最初に結論:

買取大吉のブランディングを支えてきたのは、ブランド名を記憶に残す広告表現、複数の媒体を活用した認知・信頼の形成、広告同士の連動による来店への導線づくりです。森山さんは、広告戦略と店舗展開を連動させる重要性も強調しました。


この記事でわかること:

ブランディング広告とレスポンス広告の役割の違い
買取大吉がブランドの認知・信頼を高めるために取り組んだ3つの戦略
広告と店舗展開を連動させる狙いと、リユース市場拡大への考え方

リユース業界向けの展示会イベント「Reuse×Tech Conference for 2027」が10月20日、21日、東京・京橋のTODA HALL&CONFERENCE TOKYOで開催された。

業界をリードする経営者らが登壇するこのイベントで、エンパワーの執行役員・森山真有さんが「リユース事業におけるマス・メディア戦略 『買取大吉』がブランディングに成功した3つの戦略」をテーマに講演。買取専門店「買取大吉」の広告戦略や今後の展望を語った。

○店舗数でトップへ——成長を支えた広告戦略

家庭教師のトライで約15年間、マーケティングや広告宣伝、新規事業の立ち上げなどに携わった経歴を持つ森山さん。2018年に役職を辞任した後、戦略コンサルタントを経て、2020年からエンパワーに参画した。

森山さんによると、エンパワーが運営する「買取大吉」は近年、店舗数の拡大を成長戦略の柱に据え、2025年9月期には店舗数が約2,400店に到達。世界一店舗数の多いリユース企業として、ギネス世界記録に認定されたという。

「我々は売り上げや利益というより、まず店舗数でトップに立とうと考えました。そうすることで、ビジネスの領域も内容も広がっていくはずだと思ったんです」(森山さん)

成長を支えた要素のひとつが、テレビをはじめとするマスメディアの活用だ。森山さんがまず指摘したのは、広告を見た消費者が、必ずしも広告主の意図どおりに行動するとは限らないという点である。

森山さんは、「せっかくブランド広告を打ったのに、結果的に別の会社が儲かるための広告になってしまうということも起こり得る」と指摘。「トライ時代、『チラシで割引キャンペーンをやってるよね』と来店されたお客様のチラシを見たら、全く別の同業他社のものでした。
笑い話のようですが、実際のお客様の認識というのはそういうものなんです」と振り返った。

買取専門店が現在ほど多くなかった時期から、森山さんは今後、業界への新規参入が増えると予測していた。競合が増えれば、広告で集めた顧客が別の店舗へ流れてしまう可能性も高まる。だからこそ、目先の集客だけでなく、長期的に買取大吉を選んでもらうための戦略が必要だった。

○ブランディング広告とレスポンス広告の違いとは?

そこで重視したのが、「ブランディング広告」と「レスポンス広告」だ。

レスポンス広告は、チラシや検索連動型広告などを通じて、その時点での集客や売り上げを狙う。一方、ブランディング広告は、企業やブランドそのものを知ってもらい、将来の売り上げにつながる資産をつくるための広告だ。

レスポンス広告は出稿を続けなければ効果が途切れやすい傾向にある。そのため、短期的な反応だけを追いかけるのではなく、同時にブランドへの認知や信頼を積み上げることが重要となる。

1. ブランド名を繰り返し印象づける


ブランディングを進めるうえで買取大吉が取り組んできたのが、テレビCMなどを通じて「ブランド名を繰り返し印象づけること」だ。

広告では、サービスの内容を詳しく伝えるだけでなく、「買取大吉」という名前そのものを覚えてもらうことが重要。そこで買取大吉はタレントのIKKOさんを起用したCMなどを展開し、親しみやすいキャラクターとブランド名を結びつけ、視聴者の記憶に残る広告を目指してきた。


「社名連呼は鬱陶しくなりがちですが、論理的な左脳ではなく、ハートや右脳に刺さなければ意味がありません。面白みや可愛げを交えて、受け入れられる工夫を凝らす必要があります」(森山さん)

○2. 複数の媒体を活用し、認知と信頼を高める

また、テレビだけに限らず、動画や記事広告、屋外広告など、複数の媒体を組み合わせて認知を高めていった。

「交通広告は『自分も見ているけど、あの人も見ている。みんなが見ている会社なんだ』という気分にさせる力があります。だからこそ、看板などの交通広告は非常に信頼感を与えやすいんです」(森山さん)

○3. 広告を連動させ、認知を来店につなげる

3つ目のポイントは、ひとつの媒体だけで完結させず、さまざまな広告を連動させることだ。

テレビCMでブランドを知った人が、インターネットで検索し、近くの店舗を見つけて来店する。または街中の看板で名前を見かけた人が後日、検索広告を目にして興味を持つ。複数のタッチポイントをつくることで、認知を実際の行動へとつなげていく狙いだ。

○スポーツ協賛で、リユース業界全体の認知拡大も

さらにエンパワーは、スポーツイベントへの協賛にも取り組んできた。サッカーのワールドカップなど、いわゆる“にわかファン”も注目するような大きな大会は、幅広い層にブランドを知ってもらう機会になる。

「これは当社のためだけでなく、業界全体のためという意味もありました。買取専門店を利用したことがある人はまだ13%程度。
この割合が20%になれば、3兆円余りの市場が5兆円規模になるかもしれない。だからこそ、業界全体を広く知ってもらうために、こうした世界大会のスポンサーをさせてもらいました」(森山さん)

森山さんによると、こうした取り組みの結果、買取大吉の認知度は2021年の12%から75.3%へと上昇。ブランド名を指定して検索する割合も78.7%に達したという。

○広告戦略と店舗展開は切り離せない

森山さんは「広告戦略と店舗展開は切り離せない」と強調する。

ブランドを知ってもらっても、近くに店舗がなければ来店にはつながらない。広告によって需要を生み出し、その受け皿となる店舗を整える。双方を連動させることが、事業全体の成長につながってきたのだ。

講演終盤では、企業同士が競争するだけでなく、業界内外の企業が協力し、新たな市場をつくることの重要性にも言及。

森山さんは、「もちろん、買取専門店同士でお客さんを取り合うことはあります。ただ、ときには手を組み、協力しながら、新しいリユースの世界をつくっていくべきではないかと思っています」と広く連携を訴えた。
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