勝負強い打撃に加え、秀逸な守備でも貢献している(C)Takamoto TOKUHARA/CoCoKARAnext

 今季の移籍組で最も注目を集めているひとりが中日の中田翔だ。

 昨オフに巨人との3年契約を1年でオプトアウト。

退路を断ってやってきた名古屋の地で、球界屈指のスラッガーは再び輝きを取り戻しつつある。

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■開幕シリーズの2HRでファンの心つかむ

 キャンプ終盤に2020年の「レベチ打法」へ回帰、オープン戦では打率1割台と、今思うと開幕までの調整具合はいささか不安が残っていた。

 それを一気に払拭したのが開幕戦での豪快なアーチだ。1−1で迎えた5回2死から、サイスニード(ヤクルト)の甘いスライダーを逃さず一閃。打球は満員のレフトスタンド、敵地に詰めかけた竜党の中へ吸い込まれる勝ち越し弾となった。この一発で中田に心をつかまれたファンは多いだろう。

 2日後の同カードでもミゲル・ヤフーレの高め直球をしばき上げ、再びレフトスタンドへ本塁打。2本とも打った瞬間の当たりというのがたまらない。

 4月終了時点の本塁打は上記の2本のみだが、5月以降の量産に期待しよう。

■単独首位浮上ゲームで見せた勝負強さ

 ここまでの中日の大きな話題として、8年ぶりの単独首位が挙げられる。中田はその単独首位に浮上したゲームでも存在感を見せていた。4月9日のDeNA戦(横浜スタジアム)のことである。

 初回の好機で先制タイムリー、同点とされた直後の3回には決勝の2点タイムリー。チーム全ての得点を自らのバットで叩き出した。

 今季の中田に期待されるのは「打点」。打点王3度の実績が示すように、あと1点に泣かされ続けたチームの切り札として入団している。本人もそれを十分に理解しているようで、得点圏に走者がいる際は、意図的に右方向へ軽打を放つシーンが目立つ。豪快なだけでなく、場合によって打撃スタイルを変えられるところに技術の高さと勝負強さを感じる。

 4月中旬~下旬にかけて10試合以上打点がなかったが、29日のDeNA戦で久々のタイムリー。ここから再び「打点マシン」の本領発揮といきたい。

■卓越した一塁守備で内野陣を締める

 ゴールデン・グラブ賞5度を誇る一塁守備も中田の武器のひとつだ。

 とりわけハンドリングの柔らかさは絶品で、内野手はいくつ悪送球を救われたかわからない。

 特にショートバウンド、ハーフバウンドの難しい処理をいとも簡単に見せる。身体を目いっぱい伸ばして捕る時もあれば、捕手のように中腰にしゃがんで捕るなど、バリエーションが豊か。

中日の一塁手といえばダヤン・ビシエドもいるが、こちらは一、二塁間へのレンジの広さが持ち味。中田はまた違った安心感をもたらしてくれる。

 バント処理もお手のもの。4月24日の巨人戦(東京ドーム)、4回無死一、二塁から赤星優志の投手前バントを素早く処理。三塁フォースアウトに仕留めた。前進守備からのチャージ、打球処理、スローイング、どれも無駄のないプレーだった。

 今季は二遊間が流動的であったり、三塁も現状は外国人のオルランド・カリステが守ることが多い。中田の経験値が内野陣を引き締めることになりそうだ。

 4月が終わって全28試合中25試合に出場し、打率.283、2本塁打、12打点。まだまだ数字を伸ばしていける。ケガには留意しつつ、「中田翔ここにあり」を見せつけるシーズンになることを願ってやまない。

[文:尾張はじめ]