いつか会社を辞めて、悠々自適に海外旅行をしたい。そう考えている人も多いだろう。

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YouTuberの無職旅さん(49歳)は、チェコやウズベキスタン、ベトナムなど全世界を旅してまわり、ご当地グルメを自由気ままに楽しむ動画を発信している。庶民的な様子が人気を集め、チャンネル登録者数は15万人超。以前は大手企業に正社員として勤めていたという彼に、話を聞いた。

入社7年目で「旅に出るために、会社を退職」

大手企業を辞めて30代で無職に。デイトレードで大失敗「あいつの人生どうなる?」からYouTubeに見出した活路
卒業旅行でタイのほか、カンボジアにも足を運んだ
——初めて海外に行ったのはいつでしたか。

無職旅さん(以下、同):大学の卒業旅行で、タイとカンボジアにバックパッカーとして行きました。そのときに世界中を旅している人たちに出会ったんです。半年から1年くらいかけて旅をする彼らを見て、「いつか僕も長旅をしたいな」と思いながらも、帰国してからはエンジニアとして、一般企業に就職しました。

当時は仕事も楽しかったし、いい会社だと思っていたから、その「いつか」は訪れないまま、7年が過ぎて、32歳になりました。

——そこで会社を辞めるきっかけが訪れたのですね。

異動の辞令をもらったんですが、どうしても納得がいかなくて……。その頃の会社の方針にも疑問を持っていました。入社前から「いつか辞めて旅に出る」と思っていたので、タイミング的に今だ!と思って、2009年4月に退職しました。

——会社から引き止められたのではないですか。


事情をよく知る方たちからは「ついに旅に出るのか」という応援や期待の声が多かったです。「ほとぼりが冷めたらまた雇ってあげるから、戻っておいで」と言ってくれた方もいました。

——ご家族やご友人の反応はいかがでしたか。

実は入社後に、両親には嘘をついていたんです。仕事が楽しくても「しんどい」と話して、「辞めてもしょうがない」という空気を作っていました(笑)

友人からは「いい会社に入ったのに、もったいない」「思い切ったね。人生どうするの?」と。実際に悩んだのは、会社を辞めてから4~5年が経ったときでした。

退職後に「デイトレードで稼ごうとして大失敗」

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アルメニアにて
——具体的にはどんなことですか。

会社にいたときはチームで働いたり、社員食堂でご飯を食べたりしながら、他人とおしゃべりができました。通勤やオフィスがあることでメリハリのある生活もできる。会社を辞めてから、それが意外と大事だったんだなと。今でも「仕事とは別にコミュニティに属したい」という思いはあります。

あとは、社会の役に立っていないことにモヤモヤしていました。


——それはどうやって払拭しましたか。

会社で働いていたときは、目に見える人に喜んでもらえるようにしていましたが、辞めてからは対象が誰も見えなくなって。ただ、2017年にYouTubeを始めてからは、動画を配信することで、多くの人に見てもらって、その人たちに喜んでもらうことができる。別のかたちで社会の役に立てる、と。

——YouTubeを始める前は、資金繰りをどうしていたか気になります。

会社を辞めてから数年は、全く稼ぎがありませんでした。デイトレードで食っていこうと思って、かなり本気で取り組んだけど、それなりの金額を溶かしてしまって……。2012年くらいに、自分に運も実力もないことに気づいて辞めました。

2016年に「いよいよこのままだと、旅を続けられない」と思っていたら、フリーランスのエンジニアとして、ちょうど知り合いから仕事をもらえたので、なんとか食いつなげました。

YouTube を始めてからは、エンジニアとしての仕事はほとんどしていません。はじめての海外旅行が大学のバックパッカーだったこともあって、そもそも旅といってもめちゃくちゃお金を使うタイプでもないですしね。

タイの屋台で食あたり「時間の感覚を失った」

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タイで食中毒になり寝込んでいたとき
——YouTubeでも、屋台で食べられている動画が多いですね。

屋台や大衆食堂が多いですね。
でも腹が膨れればいい、というわけじゃなくて、やっぱり名物とか美味しいものを食べたいじゃないですか。なのでいいお店にもたまに行ったりします。僕なりに、食事はわりとお金をかけているつもりです。

反対に、移動と宿泊にはお金をかけないようにしています。移動は目的地に着けばいいし、宿泊は寝られればいい(笑)。

——ローカルな場所だと、言葉の壁がありそうです。

僕はみなさんが期待しているほどの英語力がないんです。言葉が通じなくてもどうにかなるスキルばかり身につけてしまって、英語力そのものは全く伸びないままなので。語学の資格は英検4級だけ(笑)。

ただ、日本国内を旅行するときでも、言葉は通じるけどスムーズにいかないことってありますよね。言葉は旅のスキルとして、本質的じゃない。

たとえば食堂では、誰かが食べているのを指差して「あれちょうだい」で大丈夫なんです。
でもアルメニアの田舎へ行ったときは、周りにお客さんが誰もいませんでした。

——どう対応されたのですか?

厨房に入れさせてもらって、冷蔵庫を見て、パスタ麺とトマトがあったから「これで作ってくれ」と、身振り手振りで説明しました。

こういう場合は英語でもなくて、日本語を話しながら説明します。母国語を話しているときって、自然と言葉の内容と同じような表情になるんですよ。なので意外と意思疎通できちゃいます。

これを英語で話してしまうと、言葉を出すことに一生懸命になってしまって、雰囲気がついてこない。ジェスチャーも国によっては失礼なものはありますが、胸に手を当てるものはどの世界も共通して丁寧みたいなので、よく使っています。

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アルメニアの厨房
——食あたりなどのトラブルはありましたか?

3回あって、特に印象に残ってるのはタイの屋台です。嘔吐下痢に加えて、頭もぼーっとしてしまって。ふらふらになりながらコンビニに行って、カップラーメンを買ったんです。「宿までちょうど3分あるから、宿に着いたら食べよう」と思って。

そうしたら、いつまでたっても宿に着かない。
実は宿に着くまで15分で、3分なのは宿に着いてから階段を上がるまで。時間の感覚もなくなっていました。

——やばそうな屋台と、そうじゃない屋台の見分け方はありますか。

お客さんがあまりいない屋台は、前に作ったものがずっと置かれているので危ないですね。なるべく、にぎわっている屋台を選ぶようにしています。

上海のバーでぼったくられても「旅は楽しい」

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上海の警察署
——他にも印象に残っているトラブルを教えてください。

シルクロードを横断し終えて、いよいよ帰国する夜のことでした。上海にいて、ちょっと女のコがいるお店に行ってみようかな?と思ったんです。

そこで繁華街の客引きについていったら、ビール一杯でお会計が1万9000元、日本円で約24万7000円でした。

——ぼったくりバーですね……。

全く関係ない空のグラスを大量に持ってきたり、そもそも明細すら無かったりして、騙すというよりも強引に高額にしてきた感じですね。抵抗したけど、出口のドアの前で通せんぼをされて、仕方なくいったん払う事にしました。


ちなみに、繁華街の大通りに面してるお店だったので、もし何かあっても後で対応できるかなと思って入店しました。でもまさか本当にトラブルが起きるとは(笑)

翌日に領事館と警察署に行き、場所と事情を詳細に説明したら、警察官が店長を引っ張ってきてくれて、その場で返してもらえました。

——無職旅を続けるなかで、価値観は変わりましたか。

はじめは、ひと通り行ったら満足するかな、と思っていたんです。2年くらいして旅を終えたら、また会社員に戻るのかもな、とか。でも全くそんなことはなくて、まだまだ旅を続けたい。1回じゃ飽き足らず、5~6回行っている都市もあります。

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プラハ城
——6回はすごいですね。住むという選択はしないのですか?

今は実家に住んでいて、両親の介護があるので、家を長期間あけることができません。あとは、旅行者だから楽しめている部分もありますよね。住んでみると嫌なところとか、汚いところも見えてくるじゃないですか。

それに、1週間くらいしたら、また旅に出たくなって、結局はそこを拠点にして、色々と旅をしている気がします。チェコのプラハは大好きなので、いつか数ヶ月は滞在してみたいですね。

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チェコ・パビリオンにて
——チェコは親善アンバサダーもやられていますね。

オフィシャルでやらせていただいてます。2025年の大阪万博でも、チェコ・パビリオンで8回公演をさせてもらったんです。

会社を辞めたばかりのときは、まさかそんな未来がくるなんて想像できませんでした。周りからも「あいつの人生はどうなるんだろう」と思われていて、大丈夫だと説明できなかった。それでもなんとか、形になってきたような気がします。

あんまり教訓めいたことは言いたくないですが、これからも「旅は楽しいよ」ということは、身をもって伝えていきたいですね。

<取材・文/綾部まと>

【綾部まと】
ライター、作家。主に金融や恋愛について執筆。メガバンク法人営業・経済メディアで働いた経験から、金融女子の観点で記事を寄稿。趣味はサウナ。X(旧Twitter):@yel_ranunculus、note:@happymother
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