ネリを圧倒的なパフォーマンスで粉砕した井上。その戦いぶりは本場での声価も高めている。

(C)Takamoto TOKUHARA/CoCoKARAnext

 井上尚弥(大橋)の完勝劇は、日本のみならず、世界を興奮させた。

 5月6日、ボクシング世界スーパーバンタム級4団体統一王者の井上は、東京ドームで行われた同級4団体タイトルマッチで、WBC同級1位の挑戦者ルイス・ネリ(メキシコ)を6回1分22秒TKOで撃破。2年ぶりとなる防衛も成功した。

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 まさにエポックメーキングな展開だった。

 井上は初回に死角から飛んできた左フックを被弾。プロキャリア初ダウンを喫し、出鼻をくじかれたが、ここから“怪物”たる所以を見せる。

「ポイントを取りに行こう」と振舞った以降は冷静に推し進めると、2回と5回にそれぞれ左フックでダウンを奪取。そして6回に素早いコンビネーションから右ストレートを炸裂。すでにグロッキー状態寸前だった悪童をキャンバスに沈めた。

 ダウンを奪われてから試合を掌握した井上の支配力は、まさに圧巻の一語。そのパフォーマンスをボクシングの名伯楽も称賛する。

 数多の名手を手塩にかけてきたトレーナーのヴァージル・ハンター氏は、米ボクシング専門サイトYouTubeチャンネル『Fight Hype』で「ネリが眠れる巨人を目覚めさせ、その代償を支払った」と試合を回想。

初回の攻防について、29歳のメキシカンにシビアな意見を寄せている。

「ネリは本来すべき仕上げを怠った。彼はダウンを取った直後に無謀になり、チャンスを逃した。イノウエとの戦い方においてかなり無謀なアプローチをしていたと思う。彼はイノウエに多くの隙を与え、非常にクリーンなショットをたくさん打たれた」

 一方で結果的に格の違いを見せつけた王者については、「間違いなく、今のボクシング界を代表する稀有な選手の一人だ」と強調。そのうえで、試合前に一部で論争を巻き起こした井上の国外、ひいてはアメリカ進出に対する持論を展開している。

「イノウエは日本という国を背負っている。それなのに、なぜ、他の国で戦う必要があるんだ? 東京ドームに5万人(実際には4万3000人)を集められるなら、アメリカに行く必要はない。もしも、私が彼のマネージメントチームにいたとしたら、そういう見方をする。彼は誘うにはそれ相当の金がかかるんだ」

 このネリ戦での完勝により、“ボクシングの本場”でも声価を高めるに至った井上。その評価はもはや天井知らずだ。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]