北朝鮮の市場(チャンマダン)で、本来は高級将校にのみ配給される特別なたばこ「カチ」が流通していると、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が20日付で伝えた。軍内部の食糧不足が深刻化し、将校らが配給品を売却して生活を補う実態が浮き彫りになっている。
「カチ」は北朝鮮で国鳥とされるカササギにちなんだ銘柄で、象徴性と品質の高さから、これまで高位の軍幹部に限定配給されてきたフィルターたばこだ。一般市場に出回ることはほとんどなかったが、最近になって正規品がチャンマダンで頻繁に確認されているという。
平安北道の住民はRFAに対し、「最近、市場でカチたばこをよく見かける。もともとは高位軍官だけの配給品だが、彼らが食糧を確保するため売りに出している」と語った。軍官らは国家から食糧配給を受けるものの、輸送過程での損耗や量の不足により、家族の食事を賄うには足りないケースが多いとされる。
市場価格は1カートン(10箱)で約70万北朝鮮ウォン。コメ1キロが約4万ウォンであることから、たばこ1カートンを売却すれば約17キロ分のコメを購入できる計算になる。住民は「いまや高級将校にとっても、たばこはぜいたく品になった」と指摘する。
別の咸鏡北道の住民も、「カチたばこが市場に出回るのは異例だ。アリランや高麗など一般銘柄は以前から流通していたが、将校用のカチがここまで頻繁に見られるのは初めて」と証言した。こうした現象は、食糧難が軍部にまで及んでいることを示す兆候と受け止められている。
また、「カチ」は昨年夏ごろ、軍の将官向け贈答用として登場した新しい銘柄とされる。
一方で、住民の間では複雑な反応も広がる。軍関係者の知人は「今では将校がたばこを吸うこと自体がぜいたくだ」と語り、テレビで最高指導者が喫煙する姿を見ると苦笑やため息が漏れるとの声もあるという。
高位軍人でさえ配給された嗜好品を手放さざるを得ない現状は、北朝鮮の慢性的な食糧不足が社会全体から軍へと波及している現実を示している。体制の中核とされる軍部の生活基盤が揺らぎ始めている可能性もあり、今後の動向が注視される。








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