」と語ってくれた。

その上で、「今回の取り組みで得られた知見を蓄積し、他の自治体への展開にもつなげていきたい。結果として、より広い地域への貢献につなげていければ」とし、将来的な地域全体への展開の意欲も示した。

また、鉾田市の山口氏は、「市としてDXで目指すのは、市民の利便性の向上と業務効率化であるが、今見えている延長線ではない未来もあると考えている。行政側とは異なる視点を持つNTT東日本から、新たな可能性を提示してもらえることに期待している」と話した。

鉾田市では今後、新庁舎の整備も予定されている。近年の新庁舎では、事務手続きを受け付けるハイカウンターの市民窓口から、住民と座って対話するローカウンター型の窓口を設置している自治体が増えてきているという。

こうした変化を見据え、DXによって創出された人的リソースを、住民との対話や丁寧な対応に振り向けることで、行政サービスの質向上にもつなげていく考えだ。
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