1回目の緊急事態宣言以降で起こった事象
筆者はこの1年、4トン(中型車)のフリー便担当として乗務することが多かったが、フリー便とは、その日その日で運ぶ中身も違えば、運行するルートも違うという立場。
(1)平日に仕事の空きが出るようになった昨年春
昨年春、1回目の緊急事態宣言の後、半月ほどは業務内容に大きな変化はないなと思っていたが、5月の大型連休を挟んで以降、平日(月~金)に仕事が入らない日が発生するようになった。1日入っても、翌日は空き(休み)、それが2日連続休みになることもあって、昨年5~6月の収入は半分ないしそれ以下になった。また平日に空きが出る状況は、昨年の春ほど極端ではないにしろ、その後も時折経験している。
(2)大きく影響を受けた、移転(引越し)・イベント設営業務
筆者の周囲で大きく仕事依頼が減ったのは、まず第一に、大手引越し会社からの依頼だ。人の移動がもっとも危険だと意識されたころだったので、当然ながら会社関係の業務場所移転も、個人レベルの引越しも自主的に中止・延期する場合が多かったのだろう。だが、それから1年が経過した現在では移転、引越しともに依頼は戻ってきている。顧客側としては、いつまで待っても感染が収束せずラチが明かないという気持ちになったのだろう。
そしてもう一つが、市中の展覧会、野外イベントなどの中止だ。この1年でイベント機材の搬入、搬出の依頼作業がほぼなくなった。ただし、この影響を強く受けているのは運送業界だけではない。
(3)輸入・輸出関係の運送業務も一時停滞
フリー便で時々担当していた、趣味商品(楽器など)の輸出などが止まったほか、海外からの輸入原料などを扱う会社の依頼業務が減少した。ただし、これらは1回目の緊急事態宣言下では顕著だったが、少しずつ戻ってきている。
(4)瞬間的に増えたドラッグストア配送
使い捨てマスク、アルコール消毒液などの在庫切れが懐かしく思い出されるが、それとほぼ同時期、風評が影響してトイレットペーパーの品切れも頻発した。そんなとき、臨時のチャーター便で大型薬局(ドラッグストア)へのトイレットペーパー配送業務が時折飛び込んできた。昨年5~6月ごろは、お店の開店時間前に多くのお客さんが列を作ってトイレットペーパーの入荷待ちをしていた光景を思い出す。ご存知のようにマスクもトイレットペーパーも、今は店頭での品切れなどは起こっていない。
なお、昨年春の緊急事態宣言以降、物流業務が減らず、むしろ少し増加している印象なのが、大手スーパーや薬局などへの搬入だろう。テレワークを含み、自宅での生活時間が増えているため、スーパーでの生活用品の購入が増えているためだ。
コロナ禍の1年を経た、物流のお仕事は?
感染者が増減を繰り返し、未だ出口の見えない新型コロナ問題だが、この状況下を過ごしてトラックドライバーは今、どんな状況(待遇)の中にいるのか。
(1)フリー便業務は、選択肢も物量も減ったまま
前述したイベント関連業務の減少のほか、海外輸出入関係の物量もコロナ禍以前ほどには戻っていない。
(2)2回戦仕事の減少
「2回戦仕事」とは、1日の業務で2回の輸送業務を行うことを言う。例えば、朝出発で昼前に1件の輸送業務を終え、昼以降にまた別の荷物を積み夕方ないし夜などに届けること。先の午前分が1回戦、午後のもう1便が2回戦というわけだ。当然、2回分の運賃が稼げるから、誰もがこういう仕事のパターンを希望する。また実際、新型コロナ感染拡大以前には2回戦仕事が結構あったが、今やこういうパターンが激減。1便で終了の「1回戦上がり」が増えた。当然輸送業務の拘束時間は減ったのだが、ほぼ歩合級のトラックドライバーにとって、この変化は経済的に痛手。副業を本気で考えないと厳しい。
(3)運賃は、コロナ禍前の1割減?
言うまでもなく、輸送業務の選択肢は全体的に減っているから、魅力的(輸送の手間が少なく面倒でない)な内容の仕事も、満足の行く運賃の仕事も、少なくなった。数の減った輸送業務に、多くの運送会社が手を上げるのだから当然だが、それに乗じて依頼先も強気。
もしくは、運賃が以前と同額ならば、輸送量が増やされている印象だ。筆者の時折請け負う配送便のよくある例だが、以前は積み地で3~4カ所分の荷物を配送して完了だったものが、2便分になっていたりする。前述した1便目の配送を完了した後、積み地に戻ってまた3~4カ所の配送を行うというものだ。しかし、2便分をこなしても以前の1便分とほぼ同額ないし、上乗せがあった場合でも運賃1~2割増しくらいにしかならない。割に合わない気持ちを拭えないものの、以前よりも少ない仕事の中から取り合うのだから、こうなるのは当然だ。ちなみに、東京五輪前後で運送業界は景気上昇を期待していたはずだが、「そんなもん、どこにある?」というのが実感である。
トラックドライバーは底辺の仕事、なんて悪口を言われることは多々あるが、こうしてコロナ不況下での依頼主との力関係を実感すると、「確かにそうだよな」と思わずにはいられない。しかし、トラックドライバーがこの世からいなくなったら、スーパーでも買い物も、工場での生産も、どうするつもりなのだろう? 運転手同士は互いに「今は我慢のしどきだ」なんて言い合っているが、さてこの先にどんな景気が待っているのかは、どうにも読めない。
文=坂 和浩

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