NHK連続テレビ小説『マッサン』の好演も記憶に新しい玉山鉄二が、WOWOWの『連続ドラマW 誤断』で、まったく違う世界に飛び込む。製薬会社の隠ぺい問題を描く、社会派ヒューマンサスペンスだ。
脚本は『マッサン』の羽原大介。「またやりましょうね、とは話していたんですけど、今回の作家が羽原さんだと聞いて正直、『え、早くね?』と思いました」と笑いながら話す玉山が、骨太に仕上がった作品への思いを吐露した。

【関連】『連続ドラマW 誤断』場面写真<ギャラリー>

 「この時代だからこその“えぐみ”が感じ取れる題材です。10年前、20年前だったらピンとこなかったかもしれない。今だから観ていただく方にも突き刺さる作品になっていると思います」と玉山。羽原とのタッグについても触れた。

 「羽原さんとは3度目なんですけど(『マッサン』、映画『綱引いちゃった!』)、人情味だったり、日本のよき姿を表現するのがとても上手な脚本家さんなので、今回のような毒々しい企業もの、社会派ものを書くとどうなるのか、まったく想像がつかなくて楽しみでしたね」。玉山扮する主人公の槙田は、製薬会社の副社長の安城(小林薫)から不祥事の隠ぺいを指示され、登場人物おのおのが信じる正義の狭間に溺れていく。

 槙田の立場を玉山はこう分析する。「普通に生活していたら目にしなかったものを見てしまった。知ってしまったがゆえに、その人の生活や考え方が一変する出来事って僕はあると思うんです。たとえば、ひとりの記者がある事件と出会って、その記者の残りの人生が、それ一色になることはあると思う。
だから僕は、槙田がさまざまな事実を知ったときのリアクションを大事にしたかった」。そのため、過去の事件についても調べた。「実際に日本でも過去に起きた出来事を調べて、このドラマの製薬会社の隠ぺいがどれだけ大きな問題なのかということを、意識できるようにしました」。 副社長を演じる小林は、玉山がずっと共演したいと願っていた相手だった。「ふとしたときに、『あ、小林薫だ』と改めて思う瞬間がありましたね(笑)。これは台本を読んでいた段階では感じ取れなかった部分なのですが、特に1、2話あたりで副社長から特命を言い渡されるシーンで、僕は副社長の話をずっと聞いているんですけど、セリフを聞いているうちにだんだん洗脳されていくような気分になったんです。そういう感覚に陥るとは予期していなかったし、びっくりしました」。

 『マッサン』は自信につながったと話す玉山だが、それでも現場に入る際の緊張感は消えないという。「今回を含め、どの現場へ行くにも毎回、緊張します。特に大切なシーンは、怖くて怖くて現場に行きたくないと思うことさえあります。子供もいますし、おじいちゃんになってもこの仕事の第一線で頑張りたいと思っていますが、演じる際の怖さは常にあります。もっともっと自分の自信になるような作品を増やしていかなきゃと思うし、そういう積み重ねでしか僕のこの臆病な部分は解消されないでしょうね」。


 自らを臆病と称した玉山。だが怖いというのは、それだけ玉山が作品に、役柄に深く真摯に向き合っているからに他ならない。臆病であり続けることの強さ。役者・玉山鉄二が感じる“怖さ”は、きっと消えることがないだろう。(取材・文:望月ふみ)

 日曜オリジナルドラマ『連続ドラマW 誤断』は、WOWOWにて11月22日(日)22時スタート。第一話無料放送
編集部おすすめ