水原氏の不正行為に気付かなかった大谷。結果的にそのことが大きなスキャンダルに繋がった。

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 大金を失った大谷翔平(ドジャース)は、なぜ自身の口座が不正に使用されていた事実に気づかなかったのか――。現地時間4月11日に「銀行詐欺罪」で訴追された水原一平容疑者との騒動に対する疑問は、いまだ消えない。

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 違法賭博の闇は、想像を絶するものだった。11日に検察側が公表した訴状によれば、水原容疑者は2021年9月から2024年1月までに1万9000回ものスポーツ賭博を実施。4070万ドル(約62億2710万円)という純損失(勝ち分を差し引いた金額)を出した同氏は、負債の一部を大谷の年俸が振り込まれている給与口座から不正に支払っていた。

 給与口座から不正に盗用された金額は1600万ドル(約24億5000万円)。

これだけの巨額の資金を動かすのは容易ではないが、水原容疑者は銀行側に対して、大谷本人になりすまして「車のローン(を返済する)」と嘘の供述し、勝手に口座の設定を変更するなどの細工をしていたことも判明している。

 それでも、大谷はもちろん、ネズ・バレロ代理人をはじめとする関係者たちが、身近にいたはずの水原容疑者の“裏切り”に気づけなかったという事実には、さまざまな意見が飛んでいる。

 米スポーツ専門局『ESPN』の敏腕記者であるジェフ・パッサン氏は、同局のYouTubeチャンネル『The Pat McAfee Show』に出演。そこで「周りの誰かがその立場を利用して大金を失ったアスリートは彼が初めてではない。こういう問題はプロのアスリートが高い給料を支払われている限りは存在する」と断言。スーパースターの周囲には今回のような危険が潜んでいると指摘した。

 さらにパッサン記者は「オオタニのようなアスリートたちの頭の中にあるのは、自分の技術に熱心になることで、100%の集中を注がなければならないということ。彼らがプロスポーツで生き残るにはそうするしかないんだ」とも指摘。球界の酸いも甘いも見定めてきた経験から、大谷のようなスーパーアスリートと、その関係者たちが陥りやすい「穴」を論じた。

「オオタニのようにこれまでに見た中で最高の選手の1人になるような場合はなおさら危険だ。自分の技術を磨くことに一心不乱になっていることと、フィールド内外でたくさんの金額を稼ぎ出し、その規模が一般的な『お金持ち』という域を超えているという事実が合わさると、何か問題が起きていても気づかないというのは非常に簡単に起こってしまうんだ

 人々は『1600万ドルをどうやって失うんだ』と言うが、一体どの時点で憂慮すべきで、『どうすればこれを失うことができるんだ』と言えるのかは私には分からない。500万? 1000万? オオタニほどの大金を所有していたら全部同じだよ」

 今後に周辺の体制の見直しが図られるという大谷。

こうした金銭問題を二度と起こさないような環境作りができるか否かは、彼のキャリアのポイントにもなりそうだ。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]