ドラマ、映画、舞台とさまざまな作品で、そこに生きる男女の生き様が描かれてきた『大奥』。これまで菅野美穂池脇千鶴安達祐実浅野ゆう子松下由樹ら名だたる女優陣が彩ってきたフジテレビ版『大奥』が約20年ぶりに甦る。

“愛”をテーマにした、『大奥』史上最も切なく美しいラブストーリーとうたう本作に主演する小芝風花が、大役を前に作品に懸ける思いを明かした。

【写真】公家の生まれの姫君役がぴったり!な小芝風花 和服姿の全身ショット

◆人物像や背景がしっかり深掘りされた「まったく新しい大奥」

 さまざまな人間の思惑、嫉妬、憎悪、悲哀が渦巻く“女の社会の縮図=大奥”で、天下人の寵愛を受けようともがく女たちの熾烈な戦いとその裏にある陰謀を描く本作。江戸中期、第10代将軍・徳川家治との政略結婚を強いられ、京から江戸城へと渡ってきた公家の娘・五十宮倫子を演じる小芝を中心に、亀梨和也西野七瀬森川葵宮舘涼太ら豪華キャストがその世界観に体当たりする。

 フジテレビ制作ドラマ初主演となる小芝は、「嫉妬、妬み、嫉み、陰謀…。とにかく人間のドロドロとしたものがギュッと詰め込まれているイメージ」だった『大奥』への出演オファーに、「携われるっていうことが率直にうれしくて! しかも、京都で全部ロケをするので、どっぷり浸れるなんて、怖さ半分、うれしさ半分」と笑う。
 
 これまでさまざまな女優が視聴者を魅了してきた作品ということもあり、プレッシャーも感じているという。過去作を見返すことも考えたそうだが「変に意識したり、引っ張られたらもったいないかも」と振り返らずに挑むことに決めた。「まったく意識しないのは無理かもしれないですけど、あまり気にしすぎず、今回のスタッフ、キャストだからこそ作れる、新しい大奥を作れたらいいなと思っています」。

 「妬みや足の引っ張り合い、ドロドロした部分はもちろんあるんですけど、すごく胸が苦しくなるような」台本に惹き込まれているそうで、「物語が進むにつれて、いろいろな人の人物像が深掘りされていく。そこを丁寧に描いてくださっているので、それぞれの役に愛情を持てるというか、大奥で生きていくためにはこうなるしかなかったんだなという背景がしっかり描かれていて面白いです」と笑顔。

 演じる倫子の印象を尋ねると、「本当に強い人です。大奥ってそれこそ足の引っ張り合いがある中で、自分はそっち側に染まらないという意志をすごく強く持っている」との答えが。
「いろんな意地悪をされても、みんながこの大奥で生きやすくするにはどうしたらいいんだろうと考えられる女性。その真っすぐさが大奥にいる人たちにとっては余計に腹立たしくて、よりターゲットになるんですけど、それでもブレないからこそ、家治さんが真っすぐ愛してくれる人なんだろうなと思いました」と、小芝自身も倫子役に愛情を持って向き合っているようだ。

◆時代劇の「リアルと非現実とが混ざっている感じ」が好き

 政略結婚相手・徳川家治を演じる亀梨和也とは、2015年放送のドラマ『セカンド・ラブ』以来の共演。「家治は誰にも言えない秘密を抱えていて、すごく葛藤があるんです。その苦悩している姿や、倫子と出会って信頼し恋が芽生えていく心情の変化をどんな感じで演じてくださるんだろうとすごく楽しみです」と久々の共演に胸が高まっている。

 倫子と共に京から大奥に乗り込み、バディ的存在として倫子を支えるお品役・西野七瀬については、「同じ関西人ということですごく居心地がいいというか、接しやすい感じがあるので、いろいろと相談しながら倫子とお品の信頼関係を作りたいです」と話す。座長として「演者もスタッフも含めてみんなで楽しくいい作品を作れるようにしたいというのがあるので、ギスギスした世界を描く作品ですけど裏では関係なく、“ここはもっとこうしたら面白くなるんじゃないか”と仲良くコミュニケーションを取りながら、作っていけたらいいなと思っています」。

 時代劇は「非現実と現実のはざまの感じがしている」と語る小芝。「現代の若い人たちが見ると、ちょっと難しそうと思われるかもしれない非現実感もあるんですけど、恋心や嫉妬もそうですし、世の中に起こっていることというのは現代と全然変わらない」と思いを明かす。「手をつないで歩くのだって、昔はできないじゃないですか。だから、現代の人が手をつなぐドキドキと、昔の人が手をつなぐドキドキってまた全然意味が違ったりする。そんな時代劇ならではのトキメキもあるし、でもやっぱり人を思う気持ちや感情は昔と今も全然変わらないとも思うので、そのリアルと非現実とが混ざっている感じが個人的にはすごく好きです」とにっこり。


 『大奥』といえば、絢爛豪華な衣装やセットにも注目が集まる。「今回も華やかです。倫子は公家の生まれなので、公家らしい柄のお着物から大奥に入りどんどん煌びやかなものに変わっていったりと、衣装さんがこだわって選んでくださっています」と笑顔を見せるが、「とにかく重くて(苦笑)。打掛けはお布団を被ってるくらい分厚いし、腕も筋肉痛になるくらい重かったです。鬘にも飾りをたくさんつけるので頭もすごく重くて、別の時代劇に携わらせていただいていることもあって、同じ時代でも生まれによってこんなに装いが違うんだと、すごく感じました」と明かした。

◆『大奥』で4クール続けての連ドラ出演 2023年は「いろんなところで戦っていた1年」

 2023年の小芝は、『ぐるナイ』の“ゴチ”メンバーに抜擢された1月に始まり、4月期『波よ聞いてくれ』で主演、7月期『転職の魔王様』でヒロイン、10月期『フェルマーの料理』でヒロイン、『あきない世傳 金と銀』で時代劇挑戦とフル回転な活躍を見せた。そんな1年について小芝は、「戦ったなっていう1年でした。“ゴチ”も物理的に戦って(笑)。今まで演じたことのなかった役柄に挑戦させていただいたっていうのもありますし、いろんなところで戦っていた1年だったなって」と振り返る。「スケジュールの面でも、マネージャーさんが『はまんない、はまんない』って言って戦ってました(笑)」。

 戦った1年になったのは、特に意識してそうしたわけではないそう。「作品って巡り合わせもあって。
『波よ聞いてくれ』が特にそうなんですけど、プロデューサーさんとは4度目なんです。そのご縁もあって『この作品に挑戦したい』というお話を頂いた時には、役柄が自分とはあまりに違いすぎて最初は不安しかなくて。ただ、今までになかった作品に挑戦させていただけるというのはたぶん、信頼関係とかこれまで違う作品で築き上げてきたものもあるから、これは真正面からぶつかって頑張るしかないなと、自分の殻を破る戦いでもありました」と振り返る。

 「連続ドラマの出演が続くのはありがたいんですけど、その分、撮影と次の作品の準備とが重なって、もっと集中して丁寧にやりたいなっていう葛藤や、それでも役を頂けるのはありがたいので、なんとかどの作品も全力を注げるようにっていう戦いでもあった」といい、「26歳にもなりましたし、いつまでも頼っていてはいけない部分もあるから、気持ちの面でも強く生きていかなきゃいけないっていうことをすごく実感した年でした」と告白する。

 そんな1年を経験し成長した2024年は『大奥』で幕を開ける。「女同士でまた戦ってますね」と笑いつつ、新年は「健康第一にひとつひとつの作品を頑張っていきたいです。とにかくお仕事を全力で楽しみながらできるように、普段の生活、オフの時の気の緩め方だったり、オンとオフの調整を上手くできるようにしないと体が持たないなというのもあるので、甘やかすところは自分を甘やかして、万全の体調でお仕事に臨めたらなって思ってます」と変わらぬ前向きさを見せる。

 冬の京都での撮影は大変そうと言葉をかけると「みんなに言われます(笑)。寒さには弱いですが、姫なのでいっぱい着せてもらえるので、それはよかったなって」と笑う小芝。「いろんな共演者の方に『京都に行くんですけど、おいしいごはん屋さん知ってますか?』っていっぱい聞いてます。インスタやグルメサイトでもいっぱい調べて印をつけています(笑)。御朱印帳も買ったんです! 空き時間に回れたらいいな」。
演じる倫子同様、戦いの時を経て強くなった小芝が、どんな新しく切ない『大奥』を見せてくれるか、注目したい。(取材・文:編集部 写真:高野広美)

 『大奥』は、フジテレビ系にて2024年1月18日より毎週木曜22時放送(初回75分スペシャル)。

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