「もう準備できましたが、よろしければ」と予定時間より早く取材現場に現れた神木隆之介。物腰の柔らかさ、礼儀正しさも含めて「さすが神木君!」と思わず取材スタッフたちがつぶやいた「デキる人」。
【写真】現在28歳 若きベテラン俳優・神木隆之介の素顔
プライベートでも日頃から撮影のイメージをしてしまう“職業病”
ドラマや映画の撮影期間に突然訪れる休日、通称「撮休」を多忙な俳優はどう過ごすのか――知られざる“オフの姿”を新進気鋭のクリエイターたちが妄想を膨らませて描き、主演俳優が本人役を演じるオムニバスのWOWOWオリジナルドラマ「撮休」シリーズで、有村架純、竹内涼真に続いて主演を演じるのが、老若男女誰もが昔から知っている若きベテラン俳優・“神木君”こと神木隆之介だ。ある意味、妄想の「撮休」企画にまたとない被写体だろう。
「本人役を演じるのは初めてでしたし、僕以外の人たちには役名があったので、不思議な感覚で。(共演者の一人)藤原季節くんを僕は普段、『季節』と呼んでいるんですが、季節くんは僕のことを『リュウちん』と呼ぶのに、僕は『季節』と言えないというような奇妙な難しさがありました(笑)。自分が普通にしゃべっていたら、成立する気楽さの一方で、実際には自分ではないので、『あれ、嘘なのかな。本当の撮休なのかな』『フィクションなのに、すごくリアルだな』と感じる絶妙な塩梅が難しかったです」。
本人役を演じた印象をそう語る神木。リアルとフィクションが特に混沌とし、境目がわからなくなるのが、第1話「はい、カット!」だ。
「子役出身の俳優がなるとされる架空のシンドロームが題材なのですが、これはある種の職業病で、撮影ばかりしていると、普段の日常でも全部フィクションなんじゃないかという錯覚に陥るという話なんですよね。僕自身、カメラも好きだということもあって、コンビニで買い物をしている時とか、『このカメラ位置なら、こう写っているんだろうな』とか、日頃から想像して楽しんでいるようなことがあるので、これは確かにあるな、と。
陥ってしまった“はい、カット!シンドローム”について神木に教えるのは、全話のゲストの中で唯一本人役を演じる安達祐実。「元天才子役」「若きベテラン」など共通点が多いが、共演した印象は?
「安達さんは、実は怖い方なのかなと思っていたんですよ。以前、緑山スタジオで一回すれ違って、ごあいさつしたとき、スイッチが入った眼だったんですよね。勝手ながら、すごい迫力を感じちゃって『うわ、安達祐実じゃん! 本物見たわ』みたいな。背は僕より小さいんですけど、飲み込まれるような迫力をお持ちの方だなと感じたので、話しかけるときはドキドキしましたが、すごく優しい方でした」。
ドラマの中では、神木がさまざまな人に「部屋が綺麗そう」「清潔感がある」「国民の子ども」などと言われる。いずれも多くの人が抱く「神木君」像だが、本人的に意外だったことは?
「意外だったのは『そつなくこなす』というキーワードが出てきたこと。僕、そんなにそつなくこなしてます?っていう感じでしたね。長ぜりふもあまり覚えられないし、せりふ自体、練習しないと覚えられないし、苦手なことはもちろんいっぱいありますし。作品によっては、カットとか写り方でうまい風に撮ってもらっていることもたくさんあるので、自分では『そつなくこなす』気はしていないんですよ。でも、脚本を書いてくださった方々にとっては、僕ってそういうイメージなんだなと勉強になりました」。
心の中ではいつも学生ノリを大事にしている
また、第8話「遠くにいる友人」では、「子役時代の仲間」役で、仲野太賀が登場。ドラマ『コントが始まる』(日本テレビ系)でお笑いトリオを演じた仲間で、同じ1993年生まれ、同じ子役出身でもある。そんな仲野が言う「お前、コンプレックスとかねえだろ」というセリフも、リアルかフィクションかわからないスレスレの空気があった。
「いやいやいや、コンプレックスは、僕はありますよ。身長が低いとか。(魅力の一つでは?)いやいや、そう言ってくださる方もいらっしゃるんですけど、どうしても強みにできないんですよね。できれば横浜流星くんみたいな顔で生まれたかった。松村北斗くんとか。ああ、いいなあ、どうやったらあんなイケメンになれるんだろうなーと思いながら、いつも雑誌を見ていますもん。僕の中の一番のイケメンは、やっぱり流星くんかな。見ていて浄化される気分になるんですよね。山崎賢人くんもかっこいいし、マッケン(新田真剣佑)とか吉沢(亮)くんなんて彫刻ですよ。
すごいのは、「陰キャ」「人見知り」などを自称するイケメン俳優が必ず友達として「神木隆之介」の名を挙げること。その「人たらし」の秘けつを本人に聞いた。
「なんですかね…。同世代だし、せっかくなら楽しく話そうぜみたいな感じで、グイグイ話しちゃうからかな。最初はたぶん『こいつ、すごい話しかけてくるな』と思われるんでしょうけど、結局ノリが合うんですかね。僕、心の中ではいつも学生ノリを大事にしているからということもあるかも。誰しも学生は通ってきた道なので、少なからず共通点があるだろうと信じて、いつも学生ノリで話しかけています」。
「学生時代」という共通項があっても、クラスの中にはたいていグループやヒエラルキーがあるもの。そんな異なるグループや「階層」みたいなものを自在に行き来できる万能カードが「神木隆之介」というイメージもある。
「確かに僕、全員と仲良かったです。うざいなと思われてもとりあえず絡んでみる。
30代になっても“変わらずいたい” あとはときどき大人ぶらせてもらえたら(笑)
第1話では、安達祐実に「役者として一皮剥けるチャンス」と言われる場面がある。神木が「一皮剥けた」と感じたことはあるのか。
「歩く速度がちょっと遅くなったこととか。僕が落ち着いたせいですかね? 最近、同い年の友人と歩いていても、みんな速いなと思うんですよ(笑)」。褒め言葉に秒速で謙遜する一方で、自分語りはしない。そんなスタンスが一貫して見える。
「自ら高みを目指していくという意識は、僕にはあんまりなくて。演技が好きなので、お芝居できていればいいだけで。ただ、年齢的に30歳手前だし、30歳ちょっとすぎくらいは大学生でもないし、親という年齢でもないし、演じる役柄がなくなる時期だとはよく聞くんですよ。
少年ぽさ、みずみずしさは変わらないが、現在28歳。どんな30代になりたいかを聞いてみた。「できれば変わらずいたいなって思いますね。そんな中で、まあときどき大人ぶらせてもらって、『こいつ大人ぶってるな』って笑ってもらえればいいです」。
28歳にしてすでにあらゆる作品・役柄をこなしているイメージがあるが、まだ経験していないものや挑戦してみたい役についてはこう語る。
「ド悪役ですかね。『SPEC』で演じた一十一を悪役と言ってもらえることはあるんですけど、まあ悪だけど、城田優くんの役に記憶書き換えられていただけの被害者で、純粋な方なので、本当の悪はやってみたいですね。あとは、会社員3年目くらいのコメディとか。下には先輩面しているのに、同期と上にはヘコヘコしていて、同期の気になる子にはヘタレで、みたいな。クドカンさんのドラマみたいなヤツをやりたいですね(笑)。まずは2022年も引き続き、変わらずに頑張ります」。
『WOWOW オリジナルドラマ 神木隆之介の撮休』はWOWOW プライムにて1月7日から毎週金曜23時より放送・配信。(各話放送終了後、WOWOWオンデマンドにてアーカイブ配信となる)