ホワイトソックス・村上宗隆の勢いが止まらない。
 開幕から3試合連続本塁打を放つなど、新天地で華々しいスタートを切った村上。
その後は打率が1割台半ばまで急落した時期もあったが、すぐに2割台に戻し、現在は2割台前半を推移している。

“格安契約”を覆す歴史的な本塁打ペース

 村上の最大の武器は、ご存じの通りそのパワーだ。ヤクルト時代の2022年に22歳の若さでセ・リーグ三冠王に輝き、24年には本塁打と打点の2冠を獲得。昨季はケガの影響もあり、56試合の出場にとどまったが、22本塁打をマークした。昨季は3年ぶりにOPSも1.000を超え、オフに満を持してポスティングによるメジャー挑戦を果たした。
 しかし、パワフルな打撃の半面、三振の多さや打撃のムラが懸念されてか、期待されたほどの大型契約には至らず。村上はここ数年、低迷が続くホワイトソックスと、2年総額3400万ドル(約53億円)という“格安”といえる額で契約を結んだ。

 シーズン前はある程度、本塁打は出るだろうと予想されていたが、それでも20本台、多くて30本台という予測が大半だった。まさか60本に迫るペースで本塁打を量産するとは誰も考えていなかったのではないだろうか(日本時間18日時点で59本ペース)。

評価される“圧倒的な長打力と選球眼”

 村上の今季成績を改めて振り返ると、ここまでチームの全46試合に出場。打率は.235と想定通りやや低めの数字だが、17本塁打はア・リーグでトップ。32打点はチームトップで、ホワイトソックス打線を牽引している。

 村上の評価を高めているのは、そのパワーだけではない。ヤクルト時代にもシーズン100前後を記録していた四球の数はここまで36個。
シーズン126個ペースで量産している。

 一方で、三振の数はメジャーで5番目の66個と多いが、それを補って余りあるパワーと選球眼のコンビネーションを見せているといっていいだろう。

 好不調の波が大きいことも村上の懸念事項の一つだった。実際に4月上旬から中旬にかけて、8試合でわずか1安打という期間もあったが、その後は3試合連続無安打は一度もなく、長いスランプに陥ることなく、順調に本塁打を重ねている。

勝負弱さが課題も…“とある指標”で示された驚異の得点力

 あえて村上の課題を一つ挙げるとすれば、やや勝負弱さがあるところだろう。得点圏打率は.152で、本塁打の数に比して、打点がそれほど伸びていない。走者がいる場面では、相手バッテリーも村上を警戒し、まともに勝負していないと想像できるが、せめて得点圏打率を2割台には乗せておきたいところだ。

 村上の今季の打撃傾向を見てきたが、ここで紹介したいのがRC27という指標だ。RC(Runs Created)とは、打者が攻撃においてどれだけの得点を創出したかを表したもので、安打や四球、盗塁、犠打、犠飛など多くの項目を計算式に当てはめてはじき出す。そのRCを1試合のアウト数27で割ったものがRC27である。

 つまり、あくまでも仮定の指標ではあるが、1番から9番まで同じ打者が打席に立ち続けた場合に、9イニングに得点がどれだけ入るかがわかるというものだ。

 計算式には幾つかのバリエーションがあるが、ここでは米国の大手スポーツサイト『フォックススポーツ』に掲載されているRC27をピックアップした。

 同サイトによると、18日時点の村上のRC27は7.21。
これは規定打席に達しているメジャー全打者の中で20位に位置している。

 両リーグトップはアストロズのヨルダン・アルバレスで10.53。9.00以上をマークしているのは、他に2位ベン・ライス(10.05、ヤンキース)と3位シェイ・ランゲリアーズ(9.18、アスレチックス)の2人しかいない。

1年目の大谷・イチローと比較してみると…

 村上はそんな上位組には及ばないものの、1年目で堂々トップ20に入っている。今季はやや打撃不調ではあるが、大谷翔平の6.68を上回っている点も見逃せない。

 ちなみに大谷がルーキーイヤーの2018年に打者として残したRC27は7.40だった。つまり、村上は“得点力”という点で、1年目の大谷に肉薄していることになる。

 また、四半世紀前に日本人打者として初めてメジャーに挑戦したあのレジェンドの1年目も確認しておくと、2001年のイチロー氏(当時マリナーズ)のRC27は7.13だった。

 村上の7.21は開幕からまだ2か月足らずの暫定数値ではあるが、メジャーを席巻したイチロー氏が1年目にマークした得点力を上回るペースというのは驚きだろう。

新人王だけでなくMVP候補となる可能性も

 村上とイチロー氏を打者として比べると、全く異なるタイプなのは明白だ。村上は本塁打、四球、三振の3項目が全打席の約6割を占めるいわゆる長距離タイプ。一方、イチロー氏の1年目はその3つの項目が全打席に占める割合はたった12.3%だった。

 25年前のイチロー氏は自身の成績に加えて、マリナーズが独走Vを飾った。
リーグ優勝こそ逃したが、チームへの貢献度の高さも評価され、イチロー氏はア・リーグのMVPと新人王を受賞した。

 あれから25年。ホワイトソックスが貯金生活を送れているのは、村上の存在が何より大きい。地区首位のガーディアンズとの差も1ゲームと、優勝争いに絡んでいきそうな雰囲気が漂う。村上がギアをもう1段上げるようなら、チームを下克上に導くとともに、新人王とMVP候補にも名前が挙がってくるかもしれない。

文/八木遊(やぎ・ゆう)

【八木遊】
1976年、和歌山県で生まれる。地元の高校を卒業後、野茂英雄と同じ1995年に渡米。ヤンキース全盛期をアメリカで過ごした。米国で大学を卒業後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLの業務などに携わる。現在は、MLBを中心とした野球記事、および競馬情報サイトにて競馬記事を執筆中。
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