戸郷が史上89人目となるノーヒットノーランを達成した(C)産経新聞社
圧巻のピッチングとなった。
巨人は5月24日に行われた阪神戦(甲子園)にエース、戸郷翔征が先発。
【動画】最後は三振で締めた!戸郷が史上89人目のノーヒットノーランを達成したシーン
9回二死二塁、異様な盛り上がりを見せる敵地甲子園、カウント1-2から中野拓夢に対してフォークを投じ、空振り三振に仕留めた。そこまで厳しい表情を崩さなかった右腕が破顔一笑、大きくガッツポーズを決めるとともに、バッテリーを組んだ岸田行倫と抱き合い、ナインと次々に笑顔で握手を行った。
チームにとっても大事な戦いだった。試合前まで引き分けをはさんで4連敗、交流戦前最後のカードを伝統の一戦で迎えるとあって、戸郷の力投が期待されたが、またとないピッチングを魅せた。
3回と5回に味方失策で出塁を許すも集中力を切らさずに投げぬいた。最速152キロの直球、フォーク、スライダーなどを交えて、阪神打線を封じ込めた。
中継(NHK-BS)で放送された勝利投手インタビューでは「最高です!」としながら、「6回終了時点であとアウト9個と思ってやってました」と試合終盤から意識を高めていたと話した。
巨人投手の甲子園でのノ―ヒットノーラン達成は1936年の沢村栄治以来と伝統の一戦に華を添える記録ともなった。
123球の熱投の裏には指揮官、阿部慎之助監督からの教えも生きた。5月3日に本拠地で行われた阪神戦。
6回は二死まで追い込むも2番の中野拓夢に1号ソロを許し、続く3番の森下翔太、4番の大山悠輔に連続四球を与えると、二死一、二塁の場面で代打で出た糸原健斗に右二塁適時打で1点を失う。
この交代の判断に関して、阿部監督は試合後に「大差があって四球。打たれていいケースだと思うんですけど、ちょっとだらしなかったので替えました」と語っている。
開幕戦を託すほど力を認める新エースとあって、さらなる成長を願った。今季は指揮官自らベンチで語りかけるシーンもあるなど、戸郷のさらなる飛躍こそ、V奪回の鍵を握ると見ている。
そしてこの試合で光ったのは、マスクをかぶった岸田のリードにもあった。ファーストストライクをしっかり奪い、投手有利なカウントで試合を組み立てた。1-0で迎えた9回。先頭の木浪聖也に四球を与え、続く小幡竜平が犠打を決め、一死二塁の形を作られる。
迎えたバッターは好打者、近本光司。
見守った阿部監督をして「泣きそうになった」と言わしめた魂の123球。戸郷が一つ大きな階段を上がった。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]