TBS系「日曜劇場」枠で放送中の福山雅治主演、大泉洋共演によるドラマ『ラストマン-全盲の捜査官-』が大きく動いた。今夜最終回を迎える本作は、先週の第9話と最終話で前後編と銘打たれていたが、真相を追うなかまさかの悲劇が起き、動揺収まらぬままに最後の放送日を迎えた。

41年前の事件の真犯人は誰なのか、福山演じる皆実広見と、大泉演じる護道心太朗の本当の関係とは……。最終回の放送を前に本作の魅力を振り返るとともに、真相を大胆に予想していきたい。

【写真】皆実(福山雅治)と心太朗(大泉洋)の行く末は? 『ラストマン』最終話場面カット

■福山雅治と大泉洋だからこそ生み出せたバディ

 本作は“全盲の人たらし”FBI捜査官・皆実広見を福山雅治が、逮捕のためには手段を選ばぬ孤高の刑事・護道心太朗を大泉洋が演じるバディもの。人を信じる男と、他人を信じず1人で生きてきた男が、真逆の凸凹コンビを組んで事件を解決していく。2人の共演は2010年の大河ドラマ『龍馬伝』(NHK総合)以来。何より、同じ事務所であるふたりの交流は深く、普段から大泉は“スター”福山のモノマネをテレビでもたびたび披露してきた。

 本作では、そうした大泉のモノマネを逆手にとったユーモアあふれる2人ならではのやりとりも盛り込まれ、「2人が共演する」との視聴者の期待を上回る、“スター”福山の空気を生かした人たらし皆実と、普段の大泉からのギャップを生かした闇を背負った“かっこいい”大泉を軸に、1話完結の完全オリジナルストーリーでグイグイ見せてきた。そのオリジナルストーリーを、これまでの日曜劇場でも『グランメゾン東京』『TOKYO MER~走る緊急救命室~』『マイファミリー』(すべてTBS系)と秀作を手掛けてきた脚本家の黒岩勉が紡いできた。

■事件当日その場にいたのは、皆実と皆実の両親、鎌田と…

 ここからは新しく出てきた情報とこれまでの展開から、真相を大胆に予測していく。

 まず、皆実と心太朗の2人は兄弟だろう。それも異父兄弟などではなく、両親が同じ兄弟。「心太朗の母は幼いころに亡くなり、詳しいことは知らない」ということだったが、それはあまりにも怪しい。
皆実の両親を殺した、強盗殺人の罪により無期懲役となった心太朗の実父・鎌田(津田健次郎)と皆実の母・勢津子(相武紗季)は、かつて同じ、政治家御用達の料亭で働いていた過去があった。しかし事件後に鎌田は勢津子とは「面識なし」だったと供述しており、何かを隠していることが窺える。

 考えるに、勢津子は大物政治家・弓塚敏也(石橋蓮司)の愛人との間に出来た娘であり、勢津子と鎌田との間に生まれたのが、心太朗だったとの線はどうだろう。勢津子を弓塚の愛人と考えることもできるが、彼女は弓塚の娘、つまり、心太朗は弓塚の孫という線を取りたい。鎌田との結婚を反対されていた勢津子は、子どもを鎌田に託したのではないだろうか。そしてその後、誠(要潤)と政略結婚した。

 41年前の事件当日。勢津子が刺されたペティナイフがテーブルに出されたままだったことから、彼女が刺されたのは、犯行予想時刻より前だった可能性が高い。皆実が嗅いだ匂いは、やはり弓塚のスーツだろう。誠は、弓塚の政治生命を揺るがす大きな「何か」をつかみ、ゆすりを掛けたのでは? そこでのひと悶着があったと同時に、地上げの件で、その場に鎌田が居合わせた。そして誠も、誠と結婚した時点で、実は勢津子は身ごもっていて、皆実が鎌田との子だったことを知ったのではないだろうか。つまり、勢津子を刺したのは誠。
事件現場には、誠、勢津子、鎌田と、弓塚がいた。

■弓塚はまだ大きな爆弾を抱えていそう

 誠が勢津子を刺したあと、誠と鎌田が皆実のもとに向かおうとして、階段でもみ合いになったのか。修羅場である…。でもだからこそ、弓塚は隠ぺいしようと護道家を呼んだのだろうか。というか、弓塚が隠そうとしたのは、娘や孫が絡んだ身内のごたごたではなく、誠がゆすりをかけた政治生命にかかわる「何か」のほうだったのかもしれない。

 鎌田が当初黙秘したのは、誠が勢津子を刺したことを言いたくないという、皆実のため? そして、突然犯行を認めたのは「心太朗を護道家が引き取って一生面倒をみる」と条件を出されたからか。護道清二(寺尾聡)が心太朗に向けてきた情は本物で、最終的には正義の人であってほしかったのだが、そうもいかないのだろうか。「何か」を追い続けている人であるとまだ信じたいのだが。

 そして、まっすぐだからこそ危なっかしいと思っていた泉(永瀬廉)。第9話のラストでの心停止には驚いたが、助かってくれると信じたい。ヤマケンさん(金田明夫)は、うそをついてきてしまったことの後悔を胸に(泉を刺してしまったことは、威嚇のナイフが刺さってしまった事故だろう)息を引き取るだろう。

■渡されるに違いない、“人を信じる”という最大のプレゼント

 黒岩脚本には、事件を描くとともに、そこに留まらないメッセージがある。
そもそも本作は、全盲の捜査官・皆実を主人公に据えることで、目に見えているもののその奥にある、本当に大切なことを浮かび上がらせてきた。そしてそこには、必ず人と人とのつながりがあった。

 最終話では心太朗に哀しい真実が待ち受けていると言われているが、考えを巡らせれば巡らせるほどに、皆実にも辛い真実が待っているように思えてしまう。しかしそこには、強固な絆を築き、また兄弟でもあった(これは全くの予想だが)バディが隣にいる。そして、全盲の人たらしは、「お別れする日が楽しみです」と毒づいていた兄弟に、41年前の真実とともに、“人を信じる”という最大のプレゼントを渡して、海の向こうに帰っていくのかもしれない。

 まあ、実際には、こんな予想などふっと軽く吹き飛ばす驚きのラストが待つだろう。しかしそこに、最強で最高のふたりの姿を見られることは間違いない。(文・望月ふみ)

 日曜劇場『ラストマン-全盲の捜査官-』最終回はTBS系にて25日21時放送(25分拡大)。

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