日本でも大ヒットを記録したフランス映画『最強のふたり』。すべてが正反対の二人の男がぶつかり合いながらもかけがえのない友情を育んでいく姿が感動を呼んだ物語がこの春、日本オリジナル・ミュージカルとしてよみがえる。

主人公二人には、川平慈英浦井健治と最強のキャスティングが実現。ハッピーエナジーがあふれているという稽古場で、本作の魅力をたっぷり語ってもらった。

【写真】『ビッグ・フィッシュ』共演で紡いだ絆は健在!“じぇいけん”川平慈英&浦井健治、仲良し2ショット

◆プロフェッショナルなキャスト&スタッフが部活のように楽しむ稽古場

――日本発のオリジナル・ミュージカルとなる『最強のふたり』。お話を聞かれた時のお気持ちはいかがでしたか?

浦井:まず川平慈英さんと浦井で何かやろうというところから始まって。

川平:“じぇいけん”でね!

浦井:“じぇいけん”で(笑)。何をやろうかという話になった時に、慈英さんが何作品かを挙げてくださった中にこの『最強のふたり』という映画があったんです。

川平:あの映画には強烈な印象がありましたからね。賞も総なめでしたし。

浦井:世界的にヒットした映画を日本オリジナルでミュージカル化しよう!と、演出を板垣(恭一)さん、楽曲は桑原(あい)さん、と素晴らしい方たちと一緒に作っていけることが決まって、めちゃくちゃうれしかったです。

『ビッグ・フィッシュ』でご一緒した慈英さんと今回またタッグを組ませていただけるのを光栄に思いつつ、やはり現場に入るとエンターテイナーとしてトップ中のトップなので、稽古場に来るだけでみんなが幸せな気持ちになり、なんか笑ってしまって、でも涙もあって。川平慈英さんの世界観に触れてみんながハッピーになる、パワースポットのような方だと改めて思いました。

川平:屋久島の大杉みたいな(笑)。


浦井:みんなが幸せな気持ちになるんですよね。

映画の通りだと、僕が介護人に応募してくる若いドリス、慈英さんが車いす生活の大富豪・フィリップなんでしょうけど、本作では慈英さんがドリス、僕がフィリップを演じるんです。

川平:映画を踏襲するなら僕がフィリップで、健ちゃん(浦井)がドリスだよね。

浦井:板垣さんの逆転の発想からの配役ですが、いざ稽古に入ると本当にその通りで、「もうこれしかないでしょう!」っていう役の適材適所感がすごくあります。

――川平さんはいかがですか?

川平:稽古場にいる時間が楽しいですね。朝起きて、「お!今日も楽しい日が来るぞ!」って思える。キャストもスタッフもみんながお互いをリスペクトしてやっていてね。みんなプロフェッショナルなんですよね。

板垣さんが現場を遊び場みたいに作ってくれるんです。どんなサイコロを出してもOK。若手も萎縮しがちなところなんですけど本当に羽ばたいて、楽しくやっています。僕も沖縄の三男坊の気質なのかなぁ、相手を驚かせたい、笑わせたいっていうのがあって、板垣さんが僕を泳がせてくれるので毎回違う引き出し、違うサイコロを振ってみんなを困らせて笑わせています。


プロフェッショナルな集まりなんですけど、部活に来てるような感じ! プロが部活に来て楽しい仲間と楽しいことをやって、グラウンドで一生懸命もがきながらも笑っている。プロフェッショナルがはしゃいで、自分を突き詰めて追い込んで楽しさを求め合っているような現場ですね。

――お二人はもちろんですけど、紅ゆずるさん、宮原浩暢さん、小野塚勇人さんとエネルギーに満ちた皆さんがそろわれています。

浦井:ハッピーで、すごく人が好きな人が集まっていますね。特に板垣さんと慈英さんが誰よりもその空間を楽しんでいる。

川平:全員が味方で、お互い肩をぶつけ合い笑いながらゴールに向かっているっていう感じだよね。

浦井:みんなゴールがちゃんと見えていて、そんな中で慈英さんがいろんな引き出しを出してくるんですけど、役がどう見えるかがわかった上でのことだとみんながわかっている。しかもそれを突拍子もないところから出してくるので、すごく刺激にも勉強にもなります。

川平:いっぱい間違えるのが一番いいことなんじゃないかと思うんです。成功体験も絶対必要なんですけど、「あそこで間違えたのって、ここでああだったから間違えたんだ」と、その記憶が残るので。いっぱい間違えていいから、萎縮しないっていうのが大事だよね。

浦井:演出家からも間違えたところから新しい目線が得られるのが稽古だって聞きますもんね。


今回は少人数体制だからみんな1人何役もやっているのですが、それがまたエネルギーになって、支え合って、作品で描かれる絆や家族愛のように、すごく贅沢な瞬間が生まれているのを感じています。

◆フィリップとドリスの年齢設定を逆にすることで生まれた化学反応

――日本発信のオリジナル・ミュージカルで、世界初演となりますが、今後世界で上演される可能性も十分あります。

川平:フランス大使を招待して観てもらわないと! フランス公演なんかできないかなぁ。

浦井:行きたいだけですよね(笑)。

川平:別にフランスじゃなくても、韓国やハワイでもいいので、みんなで飛行機に乗ってどこかに行きたい(笑)。

浦井:家族についていろんな国の方が共感できる部分がある素敵な作品になっているので、世界中の方に観ていただきたいです。

韓国ミュージカルがトニー賞を獲りましたが、我々も日本オリジナル・ミュージカルを世界に発展させたいという目標がありますね。

川平:スポーツ界もそうですけど、アジアだから世界に出られないというような垣根はもう全くなくなってきましたよね。『最強のふたり』も日本ミュージカルのエポックメイキングみたいな舞台になればすごくうれしいです。

――今回演じられるフィリップとドリスの印象はいかがですか?

浦井:デビューしてから25年、車いすでの演技は初めてです。フィリップは全身麻痺で首から上と右手の先だけが動く。歌唱シーンもあるのでちょっと演劇的なところはありますけど、失礼のないようにというのが大前提で。
人生の中で介護や生死に向き合うことって必ず訪れるので、失礼のないように演じなきゃいけないなって思っています。

――ドリス役はいかがですか?

川平:ちょっと今心配しているのは、役作りがあまりにも川平慈英になっているんじゃないかと。役者仲間が観に来たら、「自分をやってるだけだろ。役作りじゃないじゃん!」って言われるのではないかというのが心配事のNo.1です(笑)。

実はドリスは負の部分、ダークサイドもあるんです。家族の関係が破綻していて、ある意味自分の生き方も破綻していて、服役経験もある。でも陽な部分が強ければ強いほど、逆に負のシーンがより色濃くなるんじゃないか、自分らしくやればやるほど息子とのシーンでのクラッシュが強くなるんじゃないかとも思うので、思いっきり“川平慈英節”を出しまくりたいと思っています。

浦井:慈英さんは稽古に入る前に、映画をぎゅっと落とし込んだミュージカルにするためにドリスの深掘りを提案していらして。ドリスはこうだからとすべて解釈されて、家族愛のシーンを増やしほしいと。そういう先輩ってやっぱりすごいなって思いました。

川平:今回映画とは逆の設定で、ドリスが60手前の悪戦苦闘している陽気なおじさんである意義のあるシーンをもうちょっと作ってほしいと提案したら、息子との葛藤シーンを膨らませてくださった。

エリザというフィリップの養子の生意気な娘に「人生悪くないよ」って言うのもおっさんドリスだからこそ成り立ちましたし、年齢が逆転した設定はやりやすいですね。


浦井:フィリップもドリスと親として共感し合って、そこでもふたりを繋いでいたんだという、書かれていないところのリンクが浮き出てくる。年齢が逆転しているから、実はフィリップに対してもドリスが背中で見せて教えているという、そこも家族になっているのがとても深いと感じました。慈英さんの提案から化学反応が起きて、ミュージカルバージョンとして戯曲が深みを増していっていると感じてます。

――映画のファンの方も別の『最強のふたり』を楽しめるというか、また新しい作品としても受け取れそうな感じがあります。

川平:映画ファンの方は懐疑的に観に来るかと思うんです。「なんで逆転させる意味があったんだろう?」って。でも観てみたら「これは新しい解釈で面白い」となるんじゃないかな。あの映画を知っている人は2度旨味があるんじゃないかなと思います。

浦井:フィリップとドリスは実在していて、映画の最後には現在の姿が写真で映るんですけど、お二人の若々しさや友情関係みたいなものが僕には逆転して見えたんですよね。今回それを体現できるんじゃないかなと思っています。

――最後に作品を楽しみにされている皆さんへメッセージをお願いします。

浦井:川平慈英さん、そしてこのカンパニーが「人生っていいな!」ってみんなで共有しあっている感じがしますし、自分もそこで浄化されている感覚があります。
問題はいっぱいあるけれど、「ケ・セラ・セラ」って言っていこうと。

「風になろう」という曲があるのですが、板垣さんが「それは対相手じゃなくてお客様に届けたいんだ。そういうシーンになるよう僕は演出の中で心がけるんだ」とおっしゃっていました。今の時代に「風になろう」ということを伝えるのはどういうことなんだろう?と楽しんで観ていただけたらと思います。

川平:皆さんにも僕たちと一緒に劇場で、ハッピーエナジーに満たされたこの『最強のふたり』、最強のキャスト、最強の音楽を楽しんでいただいて、みんなでハッピーになりましょう! ぜひお待ちしています。

(取材・文:近藤ユウヒ 写真:上野留加)

 ミュージカル『最強のふたり』は、5月1日~10日東京・ヒューリックホール東京、5月14日~17日大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール、5月21日愛知・御園座にて上演。

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