岡田麿里監督によるアニメ映画『アリスとテレスのまぼろし工場』公開記念舞台あいさつが16日都内にて行われ、岡田監督をはじめ、声優キャストの榎木淳弥上田麗奈、久野美咲、瀬戸康史、林遣都が登場。監督は「何十年先もアニメを作っていたい!!」と“将来の夢”を明かし、会場を沸かせた。



【写真】瀬戸康史、林遣都も登場! 登壇者が“将来の夢”を発表

 本作は、『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』の脚本家であり、監督デビュー作『さよならの朝に約束の花をかざろう』で国内外から高い評価を得た岡田麿里の監督2作目。数々のヒット作を手がけるスタジオMAPPA初のオリジナル劇場アニメーション作品。

 主人公・菊入正宗役を榎木淳弥、正宗の同級生・佐上睦実役を上田麗奈、謎の少女・五実役を久野美咲が演じ、瀬戸康史、林遣都も声優出演。中島みゆきが初のアニメーション映画への書き下ろし楽曲「心音(しんおん)」を主題歌として提供した。

 榎木、上田、久野が感謝の想いを込めたあいさつをする中、瀬戸は「岡田麿里監督、MAPPAさんありがとうございます。
声優デビューでございます!」と喜びを口にし、会場から祝福の拍手が沸き起こった。林は「監督公開おめでとうございます! 皆さんおめでとうございます! 観客皆さんの食い気味の拍手から、すごい映画なんだなと確信しました」と観客の熱量の高さに驚きを隠せない様子。岡田監督は「3ヵ月前には完成すると思っていなかったので、本当にいま、“まぼろし”感がすごい。感動しています」と話した。

 演じた役柄について、葛藤を抱える正宗を演じた榎木は、「時が止まってしまって、変わってはいけないという設定はファンタジーだが、現実世界でも押さえつけられる場面って学校や社会とかでもあると思う。僕も違うことをやりたくても『同じようにしろ』と言われたことがある」と共感し、「正宗はこの世界のどこかにいそうな人物像、リアリティがある」とコメント。


 自らを嘘つきな狼少女と称している睦実を演じた上田も「私も14歳だったころ、自分の本当の気持ちを出せなかった。嫌われるのがイヤで」と共通点を明かし、そんな睦実の魅力を「周りからみたらミステリアスと思われる、無駄なアンニュイさを出しているけれども、出そうと思って出していないところ」と語った。

 久野が演じた五実の、感情を爆発させ泣き叫ぶシーンがSNSでも話題となっているが、そのシーンについて「五実は純真無垢で世界のことを何も知らなくて、真っ白な状態の女の子。でも、正宗や睦実とかかわることで心が動き出して、変わっていく表現を心掛けた。泣き叫ぶシーンは感情が一番爆発するシーン。初めての経験をしてどうしたらいいのか分からない葛藤、どうしようもない気持ちを込めて叫んだ」と収録を振り返った。


 かねてからアニメファンであることを公言している瀬戸は「声優陣の皆さんがしゃべるたび、“あの声だ”とワクワクする! 客席に座りたいくらい!」と声を弾ませるも、声優に初挑戦したことについては「逆に僕で大丈夫なのかと…皆さんがどんな反応をするのかドキドキしている…」と不安げな様子に。そんな瀬戸を岡田監督は「大丈夫です!」と太鼓判を押し、林も「瀬戸さんすごいなって思った」と称賛。観客からも割れんばかりの拍手が贈られた。これに安堵したのか瀬戸は、「前向きに声優のお仕事やっていきたい。MAPPAさん、宜しくお願いいたします!(笑)」と茶目っ気たっぷりな笑顔を見せアピールした。

 正宗の叔父である時宗を演じた林は、「まだ全部の画が見えていない状況で演じるのは難しかった」と苦労を明かし、時宗の魅力を「守りたいもののために自分を犠牲にしているところ」と語った。


 そんな声優陣に岡田監督は特に細かいディレクションはしなかったという。「キャラクターを作る上で、皆さんの演技を画に活かしたいと思った。皆さんには思うようにやっていただいて、そのパワーにスタッフが影響を受けて、それをまた画にして、とキャッチボールできたらいいなと。刺激がある演技をしていただいて感謝している。声をやっていただいたというより、皆さんには一緒にキャラクターを生み出していただいた」と声優陣のパワーみなぎる演技に感謝しきりだった。

 さらに、劇中で、いつか元に戻れる時のために「何も変えないようにする」という町のルールがあり、変化していないことを確認するために人間関係や趣味、性格、将来の夢などを書く「自分確認票」が登場することにちなみ、お互いの“将来の夢”を発表することに。


 榎木は「どれだけ社会的に成功しても孤独死は嫌」という理由で「家族に囲まれて死ぬこと」と発表。続く上田も「猫ちゃんと一緒になるべくハッピーに暮らす」と愛猫への愛を爆発させ、久野も「毎日笑顔でのんびり暮らすこと」とほっこりしたかわいらしい回答をみせ、会場はにこやかな空気に。すると瀬戸が3人の夢をひっくるめたかのように「幸せに暮らす」と発表し、会場の笑いを誘った。

 そんな中、少し気まずそうに林が「リニア中央新幹線に乗りたい」と関西出身らしい、少年のような夢を発表すると、会場からはさらなる笑いが巻き起こった。最後に岡田監督が「何十年先もアニメを作っていたい!!」と発表、岡田監督のさらなる作品を望むキャスト・観客らから大きな拍手が贈られた。

 最後に、観客に向けて岡田監督は「喜びも苦しみも全部『アリスとテレスのまぼろし工場』の中にある数年でした。
皆さんに観てもらえて嬉しく思っています。一緒に作品を作ってきた人たちとまた新しい夢をみて、皆さんに観ていただけたら嬉しいです」と感謝の気持ちを込めたメッセージを贈り、イベントは幕を閉じた。

 アニメ映画『アリスとテレスのまぼろし工場』は公開中。