NHK放送センター

 昨年5月のNHKの発表によれば、受信料の推計世帯支払率は81.2%(全国値)。これは公表が始まって以来最高の数字だが、これを“100%”にする案が登場し、物議を醸している。

 NHKの受信料は、自宅にテレビがあれば払うのが建前。しかし近年浮上した問題が、スマートフォンやタブレットでの視聴だ。昨年の放送法改正により、NHKはすべての番組をネットで配信することが認められ、3月1日からネット配信サービス「NHKプラス」がスタート。テレビでNHKを見る人とネットでNHKを見る人との間で、受信料を払う/払わないの不公平が生じるため、NHKと管轄官庁の総務省が動いた。日本経済新聞が3月4日に報じた「NHK受信料見直し、総務省検討 『全世帯対象』も」という記事によれば、「テレビの有無にかかわらず全世帯が負担するドイツのような仕組みも含め幅広く検討する」というのだ。キー局の関係者がいう。

「現在の受信料制度に限界があるのは認めます。テレビがあれば受信料が生じるのに、スマホで見ればタダなら、テレビ所有者が“タダ乗り”するスマホユーザーのコストを肩代わりするということ。ただ、全世帯が支払い対象になるなら、それはもはや税金です。それならば、平均1000万円超もある局員の給与を公務員並にすることが先でしょう。民放がスポンサー探しにあくせくしているのに、何の企業努力も無く『テレビだけだと不公平だから、いっそ全世帯が支払え』とは、呆れた話しです」

 なかなかクローズアップされる機会がないが、給与水準が高いマスコミ業界の中でもNHKは特に高く、40代になれば年収1,000万円は下らない。NHKは受信料の徴収費用で年間約800億円を投じており、全世帯徴収となればこれは丸々浮くが、それが実現すればテレビもスマホもない家からも受信料を取ることにもなる。

そんなことが許されるのか? フリーのジャーナリストが日経の記事の“からくり”を語る。

「ネットではこのニュースはかなり話題になりましたが、これは典型的な“観測気球”の記事で、官僚が意図的にマスコミにリークしたものです。NHKや総務省は、何とか全世帯から受信料を徴収したいが、反発は必至。そこで、どの程度反発があるかを探るため、なじみの日経の記者に情報を流したのでしょう。

 何よりの証拠は、日経しかこのニュースを報じていないことです。新聞は“特オチ”(他社が掴んだニュースを掴めないこと)をとにかく嫌うもの。

他社から追記事が出ないものは、間違いなく観測気球です。ただ、世間はここでしっかり反発しておかないと、官僚たちは“イケる”と思い、どんどん事を進めてしまうので、きちんと批判の声をあげることは大事だと思います」

 記事の意図は分かったが、“上級国民”の思惑に振り回される庶民にとっては不愉快極まりない話し。「NHKをぶっ壊す」と唱えるだけで、選挙に当選してしまう人物が出てくるのも当たり前なのかもしれない。